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しおりを挟む「なんですの? あの態度の悪い方は」
「ああ、あれはパートナーがいないので、気が立っている方ですね。気にしてはいけません」
不快そうに眉を顰めるフィールズ嬢に、小さく返すケイトさん。
「そうなんですか?」
「ええ。それに、ああいう不機嫌な方がいることで、学園の平穏が保たれているという側面もありますからね。あまり嫌わないであげてください」
「学園の平穏、ですか?」
「ええ。ああやって目を光らせている方がいることで、不埒なことをする輩が減りますので。ある意味、女子生徒の味方ですから。普段は穏やかな方も多いのですが……」
普段は優しく穏やかという評判の生徒が、『見せ付けカップル爆発しろっ!?』という思想の下、こういう行事のときにのみ修羅の如く、鵜の目鷹の目で不埒なことをする生徒を密告、糾弾するというのもよくあることだそうです。
それで、女子生徒の評判や名誉が守られることもあるので、確かに女子生徒の味方とも言えるでしょう。
カップルへの態度はかなり悪いですが。
「ああ、あれは警護の方でしたのね」
「成る程です。道理で眼光が鋭いワケですねっ。悪いことをするなという威嚇の態度だったんですか」
と、うんうんと頷くフィールズ嬢とエリオット。まぁ、あれは一応風紀委員でも生徒会役員でもない、パートナーを組んでいるカップルに苛立っている一般生徒……なんだけどね。
なんというか、あれだ。ちょいちょい見受けられるこういう反応に、この二人はターシャおば様のお孫さんなのだという感慨が湧きますねぇ。
「ふふっ、ええ。そのようなものですね」
クスリと笑って肯定するケイトさん。
「さ、行きましょう」
「はい」
と、会場入り。
すると、あちこちから突き刺さる視線。そして、溜め息の音。
今日のケイトさんはいつもの凛とした態度に加えて、多分おばあ様セレクトの清楚さと大人っぽさの中にも、可愛らしさまで感じさせるドレス姿。
皆さんが溜め息を落とすのも当然の反応でしょう。
というワケで、わたしは気合を入れてケイトさんの虫除けに努めなくてはいけませんね!
それから暫くして会場に生徒が溢れ、高等部の新生徒会による交流会開会の挨拶。
そして、吹奏楽部による演奏が始まってすぐ。
「お、ハウウェルと……部長っ!? 今日はめっちゃ綺麗ですねっ!?」
「うむ。よくお似合いです」
「っ!」
驚きの声を上げるテッド、さらっと誉めるレザン、こくこくと赤い顔で頷くリール。
「あら、皆さん。ありがとうございます」
「あ、レイラちゃんも誉めてあげてください」
「へ? ああっ、フィールズの元婚約者のお嬢さんっ!?」
「……一応、先程からいましたけど」
「ふむ。セルビア部長とハウウェルよりは小柄ですからね」
「クロフト様? 誰が小さいですって?」
不機嫌な低い声。
「や、僕とレイラちゃんがハウウェル先輩とケイト様よりも小さいのはホントだから」
「ウルサいわね! わたくしはこれから伸びるの! それに、今日はヒール履いてるんだから、いつもよりは少し背が高いもの!」
「・・・もしかしてレイラちゃん、小さいの気にしてるの?」
「はあっ!? 別に気にしてないわよ! エリー……エリオットに身長抜かれたこなんて、全くなんとも思ってないんだから! 少しくらい背が伸びたからって、調子に乗らないことね!」
ああ、これは思いっ切り気にしているやつだ。
「あまり身長が高くなり過ぎても、困るものですよ」
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