虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「・・・第一次?」
「ええ、第一次、ですわ~。ちなみに、第二次はネイサン様がお生まれになったとき。そして第三次が、ネイサン様が留学・・をされる直前。どなたがネイサン様をお預かりするとネヴィラ様へ申し入れるかを話し・・合った・・・のですけど……その前に、ネヴィラ様のご実家方へお預けすることが決まってしまいまして~。皆さん、残念がっておりましたのよ~」

 ああ、花畑置き去り事件の後のこと……

「うふふ、皆さん。あわよくばネイサン様の婚約者をご自分の親族から出したいと思っていましたからね~。ネイサン様の婚約者さんが、ネヴィラ様のご実家方のお嬢さんに決まって、皆さん断腸の思いで仕方ないと諦めましたの~」

 スピカじゃなかったら、わたしの婚約者は諦めなかった、と?

「そして、第四次が、再びセディック様の婚約者争奪戦ですわ~。セディック様は女性に少々思う・・ところ・・・があったご様子でしたので、わたくしがお願い・・・をして、セディック様への婚約のお申込みは待って頂いていたのですわ~。まぁ、ごたごた・・・・も少々ありましたから、様子見をしているおうちもありましたけれど。うふふ、セディック様が、もう少しセルビア伯爵令嬢をお選びになるのが遅れていたら、他のお嬢さんをご紹介する予定でしたのよ~。第五次は未遂に終わってしまいましたわね~」

 うふふと楽しげに、ここ二十年程の、わたし達の知らなかったおばあ様のご友人の貴族夫人方のあれこれが、ターシャおば様の口から語られる。

 皆さん、どれだけネヴィラ・ハウウェルおばあ様のことがお好きなんでしょうか?

 セディーの婚約者がなかなか決まらないと思っていたら、実はターシャおば様が裏で手を回していた、と。そりゃあ、あの人の愚行が広まっている上、公爵夫人の圧力が掛かっていれば、セディーに縁談の話を持って行こうという強者は現れないでしょうねぇ。

 まぁ、そのお陰? とでも言うべきか、わたしはスピカと、そしてセディーはケイトさんと婚約することができたようですが・・・

「けど、セディック様のお相手がセルビア伯爵令嬢程の才女なら、お友達の誰も不満は無いと思いますわ~。なにより、セディック様がご自分でお決めになった方ですもの~。わたくしが、文句を言わせませんわ~」
「・・・そうですか。ありがとうございます」

 なんだか疲れたようなセディーの溜め息。

「セディー」
「なぁに? ネイト」
「おばあ様世代の女性に、まだまだひよっこなわたし達が敵うワケはないと思う」
「……そうだねぇ」

 諦めたような肯定。

「おばあ様は言動はふわふわしていますけど、これでも公爵夫人ですからね。・・・全く、このおばあ様を見て、おばあ様でも公爵夫人が勤まると思っているレイラ姉様は能天気と言いますか・・・お祖父様もお祖父様で、おばあ様の恐ろしさを全くわかっていないんですもの」

 やれやれとルリア嬢が愚痴を零す。

「あらあら~」
「さて、おばあ様」
「なにかしら~? ルリアちゃん」
「ハウウェルのお兄様方とはお話も済みましたから、満足したでしょう? わたくしも、自分の用事はもう済ませましたし。うちに帰りますわよ、おばあ様」
「あらあら~、ハウウェル様方にお会いするのはお久し振りですのに~」
「今度、うちの方で正式にお招きすればいいのですわ。セディック様の婚約者様もご一緒に」
「まあ~、それは素敵ね~? さすがルリアちゃんだわ~」
「それでは、お兄様方。おばあ様が失礼を致しました。本日のお茶会を楽しんでいらしてくださいませ」
「うふふ、エル君と仲良くして頂いてありがとうございますね~」

 と、お辞儀をしたルリア嬢はにこにこ笑うターシャおば様の手を引いて帰って行った。

「エル兄様、ルリはきっとお祖父様を説得してみせますからね!」

 という言葉を残して――――

「なんかこう・・・ターシャおば様に、全部持ってかれた気がする」
「ぁ~……そうだねぇ」
「お、おばあ様がすみませんでしたっ!!」


__________


 「あらあら~、うふふ」なターシャおばあ様に全部持って行かれた感がすごい。(笑)

 一応、ターシャおばあ様は天然さんだけど、長年公爵夫人を勤めているだけあって、よく人は見ています。

 セディーが女性を好きじゃないことを察して、ハウウェル侯爵家に縁談を持って行かないよう、裏で手を回していました。

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