461 / 673
406
しおりを挟む「静粛に」
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
21
お気に入りに追加
749
あなたにおすすめの小説

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。
haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」
17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に……
家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。
王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。
「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」
自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。
そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!?
アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。
王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!?
※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。
異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ

眠りから目覚めた王太子は
基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」
ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。
「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」
王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。
しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。
「…?揃いも揃ってどうしたのですか」
王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。
永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している
基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。
王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。
彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。
しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。
侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。
とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。
平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。
それが、運命だと信じている。
…穏便に済めば、大事にならないかもしれない。
会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。
侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約破棄ならもうしましたよ?
春先 あみ
恋愛
リリア・ラテフィール伯爵令嬢の元にお約束の婚約破棄を突き付けてきたビーツ侯爵家嫡男とピピ男爵令嬢
しかし、彼等の断罪イベントは国家転覆を目論む巧妙な罠!?…だったらよかったなぁ!!
リリアの親友、フィーナが主観でお送りします
「なんで今日の今なのよ!!婚約破棄ならとっくにしたじゃない!!」
………
初投稿作品です
恋愛コメディは初めて書きます
楽しんで頂ければ幸いです
感想等いただけるととても嬉しいです!
2019年3月25日、完結致しました!
ありがとうございます!

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・

これが私の兄です
よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」
私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。
理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。
だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。
何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。
周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。
婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる