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しおりを挟む翌日は、エリオットの教える護身術講座に暴漢役として付き合うことになった。
「なんつーか、ハウウェルが暴漢役ってのも違和感めっちゃあるんだけど?」
「違和感……ありますねっ」
「……むしろ、襲われる方だろう。顔的に」
「相変わらず失礼なこと言うよね、君は」
ぼそりと失礼なことを言うリールへツッコミ。
「まぁ、わたしも別に暴漢役をしたくてするワケじゃないんだけどね? でも、ほら? エリオット、もしもレザンやキアンみたいなのにいきなり襲われたとして、どうにかできそう?」
「備えていないと無理ですね」
キッパリと即答。
「レザン先輩やキアン先輩みたいな実力のある人にいきなり襲われたら、逃げられるかも怪しいです」
「だよねぇ。というか、一番普通の暴漢役ができそうなのはテッドなんじゃない?」
「断る! 俺は痛いのは嫌だからな! それにさー、フィールズの美少女な顔を襲うってのは、演技でも気ぃ引けんじゃん」
「ああ、そう。それじゃあ、やろうか」
「はいっ! しっかりと見ててくださいね、グレイ先輩っ」
なんだっけ? キアンの演技指導によると、「殺してやる!」と叫んで、殺気を漲らせながらナイフを振り翳して襲い掛かる……だったかな?
さすがに抜き身のナイフは危険なので、鞘から抜かないけど。無言で襲い掛からない辺りが、素人臭いと思う。リールは……誰かに恨まれたりでもするのだろうか?
ちなみに、レザンとキアンはもっと肉が食べたいと言って狩りに出ている。一応、猟師も一緒に行ったから、さすがにあの二人も無茶はしないだろう。
息を大きく吸い込んで、
「……殺してやるっ!」
殺気を籠めて叫びながらナイフを振り上げてエリオットに襲い掛かる。
「ぴゃっ!」
と、変な声を上げたエリオットが脱兎の勢いで走って逃げた。
「おおっ、フィールズ足速いのなー? しかも、ぴゃっつった。ぴゃって」
ケラケラと笑うテッド。
「……どこまで逃げる気なんだ?」
「あれ、追い掛けた方がいいのかな?」
なんだか、余計に逃げられそうな気がする。
「ハウウェルがめっちゃ怖かったんじゃね? つか、護身術どこ行ったよ?」
「まぁ、護身術って、ある意味では逃げる時間を稼ぐ為のものだし。脱兎の如く逃げるのは間違ってないんだよね」
「そうなん? なんかこう、バーンっ! ってかっこよく敵倒さねーの?」
「護身術は、護身の通り。自分を守る為であって、敵を倒す為のものじゃないからね」
「へー」
「エリオット! いつまで逃げてるっ、早く戻って来い!」
「ふぁいっ!!」
そして、びくびくしながら戻って来たエリオットとまた向かい合う。
ナイフの避け方や、逃げ方のレクチャーをして……気付いた。リールに教えるのは、エリオットの筈じゃなかったっけ?
それから、帰って来たレザンとキアンの二人とあれこれ話し、わちゃわちゃと過ごした。
晴れた日には、「体力を付けるぞ!」と外を走ったり、狩りや採集に出たりした。
最初は不満そうにもの言いたげだったリールも、
「眼鏡よ。例えばだが、お前はナイフを持った仕立て屋に追い掛けられたとして、逃げ切れる自信があるのか? 誰ぞがナイフを振り回して、呆気無く殺されてやるのか?」
そう聞かれた後には、体力作りの為に真剣に走ると決めたようだった。
護身術のレクチャー、体力作り、合間に狩りや採集、保存食作り。暇なときにはゲームなどをして過ごし――――
__________
すみません。なかなか体調が戻らなくて……(´ε`;)ゞ
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