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しおりを挟むと、エリオット、フィールズ嬢のペアがスタンバイする。
「ケイトねえさまとネイトにいさまのくるくる、とってもきれいでしたっ!」
きらきらとした瞳で、興奮したように顔を赤くしてケイトさんに抱き付くリヒャルト君。
「リヒャルトっ!」
「きゃー!」
と、ぎゅ~っと抱き合うラブラブな姉弟に、若干戸惑うような視線を向けるレザン。まぁ、普段のクールなケイトさんの姿しか知らなかったら驚くとは思う。ケイトさんがブラコンなのは知っていた筈なんだけどな?
「はい。凛としていて、とっても美しいダンスでした」
と、こちらも瞳をきらきらとさせてわたしを見上げるルリア嬢。彼女にはケイトさんとリヒャルト君がぎゅ~っとハグしている姿への動揺は見られない。もしかしたら、ケイトさんとリヒャルト君の仲の良さには慣れているのかもしれない。まぁ、一緒に授業を受けているから見慣れているのかな?
「ありがとうございます。美しく見えたというのでしたら、それはケイトさんの腕がいいからですね。スローステップワルツは本来、美しく見せるのがとても難しいダンスなんですよ」
「そうなのですか?」
「ええ。あれは、筋肉や体力が付いていないと踊るのが厳しいので」
女性がリード側へ体重を掛けっぱなしで踊ることも可能ではある。けれどその場合、リード側に相当な腕がないと、美しく踊っているようには見えないだろう。男女のパートどちらにしろ、ある程度の努力の求められるダンスではある。
「筋肉と体力が必要なのですか? あんなに優雅でしたのに?」
「ふふっ、優雅に見せるには筋肉と体力が必須ですよ。バタ足で水面を進む白鳥と同じですね」
「見えない努力ということですね」
「そうですね」
「あの、そろそろ踊っても宜しいかしら?」
一向にあちらへ注目しないわたし達に、少し不機嫌そうな声が掛けられる。
「っ……失礼致しました。どうぞ」
慌てて姿勢を正すケイトさん。
「ルリアも、ちゃんとレイラ姉様のことを見ててよね? 折角お手本で踊るんだからっ」
「すみません、レイラ姉様」
と、スタンバイしていたエリオットとフィールズ嬢へ注目が集まったところで、曲が始まった。
軽やかなステップでくるくると広がるドレスの裾。ツンとした態度で、けれど楽しそうに踊るフィールズ嬢。そして苦笑気味だけど、笑った顔で的確なフォローをするエリオット。
元婚約者同士のダンスではあるけど・・・あれだ。こう言ってはなんだけど、色気的なものを全く感じない。姉弟とか兄妹という雰囲気の微笑ましいダンス。
「腕は鈍ってないようね、エリー」
「レイラちゃんは、ちょっとステップ怪しくなかった?」
「そんなことないわよっ」
それから、ケイトさんとレザンのペアのタンゴ。
「宜しくお願いします、クロフト様」
「こちらこそ」
密着……と言っていい程、二人の距離が近い。タンゴなんだから当然ではあるけど。セディーは……もう少し気にした方がいいと思うなぁ。
曲が始まると同時にダン! ダン! ダン! と、床を踏み鳴らす、激しくも力強いステップ。確かに距離は近いんだけど……こっちもまるで色気を感じない。どちらかというと、今から競技にでも出るような、決闘でもしているかのような雰囲気が漂っている。
「ねえさまかっこいいですっ!!」
「凄い迫力でしたわ」
ぱちぱちと響く拍手。
「休憩を」
ケイトさんへ手を差し出す。
「……ありがとうございます、ネイサン様」
ふぅ、と息を吐いて応えるケイトさん。その顔が赤い。三種類(そのうち二種類がハードなダンス)も踊るのはさすがに疲れるよね。椅子の方へ連れて行って座らせる。
「真剣勝負しているような雰囲気でしたっ!」
「ふむ、そうか」
「さ、次はわたくし達よ、エリー」
「そうだね、行こうか? レイラちゃん」
__________
迫力は凄いのに、色気を全く感じないダンス。(笑)
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