虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
399 / 673

353

しおりを挟む


 どこかほっとしたような、少し泣きそうに顔を歪める女性。

 雰囲気は似ていないのに、泣きそうな顔は少しだけエリオットと似ている。

「? ローザ姉様? どうしたんですか? そんな顔して……もしかして、お腹でも痛いんですか?」

 おずおずと口を開いたエリオットが、心配そうに姉君の顔色を伺う。

「いえ、違うの。エリー」

 そして、

「お手洗いなら、我慢しない方がいいですよ?」

 幾ら身内とはいえ、非常に失礼なことを女性に言いやがったエリオットに、ヒクリと姉君の頬が引き攣り、次いでにこりとその口許に笑みが浮かぶ。

「エリーちゃん? なにを言っているのかしら?」

 その目に、怒りの色を湛えて。

「ふぇっ!?」
「・・・エリオット。君、姉君に謝って。そして、少し黙ろうか?」

 やっぱり、コイツのこういうデリカシーの無さが、姉君達の怒りを買っていることも否めないな。うん。姉君達がエリオットに怒るのも、当然かもしれない。

「え? ぁ、ぅ……はい……ご、ごめんなさい? ローザ姉様」

 多分、意味はわかっていないであろうけど、姉君達の気分を害したことは判ったようで、素直? に謝って口を閉じるエリオット。

「失礼しました。初めまして、ハウウェル様。わたくしはロザリア・ポートレイ。エリオット・フィールズの一番上の姉です。そして、二女のユージェニー・カラント。三女のミラベル・レトゥナです。ネヴィラ様のお話は、ターシャおばあ様からよく伺っております」

 と、自己紹介。

「ハウウェル様。この度はイトコのレイラがご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。原因の一端はわたくし共にありますので、レイラのことはご寛恕かんじょ頂けると嬉しく思います」

 そして、頭を下げられました。

「そのことについては、既に謝罪は受けていますので。どうかお気になさらないでください」
「ご容赦、ありがとうございます。それで、その……エリー……エリオットにお話があるのですが」

 と、困ったようにわたしを見詰めるポートレイ夫人。どうやら、わたしには遠慮してほしいようです。エリオットの手を外そうと……

「っ!?」

 すると、ふるふると首を振られて、ぎゅ~っと強く、しかも両手で手を握られた。

「エリオット? 姉君方が、君にお話があるそうですよ?」

 放せ? という意味を込めて言い、手を引き抜こうとする。が、いやいやとばかりに、益々強く手を握られた。

 まぁ、姉君達の機嫌を害したばかりで、その姉君達に一人で相対するのは怖いのかもしれない。けど、手が痛いんだけど?

「はぁ・・・ローザ姉様。仕方ありませんわ。エリオットは昔から、自分の味方になってくれる人を見付けるのが上手いんですもの」
「わたくし達が諦めるまで、盾にした人からは離れませんでしたわ」
「そうだったわね・・・少々聞き苦しくて申し訳ありませんが、もう少しお付き合いくださいませ。ハウウェル様」
「はい?」

 あれ? わたし、エリオットの姉君達に盾扱いされてる?

「ごめんなさい、エリー……エリオット」
「ふぇ?」
「まさか、あなたをそんなに追い込んでいただなんて、全然思ってなかったの」

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

三度目の嘘つき

豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」 「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

処理中です...