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しおりを挟む「……くくっ、それは確かにっ……普通の女子は、退散するしかないなっ……」
おばあ様直伝の魔法の言葉に吹き出すテッド。そして、珍しく肩を震わせて笑うリール。
「?? 鏡を見慣れているのは当然なんじゃ? 自分の顔ですよね?」
いまいち意味を理解していないのか、エリオットはきょとんとした顔で首を傾げる。
「まぁ、自分の顔だからね。見慣れているのは当然なんだけどねぇ。この言葉には、こういう意味があるらしいよ? わたしの顔はあなたよりも綺麗だと思うんですけど、それをわかっていますか? っていう失礼な意味が」
「おおっ、成る程ですっ! それは確かに、ナルシストだと捉えられる発言ですね」
「そ。ナルシストや性格の悪い奴だって思われたくないなら、お勧めはしない。でも、この言葉は本当に効くからね。困ったときには言ってみたら?」
アルレ嬢みたいに、どこぞのスカウトという、エリオットの姉君達とはまた違った特殊な感じの女性は、エリオットには近付かないだろう。しょっちゅう泣くし、喚くし。根性が無さそうに見えるから。
「はいっ! 早速レイラに言ってみますねっ」
「や、エリオット。フィールズ嬢には多分、言わない方がいいと思う。というか、ここでなんで、フィールズ嬢に言おうと思うのか……」
「え? ど、どうしてレイラには言っちゃ駄目なんですか?」
「え? だから、なんで婚約者さんにそれ言おうとしたよ? やっぱりアホの子か? コホン……まあ! やっぱりエリーはスカートを着たいんじゃない! とか言われちまうぜ?」
フィールズ嬢の真似? の部分では裏声を使うとは、相変わらず芸が細かい。さすが、ままごとでは自称オールラウンダーな役者! をしているだけのことはある。まぁ、似ているかは兎も角。
「ひぃっ!? い、嫌だっ!? そ、そんなことないからやめてよっ!!」
ふるふると涙目で必死に首を振るエリオット。
「とりあえず、フィールズ嬢とか君の姉君達みたいにちょっと特殊な感じの女性じゃなくて、普通に、あんまりよく知らないお嬢さんを牽制するような言葉ね」
「・・・姉様達とレイラは、特殊なんですか?」
「そうだね。割と特殊なんじゃない?」
十代も後半に入った男に無理矢理女装をさせて楽しむような女性は、十分に特殊だと思います。
「まぁ、使いどころを間違えないようにすれば、大抵の女性は引いてくれる言葉だから」
「つ、使いどころ・・・がんばります!」
真剣な顔でエリオットが頷いて、きゃんきゃんとウルサい朝食が終わった。
ぁ~、これから授業か……
✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐
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