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しおりを挟む「面白くない面白くない」
元同級生の、かろうじて王位継承権を持つ異国の王族こと、キアン・ナーガルージュナ。不幸自慢やら勝負事やら賭け、頼んでいない占いやらと、なにかにつけて人から食料や学用品を巻き上げるので、騎士学校で付いたあだ名が、『物乞い殿下』という残念さ。
ちなみに、プリンスはプリンスでも、王子ではないところがみそ。彼は王妹の息子なので、殿下と呼ばれる身分には当たる。けれど、王の子ではない。よって、殿下ではあるが、王子ではない。
それに彼は、王子と呼ばれることを嫌っている。王子と呼ぶと、それはそれは大層不機嫌になったものだ。場合によっては、手が出る事態になることもあった程。
なんでも、自国の王族が大嫌いらしい。親族とも称されたくないのだとか。まぁ、彼の置かれた立場と、きな臭い事故が多発する環境を鑑みると当然のことだとも思うけど。
「まぁ、あんな奴のことはおいといて。君は休みどうするの?」
「ふぇ? あ、えっと……その」
と、話をぶった切って聞くと、なぜかもじもじとしてわたし達を見やるエリオット。
「なに?」
「お、なになに? 頬染めちゃってさー、今から告白でもするん?」
ニヤニヤと軽口を叩くテッド。
「僕のうちの別荘に、皆さんをお誘いしてもいいですかっ?」
「あ、そういう感じの告白っつか、お誘いかー」
「別荘?」
「はいっ! 折角の長期休暇なんですから、一緒に遊びたいなぁって。駄目、ですか? あ、セディック様も一緒にどうぞっ」
「あ、はいはい、俺行くー」
「……またお前は、そんな風に軽く返事していいのか?」
苦言を呈するリール。以前に、テッドが家族に怒られたと言っていたことを示唆しているのだろう。
「ま、いいんじゃね?」
「あ、勿論、馬車はうちで出しますから、メルン先輩もグレイ先輩もレザン先輩も全然遠慮とかしないでくださいねっ」
「ふむ……いいだろう」
「……考えておく」
「んで、ハウウェルはどうすんの?」
別荘、ね。エリオットの家の。
「・・・地図を要求する」
「は? なんでいきなり地図よ?」
「いや、初見の場所に行くときに地図を確認するのは常識でしょ。馬車ルート、乗馬ルート、徒歩ルート。天候によっての往路、復路の複数ルートの確認。近場の人里の確認。水場の有無。確認することは山程あるんだから」
「え? ヤだ、目がマジなんだけどっ」
「まあ、ハウウェルは遠征過程には人一倍神経質だからな。教官も、よく誉めていたものだ」
「遠征っ!? なんかおかしくねっ!? どこ攻める気だよっ!!」
「は? どこも攻めないけど。なに言ってんの? どこに置き去りにされても無事帰れるように準備するのは当然のことでしょ」
「さすがハウウェル先輩ですねっ! あ、地図は用意しておきますねっ♪」
まぁ、まだ行くなんて言ってないけどね?
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
おうちに帰るまでが遠征です。( ・`д・´)
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