471 / 673
番外。キアン視点。『最悪』の予見。
しおりを挟む「お前はっ、なんてことをしてくれたんだっ!? これでうちの商会はお終いだっ……」
「お前が、貴族相手にあんなこと言うからっ!!」
「従業員達だけでも、どうにかしなきゃ」
「そうですね。紹介状を書き終えたら……」
怒りの表情で怒鳴る男。絶望の表情で、ロープを手に取る女。
※※※※※※※※※※※※※※※
「お前が、お前のせいで負けたっ!! お前のせいで破産だっ!? 俺はもう終わりだっ!? こうなったのはお前のせいだっ!? 死ねっ!!」
憤怒の顔でナイフを振り翳す男。
※※※※※※※※※※※※※※※
「♪~」
ご機嫌な様子で書類を眺め、鼻歌を歌う少女。
「ふふっ、わたくしの目を掻い潜って縁談の申し込みだなんて、そんなの駄目よ。悪い子にはお仕置きしなきゃ。誰かに襲わせるか、醜聞を流すか……それとも、家自体を潰しましょうか? そうね、そうすれば即破談だものね♪」
少女はぎゅっとぬいぐるみを抱き締め、
「あなたがわたくしを選んでくれなくても・・・わたくしが、守ってあげますわ。ずっとずっと、愛しています・・・エル兄様」
切ない顔でうっとりと呟いた。
※※※※※※※※※※※※※※※
「……軍法会議だそうだ。お前の上司……元上司が、敵側に寝返っていた。お前の流した情報で、何名も死んでいる」
「なあ、こんなことになる前に、なにかおかしいと思わなかったのか?」
「……なんか言えよ、レザン!」
親子と思われる三人の男が、険しい表情でこちらを見ている。
※※※※※※※※※※※※※※※
パン、パン、パンと連続して鳴り響く乾いた音。
頽れる男女。
焦げ臭い硝煙の臭いに、床を汚す流れる赤。
「ふ、ふふふ……要らないんですよ。あなた達なんて必要無い。ああ、もっと早くこうしていればよかった」
銃を手にし、クスクスと昏く濁った瞳で柔らかく嗤う細身の男が振り返る。
「ねぇ、そうでしょ? これで僕達の邪魔をする奴らは消えた。もう大丈夫だよ、僕が守ってあげるからね。ネイト」
※※※※※※※※※※※※※※※
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ふっ、と意識が浮上して目を覚ます。
「……ふむ、『最悪』を視た……か」
そこそこの夢見の悪さと言ったところ。
自分が死ぬ、しかもその痛み付きの夢よりは幾分マシだが・・・
視えたのは、それぞれの最悪の未来。
友の『最悪』を視るのもあまり気分がいいとは言えんな。
俺のこの、へぼ占い師の血筋は『最悪』を予見するもの。
賢王女と国内外に名高かった王妹である母が選んだ男は、奴隷の男だった。
なにを思って選んだのかは知らんが・・・
王家に凶兆を齎し、災厄を呼び寄せたとして奴隷に落とされた占者の血筋の男。
彼の血筋が予見するのは、『最悪』のみ。
『最善』や『最良』を選び取れるようなものではない。
しかも、『最悪』の未来は流動し、必ずしもそうなるワケでもない。その上、個人によって『最悪』は異なり、人の数だけ『最悪』がある。
そして、この予見はその『最悪』に至るまでの出来事が知れるワケでもない。
そこへ至るまでの原因も過程もわからず、視るのは『最悪』の結末だけ。視ようと思って視えるものでもない。故に、へぼ占いだと思うワケだが・・・
「さて、どう伝えるべきか……」
どういう風に伝えれば、あれら『最悪』を回避できるだろうか?
21
お気に入りに追加
750
あなたにおすすめの小説


なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~
岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。
「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」
開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。

人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる