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しおりを挟む「ま、そんなことはさて置いて。リールはどうだったん? 家族に説教かまされたりしなかったか?」
と、さっきまで知らん顔していたリールに向き直るテッド。
「……お前と一緒にするな」
「え? マジで? 家族に怒られなかったのかよー? いいな~」
「……そもそも、家には帰ってないからな」
「あ、そっち? なんか悪ぃ」
「えっ? グレイ先輩、お休みにおうち帰らなかったんですかっ?」
「……俺の家はそんなに裕福ではないからな。往復の馬車代やら食費が勿体ない」
ああ、特待生や奨学生は学食や寮での食事がただだもんね。
「……ちなみにだが、なんと言って説教されたんだ?」
「ああ……なんか、貴族との繋がりは嬉しいけど、相手が高位過ぎだって。もう少しもの考えて行動しろってさ? それに、こないだ行ったハウウェルん家も、子爵家じゃなくて実は侯爵家の方だったってのがバレて、めっちゃ怒られた」
「……むしろ、よく今までバレなかったな」
「ああ、ハウウェルは子爵家の次男だって話してたからな。まさか侯爵家に住んでるとはっ!? って、めちゃくちゃびびってたわ」
「……お前の家族に同情する」
「え~、なんでだよー」
「あ、テッド」
ふと、言っておかないといけないことに思い至った。
「お、なんだハウウェル」
「呉々も、ハウウェル子爵家の方には関わらないでね? ご家族の方にもそう伝えておいて」
「は? え~っと?」
「ほら、わたしと両親って折り合い悪いから。騎士学校に在学中からはずっとお祖父様の家でお世話になってて。もう何年もまともに会ってないんだよね」
もう、四、五年は実家に帰ってないかも。って、思えば……こないだの休暇中に母の顔を見たのが四、五年振りだったのか。懐かしさも親しみも……特になにも感じなかったな。
「ええっ!? ハウウェル先輩、そんなにご両親と折り合いが悪いんですかっ!?」
「そうだね。会いたいとも思わないし。むしろ、積極的に会わないようにする程度には、不仲かな?」
「そんな・・・知らなかった、です」
「別に、昨日今日始まったような不仲じゃないからね。君がそんな顔する必要は無いよ」
泣きそうな顔をするエリオットの頭をぽんと撫でる。ああ、エリオットはご家族にちゃんと愛されているんだなぁと、ふと思った。
「ま、うちは両親と不仲なのはわたしだけじゃないし・・・」
わたしは別に、両親のことはもうなんとも思ってはいない。けど・・・セディーとお祖父様、おばあ様が未だに両親に対して怒ってるんだよねぇ。
「ふぇ?」
「セディーも、両親とはあんまりね? だから、わたしだけじゃなくて、セディーに連絡するときにもハウウェル子爵家の方には連絡しちゃ駄目だから。連絡するなら、ハウウェル侯爵家の方にすること。いい?」
「ふっ、ちゃんとわかってるって。なんせ、今回バレたのは侯爵家の方へお礼状を書いてんのが見られたからだかんな!」
と、胸を張るテッド。
「え? 君、お礼状とか書けたの?」
なんかちょっと意外。
「当たり前だろー。俺だってお礼状の一つくらい書けるっての。おにーさんとライアン先輩に、テストは無事赤点回避できましたってお礼したんだよ」
「ふむ……俺も、礼状を出した方がいいだろうか?」
「ああ、いいよ別に。わたしの方から、君らが感謝してたって言っとくから」
「あ、そういうのよくないんだぞ? 感謝の気持ちってのは、自分で伝えてこそなんだかんな」
「そうですよ、ハウウェル先輩。メルン先輩の言う通りですよ? だから、僕の感謝を受けてくださいねっ?」
と、土曜日のフィールズ伯爵家でのお茶会の予定を告げられた。
一応、あんまり派手なものにはしないというなら、と。リールも参加を決めたようだ。
レザン、テッド、リールの三人は学園からフィールズ伯爵家の馬車で送り迎えをするとのこと。わたしは、セディーと一緒にうちから直接向かう。
エリオットは、金曜日の放課後から実家の方に帰って準備をするらしい。姉君達の里帰りと鉢合わせしないことを祈っていた。そして、土曜日のお茶会が終わると、レザン達とそのまま学園に戻る予定なのだとか。
「だ、だって三日も家にいたら姉様達がみんな帰って来ちゃいますよっ!?」
と、言っていた。
姉君達がよっぽど怖いらしい。
三日あれば、婚家からエリオットに会いに実家に駆け付けるだなんて、かなり愛されている……とは思うんだけどね?
うん。愛情の方向とか、表現法方、可愛がり方なんかが・・・まぁ、かなりアレな感じだけど。
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