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しおりを挟むのんびりと過ごした休日も終わり、学園寮に戻ると・・・
「はぁ~……」
いつもへらへらしているテッドにしては珍しく、ぐったりとした深い溜め息。
そして、チラッチラッとこれ見よがしな視線が寄越される。どうやら、なにか聞かれるのを待っているようだ。
リールは知らん顔をしている。よし、わたしもスルーしよう。なんて思っていたら・・・
「あの、どうしたんですか? メルン先輩、そんな深い溜め息なんか吐いて。心配事でもあるんですか?」
スルーどころか、心配そうな顔でエリオットが聞きやがったよ。
「おお、聞きたいか? フィールズ!」
反応してもらえて嬉しそうな顔をするテッド。
「えっと、あの、メルン先輩が話してもいいと思ったらでいいですからね?」
「ああ、実はな・・・」
「はい、実は?」
「うち帰って、フィールズん家に誘われたことを話したら・・・」
「は、話したら?」
「父さん母さん兄ちゃん姉ちゃんに……めっちゃ説教されたんだよ」
「ふぇ?」
「うちにいる間中四人でさー、代わる代わる俺にず~~っとガチ説教だぜ? さすがに俺もへこむっての。ったくよー……」
はぁ~、とまた深い溜め息。
エリオットの家に行く話をしたら説教、ねぇ。だから、よくよく考えなよって言ったのに。テッドの家は貴族相手の商売をしているとは言え、裕福な平民。テッド本人はエリオットのことを直に見て知っているけど、エリオットの肩書きしか知らない人は、家族がいきなり公爵令孫……もしくは、伯爵家嫡男? の家に招待されたら、そりゃあ驚くと思う。
「め、メルン先輩にもお姉様がいるんですかっ!?」
「お、そっち気にしちゃう?」
「ね、姉様達を怒らせると怖いんですよっ!? メルン先輩は大丈夫でしたかっ!? な、なんか酷いことされちゃったりしませんでしたかっ!?」
「おう、その辺りは全っ然平気だわ。つか、俺の言う姉ちゃんは姉ちゃんでもあれな? 兄ちゃんの奥さんで、義理のおねーさんってやつ。姪っ子甥っ子のお母さんなんだわ」
「ふぇ? お兄様の、奥さん?」
「そ。うち、兄ちゃんとは十くらい離れてっから。兄ちゃんはもう既婚者で、妻子持ちなワケよ。で、俺はおじさんな?」
「あ、うちも一番上の姉様とは十くらい離れてて、僕にも姪っ子がいるんですよ? 騎士学校に通ってる前後に生まれたりして……必然的に姉様と顔を合わせないといけなくなるから、あんまり会ったことないですけど……」
「ちっこい子は可愛いぞー? 俺がめっちゃ説教されてたら、テッドにーちゃんを怒らないであげて! って庇ってくれるし。落ち込んでたら、元気出せよにーちゃん。って、ビー玉くれたしさ」
どうやら、テッドの姪っ子さんと甥っ子さんは優しい子達のようだ。
「それに、ちっこいときに可愛がっとかないと、すーぐ大きくなって生意気になっからな」
「そ、そうなんですかっ?」
「そうそう。あんま会わない親戚の子なんか、ちっこいときにはテッドにーちゃんテッドにーちゃんって、俺の後ろ付いて歩いてたのに、今じゃもう、人のことばか扱いするしよー」
「ええっ!? メルン先輩はちょっと勉強が得意じゃないだけで、そんなにばかじゃないですよっ?」
「……結構なこと言うじゃねーかこの野郎……」
「ふぇ?」
「ま、そんなことはさて置いて。リールはどうだったん? 家族に説教かまされたりしなかったか?」
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