虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 ケイトさん宛の、けれどわたしのところへ来ている、出処の怪しい手紙や荷物を改めようとして――――

 なんかこう、即行で後悔した。

 『ネイサン・ハウウェル様へ。是非ともケイト様へお渡しください』とのメッセージ付きで、綺麗にラッピングされた、高級感漂うしっかりとした箱。

 中のメッセージカードには、『ケイト・セルビア様。ご卒業おめでとうございます』と、シンプルに書かれていた。

 ここまでなら、よかった。

 問題は、箱の中身だ。

 勝手に改めた中身、は王室御用達のマークの入った・・・ムチだった。

「どうしよ、これ・・・」

 一応、幸い? と言えばいいのか、ちゃんと乗馬用の・・・鞭だった。

 どこからどう見ても、鞭。しかも、乗馬するときに馬へ当てる短い鞭と、馬を調教するときに使用する長い追い鞭の二本セット。

 明確な高級品。そして、一応、乗馬用品。

 ケイトさんが乗馬好きというのは、大体の人が知っていること。

 お祝いに乗馬用品を贈られても、特におかしくはない。

 うん。おかしくはない。普通なら、だ。

 特殊な趣味を持つ人達の集団から、鞭が贈られているのでは? という疑いに、めっちゃ引っ掛かっているだけだ。

「・・・マジどうしよ、これ」

 王室御用達マークは伊達じゃなくて、品自体は、本当にいい。最高級品と言っても過言じゃない。

 とりあえず、保留にして。他の物を改め・・・

 乗馬ブーツ。しかも、なぜか踵が尖ったデザイン。踏まれると穴が空きそうで・・・なんかグレー、保留。

 『最後に、一度でいいので思い出をください。ケイト様の罵声をわたしに浴びせ……』云々の書かれた分厚い手紙。

「・・・ゴミ箱行き」

 『卒業おめでとうございます、ケイト様のご多幸をお祈りしています』

「これはOK。でも、なんでわたし経由で?」

 と、手紙と贈り物を改め・・・半分はOK。三割がグレー。二割がアウト。

 アウトな物はゴミ箱行きで決定として。

 問題は、グレーな贈り物だ。

 本当に、品としてはいい代物。普通に見ると、上品とすら言える。ただ、贈り主達がなぁ・・・

 まぁ、贈り主の名前は書かれていない。匿名希望ということなのだろう。これが、本当に『ケイト様を見守る会』会員の人達からの物じゃないという可能性も、なくはない。

 多分、かなり低い可能性ではあるけど。

 王室御用達、というのがどうにも引っ掛かる。『ケイト様を見守る会』の前? 会長だったという方は、確か……公爵令息。

 あの方が用意したのではないかと、わたしは疑っているんだけど・・・公爵令息からの贈り物だったら、やっぱりケイトさんへ渡すべき、なのだろうか?

 と、悩みに悩み抜いた末――――

「ケイトさんへの贈り物だそうです」

 すみません、ケイトさん。日和ってしまいました。

「まあ、わたしに、ですか?」
「ええ。どうも、贈り主はシャイな方のようで、わたしからケイトさんへ渡してほしいとのことです。中身も贈り主も不明だったので、申し訳ありませんが、先に中を改めさせて頂きました」
「気を遣って頂いてありがとうございま、す・・・!」

 と、荷物を開けたケイトさんが固まった。

「ケイトさん? どうしましたか?」

 やっぱり、鞭はあれだったとか?

「これは・・・当代一の腕を誇るという、鞭職人の銘! この鞭は、叩くと鋭く派手な音を鳴らしながらも、与えるのは最小限の痛みのみで、馬の身体を傷付けることはないと言われている名品中の名品ではないですか!」

 ぁ~・・・そういう感じの鞭でしたか。これ、完璧例の人達からの贈り物だわ。

「贈り主の名前は、本当に書かれていなかったのですか? ネイサン様、なにか心当たりの方がいたりはしませんか?」
「・・・いえ、全く知りません」

 絶対、ケイトさんには言いませんっ!!

「そうですか・・・できれば直接お礼を言いたかったのですが、残念です。大切に使わせて頂こうと思います」

 と、嬉しそうに微笑むケイトさん。

 まぁ・・・直接会うと、かなりアレな人達だと思うので、会わなくて正解だと思います。


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