虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 今回からネイサン視点に戻ります。

__________



「ハウウェル先輩っ、今週はおうち帰りますかっ?」

 にこにこと、週末の予定を尋ねるエリオット。

「ん~」

 実は、フィールズ公爵邸のガーデンパーティー(エリオットとルリア嬢の婚約お披露目)でセディーがケイトさんをルリア嬢へ紹介してから……未来の当主達のお勉強会が、フィールズ公爵邸で行われるようになっていたりします。

 講師役は、セディー。隔週末にはケイトさんが。更に偶に、フィールズ公とフィールズ公爵が現れたり。生徒は、ルリア嬢。そして、ケイトさんが講師を務めるときにはリヒャルト君も生徒として参加するそうです。

 なので、以前よりはリヒャルト君の、『うちにあそびにきてくださいね!』というお誘いが少なくなったのです。

 ちなみに、ケイトさんはルリア嬢を「妹ができたみたいで嬉しいです」と可愛がっているようで、ルリア嬢も「ルリアねえさま」と慕ってくれるリヒャルト君を弟のように可愛がっている模様。そしてそれを、「あぁ、尊い……」と愛でるケイトさん。

 更にはセディーも授業中は「ハウウェル先生せんせい」、終わってからは「セディーにいさま」「セディック兄様」と呼ばれて満更でもないようだ。

 セディーって、実は結構人に教えることが好きなんじゃないかな? 学園在籍中も、後輩に勉強を教えていたって言うし。そして偶に、フィールズ公やフィールズ公爵が講師役を務めるときには、セディーにとってもかなり勉強になるのだとか。お孫さんや娘さんにいい格好をしようとして張り切る姿が、見てて面白いって……

 その話をにこにことした後、ハッ! とした顔をしたセディーに、

「リヒャルト君とルリアさんが可愛いとは思うけど、それは教え子とか義理の弟としての可愛さだからねっ!? 僕が一番可愛くて愛してるのはネイトだからねっ!?」

 慌てたように言われて、ぎゅうぎゅうにハグをされたけど・・・

「あら、セディーは相変わらずねぇ・・・でも、その熱烈なセリフは普通、婚約者のケイトさんへ言うべきじゃないかしら?」

 と、微笑ましいと、どこか呆れを含んだような表情でおばあ様が笑っていました。まぁ、わたしもおばあ様に同意なんですが。

「大丈夫です。ケイトさんも相変わらずリヒャルト君ラブですから」

 キッパリと言い切ったセディーに、

「そう。先は長そうねぇ……」

 おばあ様が小さく苦笑を零しました。

 一応、セディーとケイトさんの仲は良好? なようです。進展があるのかないのか・・・まぁ、セディーもケイトさんも楽しそうにしているからいいかな?

 だから、馬車やらセディーのスケジュール、リヒャルト君との約束の兼ね合いを考えると、毎週は帰らなくても……というか、毎週は帰らない方が負担にならないと思うんだよね。

 というワケで、どうしようかと決め兼ねていると・・・

「ふむ、ハウウェルは帰省しないのか。それなら俺と」

 嬉しげな低い声がしたので、

「断る!」

 奴の言葉が終わる前に遮った。すると、見下ろす不満げな顔が口を開いた。

「・・・ハウウェル。十時間耐久レースで記録係をした件なのだが」
「ぁ~……うん。わかった。約束したのはわたしだし。付き合うよ」

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