418 / 673
363
しおりを挟むなに今の笑顔……怖いんだけどっ!?
嬉々として向かって来るレザンを躱しつつ、立ち位置を調整して、ちょこちょこと動くエリオットを使ってレザンの動線を邪魔しながら、レザンを使ってエリオットの動きの邪魔をする。
理想的な連携って、実はかなり難しいんだよねぇ? 実力や気心が知れているからと言って、相手が自分の思うように動いてくれるとは限らないし。案外、味方の邪魔をしないように動くのは難しい。
さて、そろそろ避けてるだけじゃなくて反撃しますか。と、向かって来るエリオットの腕を掴み、
「うわわっ!?」
レザンの方へとぶん投げる。
「ハウウェルがフィールズ投げたっ!?」
「っと、大丈夫か? フィールズ」
「ふぁいっ!」
「よし」
と、自分に向かって投げられたエリオットを受け止め、地面へ降ろすレザン。
アイツ、実は結構優しいから投げられたり吹っ飛ばされた味方が怪我をしないよう、カバーしてやることが多いんだよね。飛んで来たのが敵なら、受け止めた後そのまま意識を刈ったりとかするけど・・・
それから、エリオットを投げたり腕や足を掴んで振り回したりしてレザンに当てたりして・・・そうやって相手の集中力と体力を削りながら、微妙に二人を苛立たせて自分の体力は温存。我ながら、性格が悪いと思う。
「またフィールズを投げたっ!? しかもレザンに当てるだなんて、なんて酷いことしやがるんだ、鬼畜だぞハウウェルっ!! 怪我させんなよなっ!!」
外野から酷い、鬼畜だとの声を浴び、
「フィールズばっか投げてないでレザンを投げてみろよなっ!?」
という声には、
「や、あれはさすがに重くて無理。持ち上げられないから」
と返す。レザンは長身且つ、バッキバキの身体をしている。デカくて重たい。本人の協力があればどうにか持ち上げることはできるかもしれないけど、模擬とは言え戦闘中の相手に、自分を持ち上げさせるようなへまはしないだろう。というか、普通に抵抗されるに決まっている。
それにわたしは、レザンを持ち上げる為に、自分からレザンに捕まりに行くような馬鹿はしない。
・・・でも、そうだな。エリオットばかり投げるのも可哀想だ。
エリオットを使ってレザンの動きを阻害して、奴の背後に回り込み、膝裏へ踏み付けるような蹴りをお見舞いする。必殺の体勢崩し、その名も膝カックン! だ。子供がイタズラでするような攻撃ではあるけど、体勢を崩すのにはかなり効果的な技ではある。
「っ!?」
「レザンが膝を着いたっ!?」
「レザン先輩っ!? って、え?」
レザンに気を取られたエリオットの腕を掴み、
「ふぇぇぇっ!?」
レザンへ向かってそのままぶん投げる。
「うっ、ぐっっ!?」
「ぁぅ~、すみませんレザン先輩」
さすがに体勢を崩した状態ではエリオットを受け止めるのは難しかったのか、二人が折り重なって倒れている。
「うわ、ひっでっ!? ハウウェルの鬼畜っ!! 大丈夫か二人共っ!?」
と、テッドが駆け寄って二人を起こす。
「うむ。この程度は……問題、無い。フィールズは怪我は無いか?」
「はい~……ちょっとあちこち痛いですけど、多分大丈夫です~……」
すくっと立ち上がるレザンに、よたよたと立ち上がるエリオット。
まぁ、あれだけぽんぽん投げられて、レザンにぶつけられているんだから、あちこち痛いのかもしれない。やったのはわたしなんだけどね?
「エリオットもへろへろみたいだし、今日はこれくらいにしない?」
「ふむ・・・いいだろう」
「はい~。ありがとうございました~」
と、お互いに怪我や痛いところはないかの確認をして、細かい傷に手当て。そして、確りとストレッチをして解散。
頭上でまとめていた髪を解いて、部屋へ戻った。
「ぁ~、つっかれた~」
汗を流しながら、痛む肩と腕を解す。レザンの本気気味の一撃を受け止めたり、重たいモノをぽんぽん投げて酷使した。ああ、明日からの筋肉痛が怖い・・・
それからテッドに、
「ハウウェルがあんなに酷い奴だとは知らなかったぞ。つか、フィールズを投げるとき笑ってて怖かったんだけど? あ、でもでも、ハウウェルが一対多数戦のが得意って言ってたのめっちゃわかったわー」
わーわーと騒がれながら夕食を食べて、部屋に戻って爆睡した。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
投げられる方はもちろん、投げる方も大変。受け止める方も体力使います。(笑)
20
お気に入りに追加
748
あなたにおすすめの小説

婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。


完結 穀潰しと言われたので家を出ます
音爽(ネソウ)
恋愛
ファーレン子爵家は姉が必死で守って来た。だが父親が他界すると家から追い出された。
「お姉様は出て行って!この穀潰し!私にはわかっているのよ遺産をいいように使おうだなんて」
遺産などほとんど残っていないのにそのような事を言う。
こうして腹黒な妹は母を騙して家を乗っ取ったのだ。
その後、収入のない妹夫婦は母の財を喰い物にするばかりで……

これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。

婚約破棄、ですか。此方はかまいませんよ、此方は
基本二度寝
恋愛
公国からやってきた公女ニドリアラは、王国の王子アルゼンが男爵令嬢と良い仲になっていると噂を聞いた。
ニドリアラは王国に嫁ぐつもりでやってきたはずなのだが、肝心の王子は他の令嬢にうつつを抜かし、茶会の席にも、夜会の出席もない。
ニドリアラの側にいつも居るのは婚約者の王子ではなく、王家から派遣された護衛の騎士だけだった。

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる