虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
520 / 673

453

しおりを挟む


 ケイトさん宛の、けれどわたしのところへ来ている、出処の怪しい手紙や荷物を改めようとして――――

 なんかこう、即行で後悔した。

 『ネイサン・ハウウェル様へ。是非ともケイト様へお渡しください』とのメッセージ付きで、綺麗にラッピングされた、高級感漂うしっかりとした箱。

 中のメッセージカードには、『ケイト・セルビア様。ご卒業おめでとうございます』と、シンプルに書かれていた。

 ここまでなら、よかった。

 問題は、箱の中身だ。

 勝手に改めた中身、は王室御用達のマークの入った・・・ムチだった。

「どうしよ、これ・・・」

 一応、幸い? と言えばいいのか、ちゃんと乗馬用の・・・鞭だった。

 どこからどう見ても、鞭。しかも、乗馬するときに馬へ当てる短い鞭と、馬を調教するときに使用する長い追い鞭の二本セット。

 明確な高級品。そして、一応、乗馬用品。

 ケイトさんが乗馬好きというのは、大体の人が知っていること。

 お祝いに乗馬用品を贈られても、特におかしくはない。

 うん。おかしくはない。普通なら、だ。

 特殊な趣味を持つ人達の集団から、鞭が贈られているのでは? という疑いに、めっちゃ引っ掛かっているだけだ。

「・・・マジどうしよ、これ」

 王室御用達マークは伊達じゃなくて、品自体は、本当にいい。最高級品と言っても過言じゃない。

 とりあえず、保留にして。他の物を改め・・・

 乗馬ブーツ。しかも、なぜか踵が尖ったデザイン。踏まれると穴が空きそうで・・・なんかグレー、保留。

 『最後に、一度でいいので思い出をください。ケイト様の罵声をわたしに浴びせ……』云々の書かれた分厚い手紙。

「・・・ゴミ箱行き」

 『卒業おめでとうございます、ケイト様のご多幸をお祈りしています』

「これはOK。でも、なんでわたし経由で?」

 と、手紙と贈り物を改め・・・半分はOK。三割がグレー。二割がアウト。

 アウトな物はゴミ箱行きで決定として。

 問題は、グレーな贈り物だ。

 本当に、品としてはいい代物。普通に見ると、上品とすら言える。ただ、贈り主達がなぁ・・・

 まぁ、贈り主の名前は書かれていない。匿名希望ということなのだろう。これが、本当に『ケイト様を見守る会』会員の人達からの物じゃないという可能性も、なくはない。

 多分、かなり低い可能性ではあるけど。

 王室御用達、というのがどうにも引っ掛かる。『ケイト様を見守る会』の前? 会長だったという方は、確か……公爵令息。

 あの方が用意したのではないかと、わたしは疑っているんだけど・・・公爵令息からの贈り物だったら、やっぱりケイトさんへ渡すべき、なのだろうか?

 と、悩みに悩み抜いた末――――

「ケイトさんへの贈り物だそうです」

 すみません、ケイトさん。日和ってしまいました。

「まあ、わたしに、ですか?」
「ええ。どうも、贈り主はシャイな方のようで、わたしからケイトさんへ渡してほしいとのことです。中身も贈り主も不明だったので、申し訳ありませんが、先に中を改めさせて頂きました」
「気を遣って頂いてありがとうございま、す・・・!」

 と、荷物を開けたケイトさんが固まった。

「ケイトさん? どうしましたか?」

 やっぱり、鞭はあれだったとか?

「これは・・・当代一の腕を誇るという、鞭職人の銘! この鞭は、叩くと鋭く派手な音を鳴らしながらも、与えるのは最小限の痛みのみで、馬の身体を傷付けることはないと言われている名品中の名品ではないですか!」

 ぁ~・・・そういう感じの鞭でしたか。これ、完璧例の人達からの贈り物だわ。

「贈り主の名前は、本当に書かれていなかったのですか? ネイサン様、なにか心当たりの方がいたりはしませんか?」
「・・・いえ、全く知りません」

 絶対、ケイトさんには言いませんっ!!

「そうですか・・・できれば直接お礼を言いたかったのですが、残念です。大切に使わせて頂こうと思います」

 と、嬉しそうに微笑むケイトさん。

 まぁ・・・直接会うと、かなりアレな人達だと思うので、会わなくて正解だと思います。


しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

処理中です...