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番外。ルリア視点。7
しおりを挟むそれから、ルリのおうちにエル兄様が来ることはありませんでした。
ロザリア姉様の結婚が決まっても、ユージェニー姉様の結婚が決まっても、ミラベル姉様の婚約が決まっても――――エル兄様が、騎士学校から帰って来たという話は一度も聞きませんでした。
ローザ姉様も、ジェニー姉様も、ミラ姉様も、エル兄様の心配をしていました。
そして、ローザ姉様の結婚式の日取りが決まって――――
「どうしよう・・・エリーが来なかったらっ」
ローザ姉様が、泣きそうなお顔をしていました。
結婚式の招待状を騎士学校へ送ってみたら、出席するという返事は返って来たのだそうですが、出欠の記入と『ご結婚おめでとうございます。ロザリア姉様』というメッセージカードが添えられていただけで、エル兄様からのお手紙はなにも無いとのこと。
「大丈夫よ、ローザ姉様。出席に丸が付けられているから、エリーはきっと来るわ」
「そうね。……多分」
「今、多分って言ったっ!?」
そうして、ローザ姉様の結婚式当日。
エル兄様は、お返事通りに来ました。でも、ちょっとの時間だけお顔を出して、ローザ姉様達がお話をしようとしたときには、もうエル兄様の姿はなかったのです。
チラッとだけ見たエル兄様は、前に見たときよりも身長が伸びて、日に焼けていました。でも、可愛らしいお顔はあまり変わってなくて、すぐにエル兄様だと判りました。そしてルリが手を振ると、にこっと笑って手を振り返してくれました。
一年以上前に見たときのような、暗いお顔ではなかったことに……ルリは、ちょっと安心しました。
ローザ姉様達はエル兄様とお話できなかったことに、とってもがっかりしていましたけど。
そして、ジェニー姉様とミラ姉様の結婚式のときにも同じでした。
エル兄様はチラッとお顔を出して、すぐにいなくなっていました。
ローザ姉様、ジェニー姉様、ミラ姉様達は、
「エリーがまたいないわっ!!」
そう言ってがっかりしていました。
「あらあら~、エル君も反抗期かしら~」
そしておばあ様の言葉にお顔を青くして、
「エリーちゃんが反抗期っ!?」
「そんなっ……」
「わ、悪いことなんかしちゃダメよエリーっ!?」
悲壮な声を上げました。
「エルにいさまが、わるいことするんですか?」
ルリには、エル兄様が悪いことをしているところが、思い浮かびません。
「だって、おばあ様が反抗期だってっ!」
「そうよ……エリーはきっと、おやつの時間じゃないのにお菓子を食べたりだとか、ダイエット中の女の子の前で、ハイカロリーな物を美味しそうに食べるという極悪非道なことをするんだわっ!?」
「具体的には、バターをたっぷり使った濃厚なチョコカスタードパイに生クリームやアイスクリームをこれでもかと乗せて、『こんなに美味しいのに・・・姉様達が食べないなら、僕が全部食べちゃいますね♪』なんて、天使みたいな顔で笑って言うのよっ!!」
「それも、ちょっとキツめのドレスが着られそうというときを狙ってねっ!」
「なんて酷いことをするのっ!? それは天使じゃなくって悪魔の如き所業よっ!!」
「・・・ごくあくひどう、ですか?」
「……そう、ね。ルリアちゃんはまだ小さいからわからないかもしれないわね。体型維持というのは、乙女の戦いなのよ」
ふっと遠くを見やる、大きいお姉様達。
「ごくあくひどう……?」
ルリには、まだよくわかりません。
「そうじゃなかったら、靴下の足裏部分やスカートのお尻部分にやたら可愛らしい動物を小さく刺繍したりするのよ」
「まあ! なんてこと! そんなところに可愛らしい動物を刺繍されたら、踏むのが可哀想で靴下もスカートも履けなくなるじゃない!」
「そうよそうよ!」
お姉様達がヒートアップしていますけど、お姉様達の思うような極悪非道? なことは、全然大したことがないように思います。
それとも、ローザ姉様達はエル兄様が悪いことをするのが思い付かない、ということでしょうか?
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
エリオットはお姉さん達が習うのに付き合わされて、刺繍や裁縫がそこそこ上手くできます。他にも、ダンスでは男女のパートが完璧だったり、髪を結えたりと、女子力が高いです。(笑)
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