460 / 673
405
しおりを挟む「なにに参加するのだ? 仕立て屋よ」
ひょいと割り込む悠然とした声。
「おおっ!? イケメンにーちゃん!」
「おはよう、麗しき同志と賑やかなる仕立て屋よ」
「おはよう、キアン」
挨拶を返すと、艶やかな琥珀の流し目が向けられた。どうやら、昨日よりは体調がいいらしい。それはいいとして、なぜに流し目を寄越すのか……?
「おはよー。な、な、聞いてくださいよ。ハウウェルってば、昨日は誰かの部屋でお泊り会なんかしてやがったんすよー? 俺とリールをほっぽってさー。フィールズの部屋かレザンの部屋か……ハッ、それともイケメンにーちゃんの部屋だったりっ!?」
「ふっ、よくぞ気付いたな、仕立て屋よ! そうだ、昨夜は二年振りにあった我が同志達とつもる話があってな……ついつい夜更かしをしてしまったのだ!」
「えー、ズルいっすよー」
「フハハハハハ、羨ましかろう!」
「……朝っぱらからなんの騒ぎだ?」
高笑いに、怪訝そうな声。
「お、リール! 聞けよ、ハウウェル達ってば、昨日俺らに内緒でイケメンにーちゃんの部屋でお泊り会してやがったんだってよ! ズルくね?」
どうやら、キアンはイケメンにーちゃんで定着したようだ。
「……子供じゃあるまいし。はしゃぎ過ぎじゃないか? そんなことより、俺は朝食を食べに来たんだ。静かにしろ」
「えー、リールが冷たいー」
「眼鏡は冷静だな」
と、ブーブー文句を言ってウルサいテッドに飄々としたキアンが適当に応じ、わーわー話す賑やかな朝食となった。
「そう言やさ、フィールズとレザンは?」
「小動物と剣士ならば、周辺を散歩して来ると言っていたぞ」
「散歩?」
「ああ」
散歩というか・・・まぁ、どちらかと言うと哨戒に近いと思うけど。
「いいなそれっ。な、な、俺達も探検行かね?」
「……お前、本当にはしゃぎ過ぎだぞ」
探検と言い出したテッドへ冷ややかな視線を送るリール。
「麗しき同志よ、どうする?」
「ぁ~……まぁ、悪くないんじゃない?」
なにかあったときの為に、周辺の様子をちゃんと自分の目で見て把握しておくのは大事だ。地図上だけでは、わからない情報がある。
「……ハウウェルまでそんなことを言うのか?」
テッドに同意するな、と非難するような視線。
「おー、なんだなんだハウウェルも探検したかったのかよー? それじゃあ、早速行こうぜ!」
「ま、探検というよりは、避難経路の確保かな? 長雨で土砂崩れとかしてもなんだし」
「なっ、おまっ、そんな不吉なこと考えてんのっ!?」
「……それはそれで、予想外な返答だな。まあ、単なる探検よりは意義があるだろうが」
「さすがは我が同志。安全確保に余念がないとは素晴らしい心懸けだ!」
と、フィールズ家別荘付近を探検することとなった。
20
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。
新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました
ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる