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しおりを挟む「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
きょとんと首を傾げるエリオット。
「ああ、それ聞いたのは多分、わたしとレザンなんじゃない?」
「……本当の本当に、安全なんだろうな?」
「大丈夫ですっ、多分」
「一応、定期的に猟銃で脅してるって話だから。森を騒がせるか、熊がよっぽど食料に困ってなければ、ではあるけどね?」
「おい、ハウウェルっ!! そんなあぶねーとこ探検に誘ったのかよっ!?」
「や、だからこその避難経路の確保でしょ。いざというときの為にね。というか、わたしは森に行こうなんて言ってないし。探検気分だったのは、テッドだけだと思うよ?」
「・・・マジで? リールは?」
「……これは、避難訓練的なものだろ?」
「熊、か……あれはなかなか美味い」
熊が出ることにショックを受けている二人を余所に、しみじみとした呟き。
「く、くまさん食べたことあるんですかっ!?」
「ああ、冬眠前の熊は脂が乗って特に美味いぞ? 虎よりは狩るのも苦労しなかったしな」
目を丸くするエリオットへ、うんうんと頷くキアン。
「虎っ!? 虎を退治したんですかっ!?」
「ああ、国にいた頃、人喰い虎の退治をクソ国王に命ぜられてな。じいと、その手勢と共に狩りに行ったぞ。ジャングルの中を、剣を片手に虎を探して駆けずり回ったものだ。その点、熊狩りには銃を使えたので割と楽だったな」
「そ、その話、もっと詳しくっ!?」
「よかろう」
「……なあ、あれは本当のことなのか?」
リールは虎退治の話に興奮して食い付くテッドと、二つ返事(手を差し出して食料寄越せ)で頷くキアンを、胡乱げな眼差しで見やる。
「さあ? わたしに聞かれてもね? でも、キアンが相当強いことは事実だよ」
「ああ、確かその虎さんは、キアン先輩とじいやさん達との壮絶な闘いを経て生け捕りにされた後……偉い人のペットにされたんですよね~」
偉い人、の手前で口籠るエリオット。おそらく、それがキアンの親族であると言うのを躊躇ったのだろう。キアンは、自身の親族を嫌っているから。
「ペットになったのは、退治した虎の子供じゃなかったっけ?」
「……なんだ。やはり、作り話か」
「ま、それはどうでもいいけど。そろそろ戻ろうか? エリオットも、濡れたままじゃ風邪ひくし。それに、もう外歩きをする気分じゃないでしょ?」
と、探索する前ではあるけど、別荘へ戻ることにした。
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