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しおりを挟むゲームは燻製作りの合間に途切れ途切れにすることとなった。
「あ~、次って誰の番だっけ?」
「……フィールズの番ではなかったか?」
「ふぇ? 僕はもう出しましたから、キアン先輩の番じゃないですか?」
「ん? 俺か?」
という風に、誰の順番かわからなくなることもしばしば。
「一番持ち札が多い人が出す、ってことでいいんじゃない?」
「そうだな」
そうやってゲームを再開したはいいけど・・・やっぱりバタバタして、間違えて誰かの手札を持ってごっちゃになったりして、順番やら勝敗やらが曖昧なままお昼になっていた。
「お昼ごはんどうしましょうか? このままテラスでできあがった燻製食べます?」
「それもよかろう」
「じゃあ、準備お願いして来ますねっ」
と、席を立つエリオット。
「なら、わたしはレザンを呼んで来ようかな」
「あ、俺も俺も!」
テッドと一緒にレザンを呼びに行くと……
「フンっ!」
「ハッ!」
という低い気合の声。一心不乱に斧を振るっている長身ムキムキの男達がいた。上半身裸になって汗を滴らせ、木屑を散らしながらパカンパカン! と豪快に薪を割って行く。
「うおっ!? 猟師のおっさんも脱ぐと凄かったっ!?」
レザンの身体がバッキバキなのは相変わらず。そして、レザンと一緒に薪割りをしているのは、フィールズ家お抱えの猟師のおじさん。彼も彼で、レザンとはまた違った感じに厚みのある、ムキムキの身体をしている。
「うん? ハウウェルとテッドか。どうした?」
「そろそろお昼だって」
「そうか。では、これで終わりにしよう。ハッ!」
と、斧が振り下ろされて薪がパカンと割れた。
「ふぅ……」
レザンは滴る汗を拭って服を着ると、
「では、俺はこれで失礼します。もし足りなければ、また呼んでください」
猟師のおじさんに挨拶をしてわたし達とテラスへ向かった。
「今日のお昼は、イケメンにーちゃん特製の燻製なんだってよ」
「それは美味そうだな」
「あのにーちゃん、マジなんでもできんのなー。しかも、全然偉ぶらないしさ」
「や、言動は割と尊大だよね?」
そこそこな上から目線だと思うけど? まぁ、自称辛うじて、ではあるけど曲がりなりにもキアンは王族。本来なら、こんなところでふらふらしている方がおかしい……筈、なんだよね。
「そうかー? めっちゃ働き者じゃん」
「ああ、それはそうだねぇ」
身分の高いキアンが率先して動くから、みんなも動くというか・・・あれも、一種のカリスマというやつなのだろうか?
なんて話している間にテラスへ。
「遅いぞ、お前達。折角の料理が冷めてしまうではないか」
「冷めても美味しいと思いますけどねっ」
「うおっ!? なにこれっ!?」
「ふっ、これはたった今燻製窯から出したばかりの鹿の脚だ!」
ドーン! とテーブルに鎮座するのは、ほかほかと湯気の立つ、鹿の後ろ脚が丸ままの燻製。
「さあ、食うぞ!」
と、燻製を切り分けるキアン。
兎や野鳥肉、鹿肉、魚、チーズ、野菜、茹で卵などの燻製をそのまま食べたり、ドレッシングやソースを掛けたり、クラッカーに乗せたり、パンに挟んだりして食べた。
「うまっ!」
「……もっと硬いと思ったんだが、案外柔らかいな」
「ふっ、特製の燻液に昨日から漬けていたからな!」
「キアン先輩のお料理は、相変わらず美味しいですね♪」
「うむ。さすがキアンだな!」
「というか、前よりも腕上げてない?」
「フハハハハハ! さあ、もっと食うがいい!」
わいわいと騒がしく食べていると、
「なんか、めっちゃ酒のおつまみっぽくね?」
テッドがそう言い出した。
「ふぇ?」
「ふむ……言われてみれば、そうかもしれぬな。まあ、俺は酒は飲まんがな」
「お、なんか意外っすね」
「……宗教上の制約ですか?」
「いや、単に酒が苦手というだけだ」
「キアン先輩、お酒飲めないんですか?」
「全く飲めなくもないが・・・まあ、感覚が鈍ると危険だからな」
それは、かなり切実な問題だと思う。
小さくなにかを呟くキアン。
「? なんか言った?」
「いや? それより、デザートに焼き林檎などはどうだ? 芋もあるぞ?」
「はいはいっ、俺焼きリンゴ!」
「……俺は芋を」
と、昼食はデザートまで美味しく頂いた。
__________
一応、この世界でもお酒は成人(十八歳)してから嗜むのが一般的なのですが、お酒で失敗しないよう、ちょっとずつ慣らすという感じで、十五くらいから舐める程度に飲んだり味見してみるのはよくある感じでしょうか。
※日本でも成人年齢が十八歳になりましたが、お酒やタバコは二十歳からです。
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