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しおりを挟むエリオットと手紙のやり取りをして、予定を決める。
セディーは自身の予定やルリア嬢の教育のこともあり、滞在期間は短め。
ちなみにわたしは、セディーよりも前乗りして道中の安全を確かめる予定。道中が安全でなかった場合は勿論、『危険だからセディーは来ないでね』という手紙を出す予定。
いつもの面子に関しては、休みギリギリいっぱいまで好きなだけ滞在をどうぞとのこと。それはそれでどうなのだろうか? まぁ、フィールズ伯爵家がいいならいいと思うけど。
なんでも、エリオットのご両親がエリオット本人よりも喜んでいるのだとか・・・この辺りは、わたしもお祖父様とおばあ様に喜ばれたからわからなくもないけど。まぁ、ちょっと恥ずかしいよね。嬉しいのは勿論なんだけど。
取り寄せた地図とにらめっこをしながら旅行の必需品を鞄に詰め込んで、準備をする。
そして、出発の日。
「それじゃあ行って来ます」
「ふふっ、楽しんでらっしゃい」
「気を付けて行くんだよ?」
にこにこと笑顔のおばあ様と、心配顔のセディーにハグをされて見送られた。
一旦学園に向かい、アホ共と一緒にフィールズ家の馬車で向かうことになっている。
セディーは後から、フィールズ家の馬車が先導してうちの馬車で向かう予定。
「ハウウェル先輩っ! こっちです、こっちっ!」
学園の前で停められている馬車が数台。そのうちの一つから身を乗り出して、わたしに手を振るエリオット。
荷物を持ってフィールズ家の馬車へ向かうと、
「よう、ハウウェル。お前、荷物は?」
後続の馬車から顔を出したテッドに聞かれた。
「? 持ってるよ」
「え? マジで? 荷物そんだけ?」
わたしの荷物はトランク二つ分。他の荷物は、フィールズ家の別荘へと先に送っておいた。
「それだけって、これでも多いと思ったんだけど」
「マジかっ!? いや、まぁ、なんつーか、レザンの荷物よりは多いけどさー」
なんだか驚かれた。
「それにしても、馬車は二台で行くの?」
「二台っつーか、こっち俺ん家の馬車な。荷物が多くて」
「なにを持って来たの?」
「んー、色々? 父さん母さんがあれこれ持ってけって」
成る程。テッドも家族が張り切った口か。
「……やはり、帯剣しているんだな」
ぼそりとした声。
「まあね。出掛けるときの必需品だから」
「おー、レザンもおんなじこと言ってたわ。んで、ハウウェルどっち乗るよ? ちなみ、こっちは俺とリール、レザンの三人で、そっちがフィールズ一人なー。四人ならちっと狭いかも。で、後で席替えな!」
「ひ、一人は寂しいのでこっち乗ってください!」
と、エリオットに引っ張られてフィールズ家の方の馬車へ乗ることになった。
まぁ、馬車の所有者という点では、エリオットがテッドの家の馬車に乗るワケにはいかないだろうし。防犯の観点から言うと、賊の襲撃に備えて一般人のテッドとリールの二人だけを乗せるワケにはいかないから、最初としては妥当な組み合わせかな?
それから、どうでもいいことを話したり、カードゲームをしたり、おやつを食べたり、疲れて寝転けたりして――――
休憩時間ごとにレザンとわたしが交代で両家の馬車を行ったり来たりして、わちゃわちゃとフィールズ家の別荘へと向かった。
当然のことながら、エリオットよりもテッドのがウルサかった。
ちなみに、リールは頑なにフィールズ家の馬車へ乗ることを拒否していた。なんでも、汚したりするのが怖いだのとか。
「ちょっとくらい汚れても気にしませんから、こっち乗りませんか?」
エリオットがそう聞いても、
「……俺は信じないぞ」
と青い顔で首を振っていた。
「な、な、部屋割りってどうすんの? くじ引きかっ?」
宿泊予定の町に到着すると、テッドがワクワク顔で聞いた。
「ふむ……別に構わないぞ」
「とりあえず、わたしとレザンが別であればいいんじゃない」
「そうですね」
「あ~、そう言やさ、さっきから気になってたんだけど・・・」
珍しく言い淀むテッド。
「うん? どうした、テッド」
「お前ら、喧嘩でもしてんの?」
わたしとレザンを伺うような視線。
「? 喧嘩? してないけど? なんで?」
「いや、だってお前ら、今日はずっとうちの馬車とフィールズん家の馬車行き来して、一度も同じ馬車に乗ってねーじゃん。それでいて、別の部屋にしろって言うから。喧嘩でもしてんのか? って思ってさ」
「ああ、別にそういうことじゃないから。単に、防犯の観点での組分けってやつ?」
「うむ。万が一賊の襲撃があった場合、戦えないテッドとリールだけを馬車に乗せるワケにはいかんからな。だから、常に俺かハウウェルがテッドの家の馬車に乗ることにしていた」
「ま、そういう意味では、エリオットを一人で乗せてても別にいいんだけどね」
「そ、そんなっ! 長時間一人で馬車に乗ってるのは寂しいじゃないですかっ!?」
いやいやと首を振るエリオット。
「そういうことで、別に喧嘩じゃないよ」
「ぉおう……そっち系の思考に基づく判断かよ」
と、なぜか若干引いたような顔をされた。
防犯は大事なことだというのに・・・解せない。
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