上 下
417 / 673

362

しおりを挟む


「ハウウェルの本気か~。なんかこう、腹黒さの出てる作戦だよなー」

 なにやら、よくわからない納得をされている気がする。

 でも、まぁ・・・これでもまだ、今日は上品な戦い方をしている方なんだけどね。

 わたしの剣は、陰険で邪道だと専らの評判だ。

 相手と正面から切り結ばず、相手のリズムや呼吸、集中を乱して力やスピードを削いだり、無駄に動かして体力を削ったり、同士討ちを狙うようないやらしい剣。更には、剣ではなくて拳や足が出たりもする。

 一応、正統派な剣でちゃんと正々堂々戦うこともできる。けど、それだと普通に弱いのだから仕方ない。あの騎士学校では、弱い者は舐められて大変な目に遭う。自衛の為にも、汚い手だろうとなんだろうと使うしかなかった。強者だとは思われなくても、弱者ではないと示すことが肝要……だった。

 でも、今のわたしは騎士学校卒の一般人だ。そこまで必死にならなくてもいい。

 暴力のあんまり無い学園最高!

「剣も折れちゃったし、今日はここまでということで」
「なにを言う、ハウウェル。まだ始まったばかりだぞ? 剣が折れたのなら、組手でもしようではないか。それに、フィールズは素手の方が得意だっただろう?」
「はいっ、レザン先輩覚えててくれたんですねっ」

 と、きらきらした顔でレザンを見上げるエリオット。

「それじゃあハウウェル先輩、行きましょうっ!」
「え~……」
「なんだよ、まさかフィールズを一人でレザンに向かわせる気かよハウウェルっ!」

 これはもしかして、逃げられないやつだろうか?

「ふむ・・・それなら、俺の方から行くとしよう」

 そう言うや言わずや、

「っ!?」

 振り抜かれる拳を慌てて避ける。

「いきなりかよっ!?」
「反応できているではないか」
「さすがですねっ、ハウウェル先輩!」

 や、さすがとかじゃない。普通に当たると痛いから避けただけだ。

「顔はやめとけよっ!」
「うむ。善処しよう。では、フィールズもハウウェルを狙え」
「はいっ、今度はレザン先輩と僕が組むんですねっ!」
「ちょっ、エリオットっ?」
「行きますっ!」

 と、木剣を手放してイキイキとした顔で突っ込んで来るエリオット。

「ぁ~、ま、フィールズをレザンに向かわせるよりは、ハウウェルが二対一で困ってる方が安心して見れる……ような気がする! がんばれハウウェルっ!!」

 なんか、外野が無責任なことを言ってやがるっ!?

「ハッ!」

 向かって来るエリオットの横合いから、レザンが向かって来ている。挟撃するつもりのようだ。逃げるな、と態度で示しているのだろう。

「・・・ああもうっ、まとめて掛かって来いっ!!」

 ヤケクソ気味で言うと、ニヤリと獰猛に笑うレザンの顔が見えた。

 なに今の笑顔……怖いんだけどっ!?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

(完)私を捨てるですって? ウィンザー候爵家を立て直したのは私ですよ?

青空一夏
恋愛
私はエリザベート・ウィンザー侯爵夫人。愛する夫の事業が失敗して意気消沈している夫を支える為に奮闘したわ。 私は実は転生者。だから、前世の実家での知識をもとに頑張ってみたの。お陰で儲かる事業に立て直すことができた。 ところが夫は私に言ったわ。 「君の役目は終わったよ」って。 私は・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風ですが、日本と同じような食材あり。調味料も日本とほぼ似ているようなものあり。コメディのゆるふわ設定。

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には

月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。 令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。 愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ―――― 婚約は解消となった。 物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。 視点は、成金の商人視点。 設定はふわっと。

処理中です...