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「っ……失礼するわ!」

 フィールズ嬢にたじろいだ様子の彼女は、悔しそうに去って行った。

「全くもうっ・・・すみませんでした。彼女は去年までわたくしが通っていた女学院の同級生で、一応母方の遠縁でもあるんですが・・・『自分の母親が公爵家に嫁いでいれば、自分が公爵令嬢だったのに』と言って、なにかとわたくしに絡んで来る困った子でして」
「そうですか。まあ、親戚付き合いも女性同士のお付き合いにも、色々とありますからね。フィールズ様は、大丈夫でしょうか?」

 顔を青くしているエリオットを気遣うケイトさん。

「あのね、エリー。これくらいで顔色変えてるんじゃないわよ。あなた、ルリアの隣に並ぶんでしょ。そんなんじゃ、ルリアを守れないわよ」
「……ご、ごめん、レイラちゃん」
「ほら、しゃんとする!」

 バシッと、謝るエリオットの背中を叩く音。

「が、がんばるっ……」
「その意気よ」

 前に見たときにはエリオットの方が兄のようにも見えたけど・・・エリオットに発破を掛けて、苦手を克服しろと言う姿は、フィールズ嬢の方が姉のようにも見える。

 この二人は、結構面白い関係だと思う。

「エリー……エリオットは大丈夫ですが、そちらの先輩は?」
「! あまり、構わないでもらえるとありがたい、です……」

 視線を向けられたリールが、パッと顔を背ける。

「ああ、グレイ先輩は僕とはまた違った感じに女の人が苦手なんだって」
「まあ、それはお見苦しいものを見せてしまい、失礼しました。それじゃあ、わたくしはエリオットと一曲踊ったら離れますので、エリオットを宜しくお願いします」
「え? レイラちゃん?」
「いやっ、俺に構わないでもらえたら、それでいいので。どうかお気になさらず。公爵令嬢の過ごしたいようにお過ごしください」

 謝罪するフィールズに慌てて首を振るリール。

「そうですそうです。コイツのことなんか気にしないでください。女の子苦手なのは単なるシャイ野郎ってだけのことですから!」

 うんうんと頷き、テッドもフィールズ嬢を引き留める。

「え?」
「そうですね……パートナーが離れると、これ幸いと近付いて来るような人もいますから。もしレイラ様がお嫌でなければ、フィールズ様と一緒にいた方がいいかもしれません」

 まぁ、わたし達には最初の態度がちょっとアレだったけど、フィールズ嬢は公爵令嬢。それも、今はエリオットとの婚約を解消したばかりでフリーと来た。

 この学園は男女交際に付いてかなり厳しい校風とは言え、交流会で羽目を外したりだとか、公爵令嬢の彼女に下心を持って近付く輩がいないとも限らない。

「そうだよ、レイラちゃんは可愛い女の子なんだから。パーティーで、可愛い女の子が一人になると危ないって姉様達が言ってたんだから」
「え? なにこれ? フィールズがお嬢さん口説いてんの?」
「ふぇ? なんでそうなるんですか?」
「え? だって、お嬢さんのこと可愛いって」
「? レイラちゃんは可愛いですよね?」

 きょとんと首を傾げ、なぜかわたしに聞くエリオット。

「まぁ、そうですね。フィールズ嬢の容姿は整っていますから。気を付けた方がいいですよ。それに、エリオットの虫除けになるのでしょう? 離れては意味がありませんよ」
「・・・ハウウェル様に容姿が整っていると言われると、なんだか微妙な気分になりますが、わかりましたわ。それじゃあ、踊りに行くわよエリー」
「え? あ、待ってレイラちゃん」

 と、エリオットを引っ張って踊りに行ったフィールズ嬢。

「・・・なにが微妙な気分になるんだろ?」
「まぁ、レイラ様のお気持ちはわからなくもありませんけどね」

__________


 レイラちゃんの母方の遠縁なので、エリオットとは他人。会ったことのないやっかみお嬢さんでした。(笑)

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