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しおりを挟むクスリと笑うケイトさん。
「! 失礼しました。背が高くて困るのですか?」
「そうですね。女性で背が高いと、殿方には敬遠されることもあるので。隣に並びたくない、ダンスを踊りたくない、なんて言われることもありますから」
「なんて失礼な! ……まさか、そんな酷いことを仰ったりはしていませんよね? ハウウェル様は」
と、胡乱げな眼差しで見上げられた。
そう言えば、今日はケイトさんがドレス姿。そして、ヒールを履いている。女性にしては背の高めなケイトさんの目線は、男としてはあまり背の高くないわたしよりもほんのちょっと上になっている。
「もうっ、なに言ってるのレイラちゃん! ハウウェル先輩がそんなみみっちいこと気にするはずないでしょ?」
「おお、出た! フィールズの、謎なハウウェルへの信頼感!」
「ふぇ?」
「まぁ、ケイトさんは兄の婚約者なので、わたしは気にしていませんよ」
セディーの方がわたしよりも背高いし。このくらいのヒールなら、セディーも大して気にしないと思う。というかそもそも、そういうことを気にするタイプとも思えないし。
「ああ、そう言えばそうでしたわね。セディック様よりも、ハウウェル様と並んでいる姿を多く見ているような気がしますから」
「ふふっ、セディック様の方が年上ですからね。年齢的なものは仕方ありません」
年齢的なものというか・・・こないだ、セディーがダンスを嫌がってわたしに代役をさせたからなぁ。多分、あれの影響もありそうだ。
これは、是非ともセディーにはケイトさんと踊ってもらわないと。
「それに、レイラ様はそんなに小柄という程でもないと思いますよ」
「そうでしょうか?」
「ええ」
確かに。フィールズ嬢は背が低めとは言え、とても低いという程ではない。さっき自分でも言っていた通り、これから伸びる可能性も十分ある。
「あ~ら、これはこれはフィールズ公爵令嬢ではありませんか」
「!」
と、割り込んだ女声にビクッとするエリオット。どうやら、本当にまだ女の子が苦手なのは治っていないらしい。
「確か、お二人の婚約は解消されたというお話ではありませんでした? わたくしの聞き間違いだったでしょうか?」
イヤミを言うのは、フィールズ嬢の知り合いだろうか? 多分、新入生だと思うけど。
「あら、挨拶もせずに話に割り込んで来るだなんて、一体どういう教育を受けて来たのかしら? まあ? 生徒間交流会で一種の無礼講ではありますけど、それでも人の話にいきなり割って入るだなんて、失礼じゃありませんこと?」
皮肉で返すフィールズ嬢。
「まさか、これだけ目立っている先輩方が見えなかったとでも仰るのかしら? 目がお悪いのでしたら、眼鏡をお作りになられては如何かしら?」
「っ!?」
「ああ、それと、エリオットとの婚約でしたかしら? エリオットとは確かに婚約を解消致しましたわ。幼い頃から一緒に過ごすことが多くって、ぃ……弟のようにしか思えなかったもので。ちなみに、エリオットはわたくしの妹の婚約者なので。妹の婚約者に変な虫でも寄り付いては困ると思ってエスコートをさせているのですけど。それがなにか?」
あ、今多分、妹のように、と言い掛けて弟って言い直したんだと思う。
「エリオットは、わたくしの可愛い妹の婚約者ですので、エリオットになにか用があるのでしたら、わたくしに、フィールズ公爵家のレイラ・フィールズに話を通して頂けます?」
と、イヤミを言って来た彼女に一言も喋らせること無く、婚約解消の対外的な理由と、エリオットへちょっかいを出すなと周囲への牽制をしてのけた。
「それで、一体なんの用なのかしら? まさか、くだらないイヤミを言う為に声を掛けたワケではありませんわよね?」
「っ……失礼するわ!」
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