虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 どこかほっとしたような、少し泣きそうに顔を歪める女性。

 雰囲気は似ていないのに、泣きそうな顔は少しだけエリオットと似ている。

「? ローザ姉様? どうしたんですか? そんな顔して……もしかして、お腹でも痛いんですか?」

 おずおずと口を開いたエリオットが、心配そうに姉君の顔色を伺う。

「いえ、違うの。エリー」

 そして、

「お手洗いなら、我慢しない方がいいですよ?」

 幾ら身内とはいえ、非常に失礼なことを女性に言いやがったエリオットに、ヒクリと姉君の頬が引き攣り、次いでにこりとその口許に笑みが浮かぶ。

「エリーちゃん? なにを言っているのかしら?」

 その目に、怒りの色を湛えて。

「ふぇっ!?」
「・・・エリオット。君、姉君に謝って。そして、少し黙ろうか?」

 やっぱり、コイツのこういうデリカシーの無さが、姉君達の怒りを買っていることも否めないな。うん。姉君達がエリオットに怒るのも、当然かもしれない。

「え? ぁ、ぅ……はい……ご、ごめんなさい? ローザ姉様」

 多分、意味はわかっていないであろうけど、姉君達の気分を害したことは判ったようで、素直? に謝って口を閉じるエリオット。

「失礼しました。初めまして、ハウウェル様。わたくしはロザリア・ポートレイ。エリオット・フィールズの一番上の姉です。そして、二女のユージェニー・カラント。三女のミラベル・レトゥナです。ネヴィラ様のお話は、ターシャおばあ様からよく伺っております」

 と、自己紹介。

「ハウウェル様。この度はイトコのレイラがご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。原因の一端はわたくし共にありますので、レイラのことはご寛恕かんじょ頂けると嬉しく思います」

 そして、頭を下げられました。

「そのことについては、既に謝罪は受けていますので。どうかお気になさらないでください」
「ご容赦、ありがとうございます。それで、その……エリー……エリオットにお話があるのですが」

 と、困ったようにわたしを見詰めるポートレイ夫人。どうやら、わたしには遠慮してほしいようです。エリオットの手を外そうと……

「っ!?」

 すると、ふるふると首を振られて、ぎゅ~っと強く、しかも両手で手を握られた。

「エリオット? 姉君方が、君にお話があるそうですよ?」

 放せ? という意味を込めて言い、手を引き抜こうとする。が、いやいやとばかりに、益々強く手を握られた。

 まぁ、姉君達の機嫌を害したばかりで、その姉君達に一人で相対するのは怖いのかもしれない。けど、手が痛いんだけど?

「はぁ・・・ローザ姉様。仕方ありませんわ。エリオットは昔から、自分の味方になってくれる人を見付けるのが上手いんですもの」
「わたくし達が諦めるまで、盾にした人からは離れませんでしたわ」
「そうだったわね・・・少々聞き苦しくて申し訳ありませんが、もう少しお付き合いくださいませ。ハウウェル様」
「はい?」

 あれ? わたし、エリオットの姉君達に盾扱いされてる?

「ごめんなさい、エリー……エリオット」
「ふぇ?」
「まさか、あなたをそんなに追い込んでいただなんて、全然思ってなかったの」

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