虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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「……ある意味、とんでもない脅迫だがな?」

 とんでもない脅迫というか・・・おばあ様のお付き合いしていたご友人の中には、当時の隣国の王妃殿下の姪御さんがいたそうで、やろうと思えば本気でこの国の男の評判を下げることができたそうだ。

「ま、そこでお祖父様が割って入って、おばあ様が次期侯爵夫人ということがあっという間に広まって……おばあ様へ文句を言った人は、お祖父様に睨まれては敵わないと思ったらしくてね。ごにょごにょと謝罪しながら逃げて行ったんだって」

 更に言うと、少し席を外している間におばあ様がパーティー会場の男性陣と険悪になっていて、慌てて割って入ったお祖父様は、「ヒューイったら、入って来るのが遅い!」と不機嫌になったおばあ様に文句を言われたのだとか。

 そして、おばあ様を宥める為にその場でイチャイチャし出して・・・次期侯爵様は隣国のじゃじゃ馬娘に尻に敷かれているという噂が流れたらしい。まぁ、尻に敷かれているのは今も変わらないけど。

 お祖父様、割って入るのがもう少し遅れていたら、おばあ様に振られていたかもしれません。間に合ってよかったですね。

 それはかく・・・そういう風なことが他にも色々とあって、男に物怖じしないおばあ様の言動に助けられたり、かっこいいと憧れた当時の令嬢達が、今の貴族当主達の夫人や母君方になっていたりする。

 なので、おばあ様の活躍? を知っている妙齢のご婦人方は、ネヴィラ・ハウウェルに好意的な方が多い。そして、そのおばあ様にそっくりなわたしにも好意的というワケだ。

 ま、勿論のことだけど、おばあ様のことを嫌いだという人達もそれなりにいるという。そういう人達には、わたしも嫌われているみたいなんだけどね。

「ネヴィラ様はかっこいい素敵な女性なんだって、おばあ様言ってました! ・・・って、ハウウェル先輩がそのネヴィラ様のお孫さんだったんですかっ!?」

 ハッとした顔でわたしを見詰めるエリオット。

「そうだね」

 エリオットは女性が苦手だし、おばあ様世代のお茶会に参加することもあまり無さそうだから、知らなかったみたいだけど。実はわたし、エリオットと知り合う大分前……もしかしたら物心付く前とか? から、フィールズ公爵夫人とは顔見知りなんだよね。

 ま、わたしも。エリオットがフィールズ公爵夫人のお孫さんだと知ったのはここ最近(騎士学校を卒業してから)で、フィールズ公爵夫人に「孫のエリオットがお世話になりました」って言われてからなんだけど。

 まさか、おばあ様のお友達だと思っていたご婦人が後輩のおばあ様だったなんて、思ってもみなかったよ。

「な、な、フィールズ」
「はい、なんですか? メルン先輩」
「お前、女の子苦手なんだよな?」
「はい」
「ばーちゃんは平気なん?」

 テッドの不思議そうな疑問に、

「あ、はい。僕が苦手なのは僕と同年代か姉様達くらいの年上の女の子達ですからねっ。お母様とおばあ様には姉様達みたいに酷いことはされなかったから平気です。それに、お母様とおばあ様はもう女の子って歳じゃないですし」

 にこにこと、それはもう、女性にすっごく失礼なことを、笑いながら言ってのけるエリオット。

 コイツ、なにげにこういう無神経なとこがあるよなぁ。実は案外、エリオットのこんな部分が姉君達を怒らせていた原因ではなかろうか?

「うっわ、お前それ、お母さんとばーちゃんにめっちゃ失礼じゃね? 聞かれたらきっと、むちゃくちゃ怒られんぞー」
「え? お、怒られちゃうんですか?」

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