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しおりを挟むそれから数日後。
いきなり馬場に現れた先輩が、
「ケイト・セルビア! そしてそこの女顔! お前らに謝ってやるっ!!」
怒鳴るように言って去って行った。
一応、約束通りに謝罪をしに来たらしい。
あれが謝罪と言えるかは兎も角。
まぁ、あれ以来先輩も『男にお姫様抱っこされてた先輩』としてあちこちでクスクス笑われて肩身が狭い思いをしているようだし、ケイトさんも彼には同情しているみたいだし・・・これで手打ちとしてやりますか。
♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘⚔♞⚔♘
夕食後。
「時間はありますか?」
と、エリオットに呼び止められて・・・
「ハウウェル先輩、レザン先輩。メルン先輩とグレイ先輩もこれどうぞ!」
にこにこと、高級感漂う箱を差し出された。
「なにこれ?」
「王室御用達の有名なお菓子だそうです。とっても美味しいですよ♪」
「マジでっ?」
「……いきなりどうした? 賄賂か?」
驚くテッドに、訝しげなリール。
「もうっ、違いますよ。そんなんじゃないですって」
「うん? くれると言うのなら遠慮無く貰うが、なぜ俺達に?」
「こないだ、レイラが迷惑を掛けたお詫びだそうです。ハウウェル先輩の忠告のお陰で大事には至らなかったので、きちんとお礼をしておきなさいって、お祖父様から送られて来ました」
「ああ、フィールズ嬢の……」
こないだの、エリオットを女子寮へ連れて行こうとしたのをやめさせた件か。
エリオットからフィールズ公へ報告させてから、まだ数日しか経っていないというのに、菓子折りが届くとは対応が早い。
手紙が届いてから、即行で用意をして速達で出したのかな? 王室御用達のお菓子ってお高い上に人気だし、手に入れるのもなかなか大変だと思うんだけど。さすがは公爵家と言ったところか。
それにしても、去年も王室御用達のお菓子を食べたなぁ。まさか、今年もお高いお菓子を見ることになるとは・・・
「はい。レイラには、もうあんなことをしないように、キツく注意しておくって書いてました♪ハウウェル先輩のお陰です! 本当にありがとうございました!」
「まぁ、わたしは自分へのとばっちりを回避しただけなんだけどね?」
「ふふっ、そういうことにしておきますよ。どうぞ受け取ってください。これからもよろしくお願いしますね? 先輩方」
エリオットは、にこにこと満面の笑顔で菓子折りを差し出す。
「・・・」
「お、それじゃあ」
と、伸ばしたテッドの手を掴んで止める。
「って、なんだよ? ハウウェル」
「うん、テッドとリールはちょっとこっち来い」
「……なんだ?」
怪訝そうな顔をする二人に、
「どうしたんですか?」
きょとんとした顔のエリオット。
「うん。わたしはちょっと、この二人に大事な話があるから、君はそれレザンに渡しといて」
「? えっと、はい」
「よし、君ら二人はこっち来て」
と、エリオットからちょっと離れたところで声を潜めて切り出す。
「あのさ、二人共」
「なんだよハウウェル、高~いお菓子を独り占めしたいのか?」
「……フィールズには聞かせたくない話か?」
「ま、そんなとこかな? テッドは茶化さないで聞けよ?」
「へーい」
「一応、わたしは優しいから忠告しておく」
「お、おう。なにをだ?」
「あのお菓子、受け取ったら……」
「……受け取ったら?」
「エリオットとの付き合いが、一生続くと思え」
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