394 / 673
348
しおりを挟む「・・・第一次?」
「ええ、第一次、ですわ~。ちなみに、第二次はネイサン様がお生まれになったとき。そして第三次が、ネイサン様が留学をされる直前。どなたがネイサン様をお預かりするとネヴィラ様へ申し入れるかを話し合ったのですけど……その前に、ネヴィラ様のご実家方へお預けすることが決まってしまいまして~。皆さん、残念がっておりましたのよ~」
ああ、花畑置き去り事件の後のこと……
「うふふ、皆さん。あわよくばネイサン様の婚約者をご自分の親族から出したいと思っていましたからね~。ネイサン様の婚約者さんが、ネヴィラ様のご実家方のお嬢さんに決まって、皆さん断腸の思いで仕方ないと諦めましたの~」
スピカじゃなかったら、わたしの婚約者は諦めなかった、と?
「そして、第四次が、再びセディック様の婚約者争奪戦ですわ~。セディック様は女性に少々思うところがあったご様子でしたので、わたくしがお願いをして、セディック様への婚約のお申込みは待って頂いていたのですわ~。まぁ、ごたごたも少々ありましたから、様子見をしているおうちもありましたけれど。うふふ、セディック様が、もう少しセルビア伯爵令嬢をお選びになるのが遅れていたら、他のお嬢さんをご紹介する予定でしたのよ~。第五次は未遂に終わってしまいましたわね~」
うふふと楽しげに、ここ二十年程の、わたし達の知らなかったおばあ様のご友人の貴族夫人方のあれこれが、ターシャおば様の口から語られる。
皆さん、どれだけネヴィラ・ハウウェルのことがお好きなんでしょうか?
セディーの婚約者がなかなか決まらないと思っていたら、実はターシャおば様が裏で手を回していた、と。そりゃあ、母の愚行が広まっている上、公爵夫人の圧力が掛かっていれば、セディーに縁談の話を持って行こうという強者は現れないでしょうねぇ。
まぁ、そのお陰? とでも言うべきか、わたしはスピカと、そしてセディーはケイトさんと婚約することができたようですが・・・
「けど、セディック様のお相手がセルビア伯爵令嬢程の才女なら、お友達の誰も不満は無いと思いますわ~。なにより、セディック様がご自分でお決めになった方ですもの~。わたくしが、文句を言わせませんわ~」
「・・・そうですか。ありがとうございます」
なんだか疲れたようなセディーの溜め息。
「セディー」
「なぁに? ネイト」
「おばあ様世代の女性に、まだまだひよっこなわたし達が敵うワケはないと思う」
「……そうだねぇ」
諦めたような肯定。
「おばあ様は言動はふわふわしていますけど、これでも公爵夫人ですからね。・・・全く、このおばあ様を見て、おばあ様でも公爵夫人が勤まると思っているレイラ姉様は能天気と言いますか・・・お祖父様もお祖父様で、おばあ様の恐ろしさを全くわかっていないんですもの」
やれやれとルリア嬢が愚痴を零す。
「あらあら~」
「さて、おばあ様」
「なにかしら~? ルリアちゃん」
「ハウウェルのお兄様方とはお話も済みましたから、満足したでしょう? わたくしも、自分の用事はもう済ませましたし。うちに帰りますわよ、おばあ様」
「あらあら~、ハウウェル様方にお会いするのはお久し振りですのに~」
「今度、うちの方で正式にお招きすればいいのですわ。セディック様の婚約者様もご一緒に」
「まあ~、それは素敵ね~? さすがルリアちゃんだわ~」
「それでは、お兄様方。おばあ様が失礼を致しました。本日のお茶会を楽しんでいらしてくださいませ」
「うふふ、エル君と仲良くして頂いてありがとうございますね~」
と、お辞儀をしたルリア嬢はにこにこ笑うターシャおば様の手を引いて帰って行った。
「エル兄様、ルリはきっとお祖父様を説得してみせますからね!」
という言葉を残して――――
「なんかこう・・・ターシャおば様に、全部持ってかれた気がする」
「ぁ~……そうだねぇ」
「お、おばあ様がすみませんでしたっ!!」
__________
「あらあら~、うふふ」なターシャおばあ様に全部持って行かれた感がすごい。(笑)
一応、ターシャおばあ様は天然さんだけど、長年公爵夫人を勤めているだけあって、よく人は見ています。
セディーが女性を好きじゃないことを察して、ハウウェル侯爵家に縁談を持って行かないよう、裏で手を回していました。
21
お気に入りに追加
750
あなたにおすすめの小説


なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる