虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 そして翌日。

 うんうんとうめくような声で目を覚ました。

 セディーがうなされているようなので、起こすことにした。

「セディー、大丈夫? セディー」
「っ、ぅう……ネイ、ト?」

 パチリと開いたブラウンが潤んでいる。

「どうしたの? 怖い夢でも見た?」

 ううん、と弱々しく首を振るセディー。

「か、身体中あちこち痛い・・・」

 半泣きに歪む表情。

「そう……セディー、それはね」
「それは?」
「普段あんまり運動しない人が、偶に張り切ったり、無理をして身体を動かしたりしたとき。そして、乗馬や馬車での長距離、長時間移動した後になる症状なんだ」
「症状?」
「うん。地獄の筋肉痛」
「へ?」
「筋肉痛って、運動したその日より、翌日とか数日経ってからの方が身体がつらいんだよね。全身筋肉痛で熱発して、何日も寝込むなんて、割とよくあることだから。まぁ、身体中ガタガタのギシギシで、あちこち痛くて本っ当に大変だけど。脱水に気を付けていれば、大したことないから大丈夫。うん。マジで身体中痛いけど。食欲無くてもごはんをちゃんとしっかり食べて、水分もちゃんと摂ってれば、長くても一週間くらいで治るから。身体中、泣きそうなくらい痛むけど。起きられるなら起きて、ごはん食べようか?」

 と、ぷるぷるとゆっくり動くセディーに手を貸して身を起こす。その間もうんうん呻っていたから、やっぱりあちこち痛むのだろう。

「ごはん食べたあとに痛み止め飲もうか? そうしたら、少しはマシになるよ」

 ちょっと動くだけでも、ひくひくと半泣きの表情。食堂に行くのはつらそうなので、食事は部屋に持って来てもらうことにした。

「ぅう、ごめんね……ネイト。お友達のところ行っていいんだよ?」

 腕を動かすのも億劫そうに、ゆっくりと時間を掛けての食事。申し訳なさそうな顔をするセディー。

「ふふっ、いいよ別に。学園でも一緒で、こっち来ても一緒だったんだから。むしろ、セディーと過ごす方が久々でしょ」

 と、二人でゆっくりする予定だったけど・・・

「おにーさん大丈夫ですかー?」
「……お見舞いを」
「退屈してませんか?」
「食事だ」
「セディック様の容態は」

 なにかと顔を出す連中がいて、タオルやお菓子、果物、本、食事があれこれと届けられた。

 まぁ、セディーは本を読む気力も無いみたいで、ちょっと起きてはすぐに寝てを繰り返していたけど。テーブルに増えて行くお見舞いの品を見て、

「あとでお礼しなきゃね」

 照れたように、くすぐったそうな顔で笑っていた。

 昔、わたしが寝込んだとき――――ロイがあれこれ持って来てくれたことを思い出すなぁ。

 セミの脱け殻は、マジ要らんかったけど。

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰


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