虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「なんで古語?」

 質問と同時に差し出された手に、今度は飴玉が乗せられる。この調子で、ガンガン食べ物が奪われて行くことだろう。

 なんでも、他人が自分で食べる用に持っている食べ物は毒物が仕込まれていることが少なく、比較的・・・安全だということを、経験上知っているのだとか。

 色々と人生経験が違う。

「ああ、それは教科書が古かったとしか言えんな。この国の言葉は我が国とは異なっている故、教材に使われている言葉自体が古かったのだ。一応、俺の面倒を見てくれたばあやがこの国の言葉を話せたが、使用したのがばあやよりも上の世代の教科書でな。優に百年程は前のものだったらしい」
「……道理で、なんとなく言葉が堅いワケだな」
「つか、言葉上手いですね? めっちゃ勉強したんですか?」
「勉強というよりは、異国の言葉を複数使い分けている方が面倒が少なかったまでのこと。文法が滅茶苦茶でいいのなら、六ヶ国程の言葉を知っている」
「うおーっ! めっちゃハイスペック!」

 なんて廊下で話していると、

「エリオット坊ちゃま、まだご案内していなかったのですか? ……キアン、あなたはこんなところでまたふらふらして」

 フィールズ家の使用人が現れてキアンを咎めるように見やる。

「あ、キアン先輩を咎めないであげて」
「キアン先輩、ですか? エリオット坊ちゃま」
「うん。僕の騎士学校時代の先輩で……」

 チラッとキアンへ伺うような視線を向けるエリオット。キアンは、ニヤリと笑って首を振る。多分、王族であることを口にしていいかという意図だろう。そしてキアンは、否とした。

「よくしてくれた人だから、失礼の無いようにして」
「それは、失礼しました。エリオット坊ちゃまがお世話になった方とは知らず、申し訳ありませんでした。これよりは、お客様として扱わせて頂きます」
「気にしていない。というより、金子は入用だからな。客としての扱いは半分でいい。代わりに、なにかさせてもらえるとありがたい」

 客として扱いを半分で、これまで通りに雇ってほしいというキアンの言葉に思案する様子の使用人。扱いに困るお客様だと思っていそうだ。

「部屋を手配して参ります」

 と、返事は保留にして行ってしまった。

「キアン先輩、働くんですか?」
「・・・雇い主の息子であれば、坊ちゃんと呼んだ方がいいだろうか?」
「えっと、その、普段通りでいいですよ?」

 まぁ、そりゃあ王族(自称かろうじて、だけど)に坊ちゃんなんて呼ばれたくはないだろう。

「そうか、では小動物」
「はいっ」
「小動物なのは変わんねーのな」
「俺はなにをすればいいんだ?」
「ふぇ? え~っと・・・とりあえず、ごはん食べません?」
「よし、では食事だ!」

 と、夕食を食べることになった。

__________


 『婚約者に改めてプロポーズしたら、「生理的に無理です」と泣かれた。俺の方が泣きたい……』という短編を投稿しました。

 タイトルの通り、婚約者にプロポーズしたら「生理的に無理です」と言われた男があれこれうじうじぐだぐだしながら、彼女と結婚したくて頑張るラブコメです。(笑)

 興味のある方は覗いてやってください。月白ヤトヒコのリンクからどうぞ~。

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