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「・・・まぁ、黙ってはいないかもしれんな。とりあえず、シバかれることは確実だ。俺が・・・」

 憂うような低い声。

「え? なんでお前がシバかれんの?」
「この学園に入学することが決まってから・・・お前が女性関係の問題を起こしたときには、問答無用で地獄を見せてやるから覚悟しろ、と。兄貴達にそうキツく言われている。あの顔は、本気の顔だったからな。きっと、問答無用でシバかれることになるだろう」
「ヤだ! なんかレザンのにーちゃん達の私怨がすごいんだけどっ!?」
「うん? 私怨、なのか?」
「え? 違うん? にーちゃん達ずっと男子校だから、共学に入ったレザンへの八つ当たりなんじゃねーの? 俺なら、自分がずっと男子校で、他の兄弟が共学入ってきゃっきゃうふふ♪な感じで女の子と問題起こしたら、めっちゃキレる自信あるぞ!」
「……どんな自信だ、それは。というか、フィールズの婚約者の問題も、女性問題に入るのか? レザンのせいではないだろう」
「うん? 女性が関わっている問題だろう?」

 不思議そうに首を傾げるレザン。

 レザンの家は、軍人の家系。レザンの言い分を聞くよりも先に、手の方が出る事態になる……ということもあるかもしれない。テッドの言う通り、若干……いや、かなり? 兄君達の私怨が混じっているような気もしないでもないけど。

「・・・というワケで、今すぐ報告書を書いて出して来い? フィールズ嬢はもう少し慎みを持った方がいいと思いますよ? って、わたしからそういう風に報告すると、ハウウェル家からの、フィールズ家に対するイヤミだとか苦情だと思われるから。まだ、親族兼、婚約者の君からフィールズ嬢へ苦言を呈した方がいいでしょ。それとも、レザンに地獄を味合わせる気?」
「いえっ!! い、今すぐ書いて速達でお祖父様に出して来ますっ!!」

 パッと駆け出したエリオットが寮へ入って行く。

「・・・なー、これってもしかして、思ってたよりも一触即発な感じ?」
「まあね。それに、エリオットを呼ぼうとしていたことが広まると、男のわたし達よりも、フィールズ嬢の方がダメージが大きいよ」

 フィールズ家の評判にも関わることだし。

「ぁ~・・・まあ、そうなるわなぁ。幾ら婚約者さんがフィールズのことを男扱いしてねぇっつっても、伝聞や噂じゃ、普通は納得するワケねーし。よくない噂ってのは、広まるのも早いしなぁ」
「……そうだな」

 しかもここ、男子寮の前だし。

 一応、わたし達以外の姿が見えないのが救いと言ったところか。

 変な噂が流れないといいけど・・・

 と思っていたら、『キス停学』の校則を知らないと思われる女の子が婚約者に会いに来ていた、という話が既に広まっていた。

 まぁ、フィールズ嬢は昨日も来ていたというからなぁ。エリオットを呼び付けようとしていたというから、印象に残っているのかもしれない。大丈夫かな?

 それから、寮生が招集されて、

仮令たとえ校則を知らない可愛い女子生徒が来ても、『婚約者に会いに来たから入れてほしい』と可愛らしく懇願されても、避難誘導や命の危機などの緊急事態に瀕した場合は除いて、鋼の意志を持って女子生徒の懇願を断り、なにがあっても絶対に、軽々しく女子生徒を寮へ入れないように。そして、女子寮へ足を踏み入れないように。反した者は、厳罰に処す」

 というお達しがあった。

 後で文書でも配られるらしい。

 可愛い女子生徒や可愛らしく懇願、鋼の意志とかって、わざわざ言う必要ある? とは思ったけど、多くの男子が苦悩するような顔で深く頷いていたから、必要な文言だったのかもしれない。

 ちょっとわたしには、よくわからないけど・・・他の男子が苦悩する意味もわからないし。

 多分、女子寮の方でも似たような通達がされているんじゃないかな?

✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

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