虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 残り少ない休暇。

 ルリア嬢とリヒャルト君のダンスレッスンにかこつけたターシャおばあ様にお呼ばれして、一緒に踊りました。

 当初懸念していたような怪我や不調などはなく、むしろイキイキというかワクテカ顔で、ゆったりとスタンダードワルツを一曲踊りました。

「うふふっ、ネヴィラ様が殿方でしたら……という夢が叶ったようですわ~。ありがとうございました、ネイサン様」

 と、頬を染める顔はまるで年頃のお嬢さんのように可愛らしかったですね。いつも可愛らしいのですが、この日は特別に・・・

 他にも、リヒャルト君との約束通りにセルビア伯爵家に遊びに行ったり、ピクニックに行ったりと、予定を組んで、色々と遊び倒した感がある。 

 そんな休みもあっという間に過ぎ――――

 あと三日で後期の授業が始まります。

 まぁ、勉強の方は一応、セディーとライアンさんの作ってくれた問題集をちまちま解いていたから大丈夫だと思う。

 そろそろ学園へ向かう……と言ったら、いつものように寂しそうな顔をするセディー。

 その顔をじ~っと見詰める。

「? どうしたの? ネイト」
「ん~」

 どう、というワケではないけど・・・セディーの表情に、追い詰められているような、危ういような気配は見られない。

 キアンから、「兄が不安定に見えたら、お前の手で直接渡せ。おそらく、その方がいい」と、渡された手紙。「兄の思い詰めたような顔を見たときか……そうでなくば、お前が精神的に追い詰められたときでもいいぞ?」という言葉を思い出す。

 キアンの占い? は、結構な確率で当たる。それも、悪いことが。そのキアンが懸念するのだから、セディーになにかが起こる……のかもしれない。

 セディーに悪いことは起こってほしくない。だから、キアンからの手紙は失くさないようちゃんと保管してある。

 う~ん……寂しそうというのは、不安定とまでは言えないよね?

 わたしも、別に精神的に追い詰められているような状況じゃないし。

 だからきっと、手紙を渡すのは今じゃない。

「休みのときには帰って来るから、そんなに寂しそうな顔しないの。ね?」

 そう言うと、

「っ、ネイト~」

 泣きそうな顔でハグされた。

 よしよしと宥めながら、一応保険としてお祖父様とおばあ様にセディーの様子がおかしいと思ったら連絡してほしいと頼むことにした。学園にいるときにセディーの様子がおかしくなっても、すぐには駆け付けられないし・・・

 保険は多いに越したことはない。わたしが学園にいる間、当主教育でセディーとの接触が多いルリア嬢やケイトさんにも、頼んでおこうかな?

 キアンの言葉とセディーの様子を気にしながら、学園へ向かうことにした。

 大丈夫、だと思いたい。

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