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しおりを挟む放課後。
乗馬クラブへ顔を出すと、
「ハウウェル先輩、レザン先輩、メルン先輩っ!!」
ストールでぐるぐる巻きの頭の怪しい奴が手を振って近付く。さっき、昼食のときに皿にダイブしたストールとはまた別のストールのようだ。
「おー、怪しい奴再びだなー」
「えへへ……グレイ先輩はいないんですか?」
「うむ。リールは乗馬クラブに所属はしていないからな。放課後は勉強をしたいらしい」
「そうなんですか」
「で、君はなんなの?」
「あ、僕も乗馬クラブに入部しようと思いまして。今朝、入部届出して来ました!」
「お、マジで?」
「はいっ」
「な、な、フィールズもコイツらみたいに乗馬上手いん?」
と、テッドがレザンとわたしを示す。
「いえ。残念ながら僕は、お二人みたいには乗馬は上手くないです。イジワルな馬だと舐められて、僕の言うこと聞いてくれないんですよっ」
「ぁ~、なんかわかる気がする」
「??」
うんうん頷くテッドに、きょとんと首を傾げるエリオット。
「それにしても、乗馬クラブにハウウェル先輩とレザン先輩がいるとは・・・知ってたら、すぐにでも入部したんですけどね」
「や、別に入らなくてもいい」
「そんな酷いこと言わないでくださいよ! 僕、ハウウェル先輩がこの学校にいるって聞いて、あちこち探してたんですからっ」
「え? フィールズ、ハウウェルがこの学校いること知ってたん?」
「はい。僕がこの学校に通うことに憂鬱になっていたら、お祖父様がハウウェル先輩がこっちに通っているって教えてくれたんです。学年が違うけど、探せば会えるかもしないって。だから、僕っ……女の子がいっぱいいて怖かったけど、がんばってあちこち行って探してたんですっ!」
「ふぅん……ちなみに、どこを探してたの?」
新学期になってから、こないだの耐久レースの日までエリオットの姿は見ていない。こんな、ストールで顔をぐるぐる巻きにした如何にも怪しい姿というのに、だ。まぁ、コイツ、かくれんぼはかなり得意だから、本気で隠れられると見付けるのはなかなか大変なんだけどね。
「えっと、チェス部とクリケット部と、あと男子のフェンシング部を見に行きました。女の子がいなかったので、入って行き易かったです」
「なんでそのチョイスかな?」
わたしは別にそんなにチェスが得意というワケじゃないし、嗜み程度。クリケットも特に好きじゃない。もしかして、女子生徒がいないというだけで見に行ったのか?
それに・・・
「フェンシングって、入るワケないでしょ」
思わず呆れてしまう。
「え?」
「うむ。フェンシング部は無いな」
同意するレザン。
「だよね?」
「ど、どうしてですか?」
「や、むしろ、なんでフェンシング部にいると思ったの?」
「だって、フェンシングだって剣技じゃないですか。だから見に行ったんですよ?」
「あれはスポーツでしょ。レザンやわたしが小さい頃から習っていたのは、実戦を想定した剣だよ。全く違う」
ルールの定められた、相手を傷付けてはいけないスポーツの剣と、実戦を想定して、害意のある相手から身を守る為に習う剣……もしくは、相手を傷付ける為の手段として使用する剣では、根本からして違うものだ。
「うむ。それに、フェンシングで使用するエペやフルーレなどは細くて折れ易い剣だからな。実戦で使用して、得意とする者もいることはいるだろうが・・・俺は、そんな扱いが難儀な上、癖のある脆い剣をわざわざ使おうとは思わないぞ」
「わたしも。剣は頑丈で折れ難くて、扱い易い剣の方がいい。君は?」
「ハッ! 言われてみればそうでしたっ!? 僕も、折れ易い剣は信用できません。あと、フェンシングのルールもよくわかりませんっ」
「やっぱアホの子じゃん」
__________
フェンシングや剣道をばかにするような意図はありませんので、あしからず。
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