虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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番外。ルリア視点。9

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 目標を定めたルリが、お勉強に明け暮れる日々を送っていたら――――

 エル兄様が、騎士学校を卒業して帰って来たと聞きました。

 レイラ姉様が会いに行くと言うので、ルリも一緒にエル兄様のおうちに向かったのですが・・・

「もうっ、なんでエリーは出て来ないのよっ!!」

 エル兄様はどこかに隠れてて、出て来てくれませんでした。レイラ姉様は怒っています。

 一応、伯爵家の敷地内にはいるらしいのですが・・・なんでも、ローザ姉様達がエル兄様に会いに来たそうで、お姉様達の声がした途端にエル兄様は二階の窓から外へ飛び出してしまい、見事地面に着地して走り去って以来、エル兄様の姿はおじ様とおば様と使用人達以外には見せていないのだとか。

 偶に、おじ様とおば様にも姿を見せない日があったりするそうです。

 怪我などは一切無く、ごはんもしっかりと食べていると使用人から報告があるとのことで、おじ様とおば様はあんまり心配はしていないご様子でした。

「昔。ローザ達から逃げるために空き部屋に隠れて、丸二日間籠城して出て来なかったことに比べると、ごはんもしっかり食べて、自室でちゃんと寝起きしている分、安心ですから」
「うふふ、エルちゃんが窓から飛び出すのを久し振りに見ましたわ。相変わらず、やんちゃなこと」

 と、おじ様とおば様は笑っていました。

 エル兄様は・・・ルリが思っていたよりもすっごく大変な思いをしていたようです。そして、エル兄様は可愛らしいお顔の割に、なかなか逞しいようです。

 それから一月ほど経って――――

 エル兄様が、お友達の方をご招待してお茶会を開くのだとか。おばあ様が張り切って準備をするのだそうです。

 そして、聞いてしまいました。今度のエル兄様のお茶会には、『伯爵家を継ぐはずだった令嬢』の婚約者様が出席するのだと。

 これは、チャンスです!

 是非とも、ルリも参加……もしくは、乱入をして『伯爵家を継ぐはずだった令嬢』との縁を繋いでもらうのですっ!!

 そして、案の定おばあ様が乱入したお茶会で――――ルリは思い余って、「ルリがエル兄様をもらってあげます」と宣言してしまいましたっ!!

 でも、おばあ様がルリの味方になってくれそうなので、結果オーライです。

 まずは、お父様とお母様をおばあ様と説得して、その次に全員でお祖父様を説得しました。

「エル兄様よりも、わたくしの方が絶対に優秀になってみせます」

 と、お祖父様に確約をし、学業や当主教育でエル兄様よりも好成績を取り続けること、淑女としての教育にも手を抜かないことを条件に、ルリも当主候補として認めさせることに成功しました。

「・・・レイラとエリオットとの婚約は見直す。代わりに、ルリアと婚約させるのもいいだろう。しかし、ルリアがエリオットよりも劣っているのであれば、予定通りにエリオットを公爵家当主に据える。これは譲らん」

 そう、お祖父様と約束をしました。

 ルリは、頑張りますっ!!

 それから、決まったことをエル兄様にお話ししたら――――

「ルリアちゃんがそれでいいならいいよ。ルリアちゃんがしたいことを、僕も応援するね。でも・・・もしつらくて我慢できなくなったり、そうじゃなくても、他にやりたいことができたり、好きな人ができて他のおうちにお嫁に行きたくなったりしたら、ちゃんと僕に教えてね? 幾らルリアちゃんに向いてないって言われても、僕だって男だし。ルリアちゃんよりも年上のお兄様なんだから頼ってよ。繋ぎくらいはできるようになるから。ね、ルリアちゃん。僕と約束して?」
「・・・はい」

 女の人が苦手で、泣き虫で、公爵に向いていない、そんな風に酷いことを言ったルリのことを心配して、『ルリが公爵になる』という宣言を反故にしていい、と。僕に頼って、と言ってくれるエル兄様は・・・なんて優しいのでしょうか。

 エル兄様がルリのことを想ってくれているのはわかりますが・・・ルリは、ルリは、益々エル兄様を守ってあげたくなりましたっ!!

 もし、ルリが大きくなっても、この気持ちが変わっていなければ・・・ルリがエル兄様をもらって、大事にしてあげます♪

「ルリは、もっと頑張りますね!」
「ふぇ? えっと、あれ? あんまり無理しないでいいよ、って言ったつもり……なんだけどな?」

 きょとんとした顔で首を傾げるエル兄様。

「ルリは全然大丈夫なのです!」

 ルリの返した言葉に、

「そっか、それじゃあ僕もがんばらなきゃね」

 ふわりと笑ってくれました。

。.:*・゜✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・゜ ✽.。.:*・✽


 ルリア視点終了。次回からネイサン視点に戻る予定です。多分……


 エリオットは見た目は可愛い系の美少女なんですが、二階の窓から飛び降りて無傷で着地して走り去るくらいには身体能力が高いです。または、しっかりした木が近ければ三階の窓から飛び出すこともしばしば。高いところは平気なので、手を掛ける場所があれば、そこそこクライムもできます。

 そしてそれを、「男の子はやんちゃね~」で済ませるルクレツィアお母様。ターシャおばあ様の娘なので、実はなにげに天然入ってます。(笑)

 お父さんのライオットは心配しつつも、「怪我が無いならいいが……頑張ってローザ達から逃げるんだぞ、エリオット」と、心の中で応援してました。

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