423 / 673
368
しおりを挟む「では、挨拶も済みましたし、そろそろダンスレッスンを始めませんか?」
にこりと促すルリア嬢。
「そうですね。では、基本のダンスを踊ってみようと思いますので、手を貸して頂けます?」
と、セディーへ向けて手を差し出すケイトさん。
「あ、僕はピアノを弾きますので。お相手はネイトにお願いします」
「・・・あのね、セディー? セディーが運動苦手なのはわかるけど、せめて最初の一回はセディーがケイトさんと踊るべきでしょうが?」
じとっとセディーを睨む。
「セディーにいさまは、ケイトねえさまとおどるの、いやですか?」
悲しそうな顔でセディーを見上げるリヒャルト君。
「ぅ……いえ、リヒャルト君。それは違います。その、僕はあまり踊るのが得意ではないので、いいお手本にはならないと思って……すみません、ケイトさん」
「ふふっ、およそそんなところだろうと思っていました。大丈夫ですよ。今日は完璧に踊らなくても」
「え? いいんですか?」
「ええ。今日は、楽しく踊ることが課題です。楽しくないとレッスンが続かないでしょう? レイラ様、ピアノをお願いしても?」
「はい、任せてください」
「曲は、そうですね。少しテンポの速いワルツで」
クスクスと笑いながらセディーの手を取り、少し離れた位置でホールドの体勢へ。
タン、と軽快に始まった曲で最初のステップが踏み出される。
「!」
「ふふっ」
驚きの表情を浮かべるセディー。そして、くるくると滑らかに回る二人を見て……
「? セディックお兄様、ちゃんと踊れてますよ?」
「ですよね? ルリアねえさま」
きょとんと首を傾げる小さな二人。
まぁ、セディーとケイトさんの二人は、一見綺麗に踊れているように見える。けど、あれは完璧にケイトさんのリードだ。多分、ケイトさんが相手じゃなかったら、セディーのダンスはもう少し下手に見えることだろう。それに・・・
「っ……す、すみません」
「ふふっ、そろそろ交代しましょうか?」
「はい」
セディーのステップが怪しくなって来た辺りで足を止めるケイトさん。
「でも、そうですね。せめて二回分は踊れる程の体力を付けてもらわないと困ります」
「・・・精進します」
二回以上同じ人と踊るのは、その相手が婚約者か夫婦などのパートナーだと周囲へ知らしめる行為だ。つまり、婚約者なのだからちゃんと踊れるようにしておきなさいというお達し。
「では、レイラ様と交代してください」
「はい」
しょんぼりと……というよりは、疲れたような足取りでピアノへ向かうセディー。
まぁ、ダンスって美しく踊ろうと思ったら結構体力消耗するからなぁ。
アップテンポなワルツは、スタンダードやスローテンポのワルツに比べると、あまり下手には見えないダンス。お兄様と慕ってくれる子達の前で下手に見えないようにと、ケイトさんに気を遣われています。
でも、もう少し体力付けようか、セディー。
「レイラ様は、どのダンスがお好きでしょうか?」
「そうですね……クイックステップは好きですわ」
「フィールズ様、クロフト様、ネイサン様は踊れますでしょうか?」
「あ、僕クイックステップ得意ですっ」
「では、クイックステップとスタンダードなワルツはフィールズ様とレイラ様にお手本をお願いしましょうか。宜しいでしょうか? ルリアさん」
エリオットの婚約者であるルリア嬢への確認。
「はい。エル兄様、レイラ姉様をお願いしますね?」
「いいの? エリー」
「うん。一緒に踊るのは久し振りだね、レイラちゃん」
「そうね。足踏まないでよねっ」
「レイラちゃんの方こそね」
ルリア嬢の快諾とフィールズ嬢の確認に頷くエリオット。
「では、ネイサン様にはスローワルツのお相手をお願いしても?」
「はい。スローワルツは少し難しいですが、見苦しくない程度には踊れますので」
「クロフト様は、タンゴは踊れますか?」
「うむ。ダンスは然程得意ではありませんが、一通りは踊れます」
「では、タンゴをわたしとお願いします」
「はい」
と、誰がどのダンスを踊るのかとペアが決まった。
15
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢の立場を捨てたお姫様
羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ
舞踏会
お茶会
正妃になるための勉強
…何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる!
王子なんか知りませんわ!
田舎でのんびり暮らします!
婚約者の隣にいるのは初恋の人でした
四つ葉菫
恋愛
ジャスミン・ティルッコネンは第二王子である婚約者から婚約破棄を言い渡された。なんでも第二王子の想い人であるレヒーナ・エンゲルスをジャスミンが虐めたためらしい。そんな覚えは一切ないものの、元から持てぬ愛情と、婚約者の見限った冷たい眼差しに諦念して、婚約破棄の同意書にサインする。
その途端、王子の隣にいたはずのレヒーナ・エンゲルスが同意書を手にして高笑いを始めた。
楚々とした彼女の姿しか見てこなかったジャスミンと第二王子はぎょっとするが……。
前半のヒロイン視点はちょっと暗めですが、後半のヒーロー視点は明るめにしてあります。
ヒロインは十六歳。
ヒーローは十五歳設定。
ゆるーい設定です。細かいところはあまり突っ込まないでください。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
もう誰にも奪わせない
白羽鳥(扇つくも)
恋愛
妹に奪われ続けてきました。お人形も本もドレスも、家族の愛も…
そしてその対象が婚約者になる頃には、私は全てを諦めていた。
ある時、「悪役令嬢」を名乗る第二王子の婚約者と話した後、
彼女だと勘違いされた男から関係を強要されてしまう。
責任を取って新たな婚約を結んだものの、理不尽にも恨まれてしまい…
そんな私にも、奪われない物はあった。絶対に、誰にも。
※表記には軽いですが性描写が入ります。R15越えはありません。
※アルファポリスでの掲載再開しました。第二章は一日二話投稿です。
※第15回恋愛小説大賞に参加。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる