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しおりを挟む「で、この近辺は安全なの?」
「はい。この別荘は、お祖父様がお母様の結婚祝いに贈ったという別荘ですからね。公爵家の方の手も多少は入っているので、僕達の旅行中に不逞の輩に出くわしたことはありません!」
キッパリと断言するエリオット。
それにしても、結婚祝いで別荘を娘さんへ贈るとは豪気な。さすがは公爵家ですねぇ。
もしかしたら、フィールズ家のバカンスに合わせて賊の討伐予定を組んでいたりするかもしれませんね。
「そう。わかった」
公爵家の手が入っているなら、余程のことが無い限りは安全でしょう。
「この地図は、外で買えるやつ?」
「一般販売されているのは、もっと荒い感じの地図だと思います」
ああ、やっぱりそうか。とりあえず、この地方の地図は後でうちで探すか、無ければ入手するとして。
「それじゃあ、頭に叩き込むからもう少し見せてね?」
「はいっ、存分にどうぞ♪」
別荘へ向かう途中には、橋で川を渡るルートと川を迂回するルートがある。
雨が長く続いて増水すると、安全の為に迂回して遠回りのルートになる。その場合は足元も悪いだろうから、何日も掛かる可能性もある。天候次第では日程をずらすか、最悪中止の事態にもなり得る。
まぁ、セディーのスケジュール調整もあるからなぁ。その辺りは、どうなっているかわたしにはわからないし。
そんな風にあれこれ考えながら、じっと地図を見詰めていると・・・
「よ、お前らそーんな真剣な顔してなに見てんの? なんか面白いもの・・・ハッ! まさかラブレターでも貰ったのかっ!?」
「もうっ、なに言ってるんですかメルン先輩っ! 誰かが一生懸命書いたお手紙を面白いもの扱いするとか、みんなで見ようだとか、そういう無神経なこと言っちゃ駄目なんですよっ」
「うおっ!? まさかフィールズから説教を食らうとはっ!?」
「うむ。人が一生懸命想いを綴った文を、そんな風に扱うのはよくないぞ」
「いや、冗談だから! 俺そんな酷いことしねぇってばっ! むしろ女の子からラブレターなんて貰ったら大事に大事に読むから!」
「それならいいんです」
「……どう見ても地図だな」
「うむ。地図だ」
「んで、なんでそんな真剣に地図見てんの? しかも、わざわざ会議室なんか使っちゃってさー」
「あ、僕のおうちの別荘付近の地図です」
「おお、フィールズん家の別荘! で、どこら辺にあんの?」
「あ、もう少し待ってくださいね」
「? おう、いいけど。なんで?」
「ハウウェル先輩が地図を覚えるそうなので。こういったときに邪魔したり茶化すようなことすると、ハウウェル先輩とっても怒って、すっごく怖いんですよ~」
「うむ。下手をすると、本気でぶん殴られる」
「え? なんでそんな物騒なん?」
「前に……ふざけて地図を見てるハウウェル先輩の邪魔した人達がいて。それを、『五月蠅ぇ。わたしの邪魔するな、馬鹿共が』ってドスの利いた低い声で言って、即行でその人達の急所をぶん殴って、次々と沈めていましたよっ」
「うむ。そういうときのハウウェルは、いつもより凶悪になるな」
「ヤだっ、なんかマジやべぇ奴じゃん!」
「・・・君達、煩いよ?」
なんだか煩いと思って顔を上げると、
「イヤっ、やめて! 殴らないでっ!?」
必死で首を振る奴が……
「は? いきなりそんなことするワケないでしょ・・・って、テッドとリール? いつの間に来たの?」
気付かなかった。
「……割とさっきからいたんだがな」
やれやれという顔で肩を竦めるリール。
「ああ、そう。道理で。なんか煩いと思った」
「もういいんですか?」
「うん。ある程度覚えたから、大丈夫。ありがとうエリオット」
「いえいえ、どう致しましてっ」
「じゃ、わたしはもう帰るから。セディーが参加するかは、セディーの予定次第ね」
「はいっ、わかりました。セディック様の参加は予定次第ということは、ハウウェル先輩は参加してくれるってことですねっ♪」
嬉しそうに笑うエリオット。
「ま、お祖父様とおばあ様に聞いてみる」
「いいお返事待ってますっ♪」
「気を付けて帰るといい」
「またなー」
「……じゃあな」
と、アホ共と別れてうちへ帰った。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
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