虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「ぁ~……うん。わかった。約束したのはわたしだし。付き合うよ」

 そう言えば、あのレースの記録係をお願いする代わりに、レザンに付き合うという約束したんだった。コイツ以外に記録係ができそうな奴がいなかったんだよなぁ。

 せめて、勝負を吹っ掛けたときにエリオットがこの学園にいることを知っていたら、無条件でわたしの頼みを聞いてくれそうなエリオットにお願いをしたというのに。ま、エリオットはその、十時間耐久レースが終わってから現れたんだから、言っても仕方ないことだけど。

「そうか! よし、では早速」

 喜色満面の顔でレザンに引っ張られそうになって、

「待て! 週末の放課後!」

 慌てて制する。コイツの相手をするなら、せめて二日は休まないと身体がたない。打ち身や捻挫、筋肉痛やらで身体がガタガタになる。それで授業に出るとか、つら過ぎる。

「・・・そう、だったな」
「? ハウウェル先輩、レザン先輩となにかするんですか? お約束?」
「なにかって言うか・・・」

 ここ最近、色々と立て込んでいたからなぁ。

 まぁ、多分……耐久レースが終わった後、エリオットに頭突きされたりしたから、それが治るまでは付き合えとは言わなかったんだと思うけど。一応、レザンなりに気を遣ってはいたのだろう。

 その後にエリオットの家でのお茶会とか、フィールズ公爵家に招待されたこととか・・・わたしがそれ理由に断ることを察して、今までは言い出さなかったんだと思う。

 チッ、どさくさに紛れて約束ごと忘れていればよかったものを。

「なんか今、舌打ちしなかった? ハウウェル」
「気のせいじゃない?」
「えー? ウソだー。なんか今、ハウウェル悪い顔してたってー」
「もう、メルン先輩の見間違いじゃないですか? ハウウェル先輩が悪い顔するのは、コイツら……どう潰してやろうか? って考えてるときくらいですよっ。今のはきっと、厄介事は面倒だな……って顔ですっ」
「えー……それはそれで引くわー。んで、レザンとなんかすんのっ?」
「うむ。以前に約束をしていたからな。久々に打ち合いでもする予定だ」
「ぁ~……それはご愁傷様だなー。でも、見てる分には面白いからがんばれハウウェル!」
「打ち合いですか……なら、レザン先輩っ、僕も参加していいですかっ?」
「ぅえっ!? マジで言ってんのかフィールズっ?」
「ふぇ? えっと? はい」
「うむ。いいだろう」
「歓迎するよ、エリオット」
「はいっ、頑張りますっ!」
「コイツらの、あの頭おかしい打ち合いに、自分から参加したがる奴がいるなんて・・・」
「頭おかしい打ち合い?」
「結構な言いようじゃない?」
「は? どこが? 一般人からすれば十分おかしいだろ、お前ら二人」
「そう言われると・・・」
「……程々にしておけ」
「うむ。善処しよう」

 と、今週末にレザンとの打ち合いの予定が入ってしまった・・・

 まぁ、エリオットが参加するなら、わたし一人でレザンの相手をするよりはマシだろう。

 というか、わたし結構鈍ってそうだからなぁ。下手すると、数ヶ月前まで騎士学校で訓練をしていたエリオットより弱くなってるかも。

 ・・・それならそれで、別にいっか。

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