448 / 673
393
しおりを挟むエリオットと手紙のやり取りをして、予定を決める。
セディーは自身の予定やルリア嬢の教育のこともあり、滞在期間は短め。
ちなみにわたしは、セディーよりも前乗りして道中の安全を確かめる予定。道中が安全でなかった場合は勿論、『危険だからセディーは来ないでね』という手紙を出す予定。
いつもの面子に関しては、休みギリギリいっぱいまで好きなだけ滞在をどうぞとのこと。それはそれでどうなのだろうか? まぁ、フィールズ伯爵家がいいならいいと思うけど。
なんでも、エリオットのご両親がエリオット本人よりも喜んでいるのだとか・・・この辺りは、わたしもお祖父様とおばあ様に喜ばれたからわからなくもないけど。まぁ、ちょっと恥ずかしいよね。嬉しいのは勿論なんだけど。
取り寄せた地図とにらめっこをしながら旅行の必需品を鞄に詰め込んで、準備をする。
そして、出発の日。
「それじゃあ行って来ます」
「ふふっ、楽しんでらっしゃい」
「気を付けて行くんだよ?」
にこにこと笑顔のおばあ様と、心配顔のセディーにハグをされて見送られた。
一旦学園に向かい、アホ共と一緒にフィールズ家の馬車で向かうことになっている。
セディーは後から、フィールズ家の馬車が先導してうちの馬車で向かう予定。
「ハウウェル先輩っ! こっちです、こっちっ!」
学園の前で停められている馬車が数台。そのうちの一つから身を乗り出して、わたしに手を振るエリオット。
荷物を持ってフィールズ家の馬車へ向かうと、
「よう、ハウウェル。お前、荷物は?」
後続の馬車から顔を出したテッドに聞かれた。
「? 持ってるよ」
「え? マジで? 荷物そんだけ?」
わたしの荷物はトランク二つ分。他の荷物は、フィールズ家の別荘へと先に送っておいた。
「それだけって、これでも多いと思ったんだけど」
「マジかっ!? いや、まぁ、なんつーか、レザンの荷物よりは多いけどさー」
なんだか驚かれた。
「それにしても、馬車は二台で行くの?」
「二台っつーか、こっち俺ん家の馬車な。荷物が多くて」
「なにを持って来たの?」
「んー、色々? 父さん母さんがあれこれ持ってけって」
成る程。テッドも家族が張り切った口か。
「……やはり、帯剣しているんだな」
ぼそりとした声。
「まあね。出掛けるときの必需品だから」
「おー、レザンもおんなじこと言ってたわ。んで、ハウウェルどっち乗るよ? ちなみ、こっちは俺とリール、レザンの三人で、そっちがフィールズ一人なー。四人ならちっと狭いかも。で、後で席替えな!」
「ひ、一人は寂しいのでこっち乗ってください!」
と、エリオットに引っ張られてフィールズ家の方の馬車へ乗ることになった。
まぁ、馬車の所有者という点では、エリオットがテッドの家の馬車に乗るワケにはいかないだろうし。防犯の観点から言うと、賊の襲撃に備えて一般人のテッドとリールの二人だけを乗せるワケにはいかないから、最初としては妥当な組み合わせかな?
それから、どうでもいいことを話したり、カードゲームをしたり、おやつを食べたり、疲れて寝転けたりして――――
休憩時間ごとにレザンとわたしが交代で両家の馬車を行ったり来たりして、わちゃわちゃとフィールズ家の別荘へと向かった。
当然のことながら、エリオットよりもテッドのがウルサかった。
ちなみに、リールは頑なにフィールズ家の馬車へ乗ることを拒否していた。なんでも、汚したりするのが怖いだのとか。
「ちょっとくらい汚れても気にしませんから、こっち乗りませんか?」
エリオットがそう聞いても、
「……俺は信じないぞ」
と青い顔で首を振っていた。
「な、な、部屋割りってどうすんの? くじ引きかっ?」
宿泊予定の町に到着すると、テッドがワクワク顔で聞いた。
「ふむ……別に構わないぞ」
「とりあえず、わたしとレザンが別であればいいんじゃない」
「そうですね」
「あ~、そう言やさ、さっきから気になってたんだけど・・・」
珍しく言い淀むテッド。
「うん? どうした、テッド」
「お前ら、喧嘩でもしてんの?」
わたしとレザンを伺うような視線。
「? 喧嘩? してないけど? なんで?」
「いや、だってお前ら、今日はずっとうちの馬車とフィールズん家の馬車行き来して、一度も同じ馬車に乗ってねーじゃん。それでいて、別の部屋にしろって言うから。喧嘩でもしてんのか? って思ってさ」
「ああ、別にそういうことじゃないから。単に、防犯の観点での組分けってやつ?」
「うむ。万が一賊の襲撃があった場合、戦えないテッドとリールだけを馬車に乗せるワケにはいかんからな。だから、常に俺かハウウェルがテッドの家の馬車に乗ることにしていた」
「ま、そういう意味では、エリオットを一人で乗せてても別にいいんだけどね」
「そ、そんなっ! 長時間一人で馬車に乗ってるのは寂しいじゃないですかっ!?」
いやいやと首を振るエリオット。
「そういうことで、別に喧嘩じゃないよ」
「ぉおう……そっち系の思考に基づく判断かよ」
と、なぜか若干引いたような顔をされた。
防犯は大事なことだというのに・・・解せない。
20
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

魅了から覚めた王太子は婚約者に婚約破棄を突きつける
基本二度寝
恋愛
聖女の力を体現させた男爵令嬢は、国への報告のため、教会の神官と共に王太子殿下と面会した。
「王太子殿下。お初にお目にかかります」
聖女の肩書を得た男爵令嬢には、対面した王太子が魅了魔法にかかっていることを瞬時に見抜いた。
「魅了だって?王族が…?ありえないよ」
男爵令嬢の言葉に取り合わない王太子の目を覚まさせようと、聖魔法で魅了魔法の解術を試みた。
聖女の魔法は正しく行使され、王太子の顔はみるみる怒りの様相に変わっていく。
王太子は婚約者の公爵令嬢を愛していた。
その愛情が、波々注いだカップをひっくり返したように急に空っぽになった。
いや、愛情が消えたというよりも、憎悪が生まれた。
「あの女…っ王族に魅了魔法を!」
「魅了は解けましたか?」
「ああ。感謝する」
王太子はすぐに行動にうつした。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる