虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 最初の二日くらいは、夕方になるとうつらうつらして夜は早目に休んでいたセディーが、段々と夜も起きていられるようになって来た。

 どうやら体力が付いて来たらしい。

 このまま、散歩の習慣が付けばいいと思う。

 ダンスの方も、神経を尖らせることが無いせいか、楽しそうにして上達。そして、踊れる時間も長くなっている。ケイトさんからの課題、『二曲以上続けて踊れるようになること』が達成される日も近いだろう。

 まぁ、なんというか……わたしも無駄に女性パートが上手くなっているけど。

「他のパートナーがいる状態でも踊りましょう!」

 そう言ってエリオットが、狩りやら薪割り、素振り、猟銃の手入れ、見回りを兼ねた走り込み……と、なんだかんだ一番この別荘を満喫している脳筋を呼んで、二組で同時に踊ることになって――――

「ふむ……俺も、女性パートを踊れるようになった方がいいのか?」
「プハッ! れ、レザンが女の子パートっ!? アハハハハハっ!!」

 真面目な顔での惚けた発言に、爆笑が響いた。

「えっと、レザン先輩は大きいので普通にリーダーでお願いしますねっ」
「わかった」

 と、セディーだけでなく、レザンとも踊ることに・・・

「いやー、もうあれだな! どっからどう見ても、美男美女のカップルだな!」

 どこぞのアホにケラケラ笑われた。全く嬉しくない。

「ハッ! そうです、メルン先輩!」
「おう、なんだー? フィールズ」
「メルン先輩も、どなたかと踊るときのために一緒にレッスンしましょう!」
「え?」

 と、エリオットの提案でケラケラ笑ってたテッドも一緒に踊ることになった。

「マジかー……俺、本物の女の子がいいのに……」

 なんだかげんなりした顔でエリオットに引っ張られて踊るテッドは、ちょっといい気味だ。

「グレイ先輩も、ずっとピアノですけど、偶には交代して踊りませんか?」
「……いや、俺はばあ様に習って、一応は踊れるからいい」

 リールはそう言って、拒否。

「そうですか? 動きたくなったり、飽きたらちゃんと言ってくださいね?」

 なんて心配そうに言われても、ずっとピアノ係を死守している。

 ちなみにセディーは、他の人が踊っているところを見るのもレッスンのうちだとピアノは弾かせていない。

「ペアの交代ですっ」
「今度はハウウェルとかー……はぁ……」

 溜め息を吐きたいのはわたしの方だ。

 まぁ、セディーよりもテッドの方が踊れないから、『自分だけが下手じゃない』とセディーがほっとしているであろうことは言わないけど。

「あ、おまっ、なんで俺ンときだけ足踏むんだよっ!?」
「ああ、ごめん。女性パートは慣れてないからステップ間違えたー」
「棒読みだぞこのヤロー! おにーさんはもちろんだが、レザンやフィールズの足は踏まないクセに!」
「まぁ、踏もうとしても避けられるからね」
「ええっ!? ハウウェル先輩、僕の足踏もうとしてたんですかっ!?」
「ヤだな、冗談だよ?」
「あ、なんだ、冗談ですか~」

 「いや、 今のは 割と本気だろ」

 ぼそりと疑いの眼差し。

「でも、踏まれそうになるのを上手くかわしていると、ステップが上達するのは本当」
「そうですね~。僕もレイラちゃんに足踏まれないようがんばってたら、ステップが上手くなりました!」
「え? マジ?」

 十日くらいをそうやってわちゃわちゃしながら過ごして、

「はぁ~・・・」

 セディーがどんよりとした溜め息を吐いた。

「僕、そろそろ帰らなきゃいけないんだけど・・・ネイトはどうする?」


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