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しおりを挟む夕食を食べながら、泊まる宿を決めて、部屋割りをどうするのかとガヤガヤ話す。
「四人部屋なら結構あるけど、五人が泊まれる部屋はなかなかねーよなー」
「……二人部屋を二つ、一人部屋を一つでもいいのではないか?」
「ああ、その部屋割りだと、必然的にエリオットが一人部屋になるかな?」
「せ、折角皆さんと旅行中なのに、僕だけ一人部屋なんて嫌ですよっ!」
「だよなー」
「とりあえず、わたしとレザンが別々の部屋なのは決定」
「うむ」
「あとは三人で部屋割り決めれば?」
「それじゃあ、敢えて俺達とフィールズの三人。お前ら二人ってのはどうだ?」
ニヤリとイタズラっぽく笑うテッドに、
「ええっ!? そ、そんなっ……ぼ、僕一人にメルン先輩とグレイ先輩の命を預けるって言うんですかっ!? 荷が重いですよっ!!」
泣きそうな顔でエリオットが声を上げる。
「え? なんでそうなるん?」
「や、だからさっきも言ったじゃん。防犯上の観点からの組分けなんだって」
「うむ」
「一応、下手な宿には泊まらない予定だけど。それでも、貴族子息やいいとこの坊ちゃんが泊まってる部屋だってことで、万が一のことがないとも限らないし。それに、テッド。君に自覚は無いみたいだけど、裕福な平民は並みの貴族よりも狙われ易い存在なんだよ。そこのところ、確りと肝に銘じておくように」
この面子だと、明確に体格のいいレザンが賊に狙われる可能性は低いだろう。見るからに戦闘力高そう……というか、コイツは実際に強いし。
けれど、わたしも含めた他の四人に関しては、誰が狙われてもおかしくはない。
更に言うと、貴族ではない裕福な平民の方が、襲った後の面倒が少なくて済む……という風に考える輩も少なくないというワケだ。
「はあっ!? 俺っ!?」
「そう、一番狙われる可能性が高いのは君なんだよ」
「……まぁ、俺の家は貧乏だからな。狙う意味が無い」
「えっと、グレイ先輩は所作が平民には見えないですからね。ぱっと見では貴族に見えますし。それで、ちょっと狙われ難いんだと思います」
リールのおばあ様の教育の賜物というところか。
「そう、なのか?」
「うむ。貧乏でも没落でも、貴族に手を出すと国が動く可能性もあるからな。余程の犯罪組織か、相当な覚悟が無ければ貴族は狙うまい」
「ま、短絡的で相当な馬鹿共、ってのが抜けてるけど。それを踏まえた上で、部屋割りは確り考えようね」
「わ、わかった」
と、注意を促しておく。
少し脅かすようなことも言ったけど、本人の防犯意識は大事だ。
結局くじ引きで、リールとわたし。テッド、エリオット、レザンの三人という部屋割りに決まった。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
そして、ぐっすり眠った翌日。
「ふむ……曇っているな」
「う~ん、ちょっと空気が湿ってますよね」
「雨……降るかな?」
生憎の曇り空。雨降りでの移動は、舗装されていない道だと大変だ。水捌けが悪いと、足場が悪くなる。馬車の車輪が泥濘みにはまると、進まない。最悪、馬車の制御が利かなくて転倒や事故の可能性も高くなる。
そんな心配をしながら出発。
そして、案の定降り出した雨。
幸いなことに、視界が悪くなる程に強くはなく、しとしとと降り続いている。
スピードを落としてゆっくりと馬車が進む。
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