虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
439 / 673

384

しおりを挟む


「なんですの? あの態度の悪い方は」
「ああ、あれはパートナーがいないので、気が立っている方ですね。気にしてはいけません」

 不快そうに眉をひそめるフィールズ嬢に、小さく返すケイトさん。

「そうなんですか?」
「ええ。それに、ああいう不機嫌な方がいることで、学園の平穏が保たれているという側面もありますからね。あまり嫌わないであげてください」
「学園の平穏、ですか?」
「ええ。ああやって目を光らせている方がいることで、不埒なことをする輩が減りますので。ある意味、女子生徒の味方ですから。普段は穏やかな方も多いのですが……」

 普段は優しく穏やかという評判の生徒が、『見せ付けカップル爆発しろっ!?』という思想の下、こういう行事のときにのみ修羅の如く、鵜の目鷹の目で不埒なことをする生徒を密告、糾弾するというのもよくあることだそうです。

 それで、女子生徒の評判や名誉が守られることもあるので、確かに女子生徒の味方とも言えるでしょう。

 カップルへの態度はかなり悪いですが。

「ああ、あれは警護の方でしたのね」
「成る程です。道理で眼光が鋭いワケですねっ。悪いことをするなという威嚇の態度だったんですか」

 と、うんうんと頷くフィールズ嬢とエリオット。まぁ、あれは一応風紀委員でも生徒会役員でもない、パートナーを組んでいるカップルに苛立っている一般生徒……なんだけどね。

 なんというか、あれだ。ちょいちょい見受けられるこういう反応に、この二人はターシャおば様のお孫さんなのだという感慨が湧きますねぇ。

「ふふっ、ええ。そのようなものですね」

 クスリと笑って肯定するケイトさん。

「さ、行きましょう」
「はい」

 と、会場入り。

 すると、あちこちから突き刺さる視線。そして、溜め息の音。

 今日のケイトさんはいつもの凛とした態度に加えて、多分おばあ様セレクトの清楚さと大人っぽさの中にも、可愛らしさまで感じさせるドレス姿。

 皆さんが溜め息を落とすのも当然の反応でしょう。

 というワケで、わたしは気合を入れてケイトさんの虫除けに努めなくてはいけませんね!

 それからしばらくして会場に生徒が溢れ、高等部の新生徒会による交流会開会の挨拶。

 そして、吹奏楽部による演奏が始まってすぐ。

「お、ハウウェルと……部長っ!? 今日はめっちゃ綺麗ですねっ!?」
「うむ。よくお似合いです」
「っ!」

 驚きの声を上げるテッド、さらっと誉めるレザン、こくこくと赤い顔で頷くリール。

「あら、皆さん。ありがとうございます」
「あ、レイラちゃんも誉めてあげてください」
「へ? ああっ、フィールズの元婚約者のお嬢さんっ!?」
「……一応、先程からいましたけど」
「ふむ。セルビア部長とハウウェルよりは小柄ですからね」
「クロフト様? 誰が小さいですって?」

 不機嫌な低い声。

「や、僕とレイラちゃんがハウウェル先輩とケイト様よりも小さいのはホントだから」
「ウルサいわね! わたくしはこれから伸びるの! それに、今日はヒール履いてるんだから、いつもよりは少し背が高いもの!」
「・・・もしかしてレイラちゃん、小さいの気にしてるの?」
「はあっ!? 別に気にしてないわよ! エリー……エリオットに身長抜かれたこなんて、全くなんとも思ってないんだから! 少しくらい背が伸びたからって、調子に乗らないことね!」

 ああ、これは思いっ切り気にしているやつだ。

「あまり身長が高くなり過ぎても、困るものですよ」

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

処理中です...