虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
376 / 673

330

しおりを挟む


「ぁぅ~……はい、すみません……」

 しょんぼりと肩を落とし、

「あ、それなら帰省解禁後の週末、うちにお誘いしてもいいですか? こないだのお礼として。レザン先輩も、宜しければメルン先輩とグレイ先輩もどうぞっ♪」

 パッと顔を上げると、にこにことフィールズ伯爵家への招待を持ち掛けるエリオット。

「あ、わたしはパス」
「ええっ!! な、なんでですかっ!?」
「うちでのんびり過ごす予定だから」

 帰ったら多分、セディーに構い倒されると思うし……帰省してまで、エリオットのお守りをするのはちょっと。

「だよなー? ハウウェルはおにーさん大好きっ子だもんなー」

 ニヤニヤと笑うテッド。

「ウルサいよ、テッド」
「ああ、セディック様はハウウェル先輩のこと、すっごく大事にされていますからねっ。あんな優しいお兄様がいて、とっても羨ましいです♪」
「あれ? フィールズ、ハウウェルのおにーさんと面識ある感じ?」
「はいっ。小さい頃、どっかのおうちのお茶会でいじめられてたら、セディック様に助けてもらいましたっ!」
「そうなの?」
「はい。お前みたいな女の子が男同士の集まりに来るなって、僕は男ですって言っても、嘘吐くなって。それで仲間外れにされて泣いていたら……」

 ああ、なんだかすっごく想像できる。

「年上の大きいお兄様が、フィールズ公爵令孫のエリオット様ですよね? って僕に言ってくれて。そしたら、いじめっ子達の保護者が真っ青になって謝ってくれて。それからは、あんまりいじめられなくなりましたっ♪助けてくれたそのお兄様にお礼をしたら、僕にもあなたみたいに綺麗な顔をした弟がいるので気にしないでください、って頭を撫でてくれたんです」
「おおっ、なんかハウウェルのおにーさんっぽい」
「はいっ。それから、馬鹿共に絡まれて嫌な思いをして、我慢ができないと思ったときには、お祖父様のお名前を出すといいですよ? 相手が余程の馬鹿か物知らずでなければ、大抵はそれで引いて行きますからね、って教えてくれましたっ!」
「ああ、それは……セディーだね。うん」

 なんだか、とってもセディーらしい感じだ。

 というか、そのお茶会でエリオットとフィールズ家に恩を売ったのか、それとも出席していたアホ共の家に恩を売ったのか・・・いや、両方にかな?

 そうじゃなかったら・・・打算もなにも関係無く、泣いているエリオットを助けたってことも有り得るか。

 エリオットの小さい頃って言ったら・・・多分、わたしがクロシェン家にいた時期なのかもしれない。女の子みたいな顔、ということでいじめられているエリオットのことを、セディーは放っておけなかったのかも。年齢も、エリオットはわたしの一つ下だし。

 わたしとエリオットを重ねた、のかな? ま、わたしはこんな風にびーびー泣いたりしなかったけど。

「はいっ! セディック様、僕には優しかったです♪それで、騎士学校でハウウェル先輩に助けられて、ハウウェル先輩の名前を知ったときに、この人がセディック様の弟さんですかっ!! って、すっごくびっくりして、嬉しくなったんですっ!!」

 ぁ~・・・それでエリオットは、最初からやたらわたしに懐いて来たワケか。

「そっかー、フィールズが微妙に腹黒くなっちまったのは、ハウウェルのおにーさんが原因だったのかー。素直というか……若干アホの子だから……素直に影響受けちまったのかー」

 アホの子、を小声で言う辺り、ちょっとは気を遣っているのかな?

「ふぇ?」
「つか、ハウウェルは知らなかったん?」
「初耳だね」
「そうでしたっけ?」
「うん。君から、セディーの話は聞いたことない」

 セディーからも、エリオットの話は聞いたことがないし。

「あ、あの、それじゃあ、セディック様もうちにご招待したら、受けてくれますか? ハウウェル先輩」
「・・・ま、考えとく」
「わぁ! おばあ様が喜んでくれます!」

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

処理中です...