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しおりを挟むうん。大抵の女の子は、虫が嫌いだよね。当然、そんなことは判っている。
「ええ、そうですね。ですが、あなたがエリオットにしていることと、わたしがあなたへ尋ねたことの、なにが違いますか? エリオットは、こんなに嫌がっているじゃないですか」
さっき、フィールズ嬢が言っていた。「殿方の影に隠れるのはみっともないからやめなさいって、何度も言ってるでしょ」と。フィールズ嬢は何度も、誰かの影に隠れるエリオットの姿を見て来ているのだと。
「フィールズ嬢はエリオットのこの様子を見ても、なにも思わないのですか?」
「え?」
「ドレスや女子の制服が似合うからと、嫌がるエリオットに無理矢理女性の装いをさせるのと、なにが違いますか? あなたは今、虫が嫌いだと、虫を勧められるのは嫌がらせだと言いましたよね? 女装をさせられることを嫌っているエリオットが、女装を強要するあなたの行動を嫌がらせだと受け取っている、とは考えないのですか?」
虫と女装の強要が同列というのもちょっと強引かな? と、思わなくもないけどね。
「わ、わたくしは、ただ……エリーと、楽しく遊びたかっただけで……」
「そうですね。エリオットは兎も角、あなたは、楽しいのでしょうね」
きっと、エリオットと一緒に、ではなくエリオットで楽しく遊ぶ、の方だと思う。
「え?」
「あなたの言う、その楽しい遊びの最中、エリオットはいつもどんな顔をしていましたか? 楽しそうな顔をしていましたか? 嬉しそうな顔をしていましたか? 喜んでいましたか? 笑っていましたか?」
「そ、それはっ……」
「エリオットは嫌がってはいませんでしたか? やめてほしいと言ってはいませんでしたか? 逃げようとはしていませんでしたか? それとも、そうやって嫌がるエリオットの顔は見えていなかったのですか?」
「え、エリーは、どんな顔をして……」
「本当に楽しんでいたのはあなた達だけ、ではなかったのですか? 自分達が楽しければ、エリオットの気持ちはどうでもよかったのですか? それとも、そうやって嫌がるエリオットの様子を、泣いている顔を見るのが楽しかったのですか?」
わたしの言葉に、真っ青になるフィールズ嬢。
「ハウウェル、もういいだろ。これ以上は……」
と、首を横に振るテッド。
まぁ、別にフィールズ嬢を泣かせたいワケじゃないし。これくらいにしておきますか。
「……フィールズ嬢は、あまり我が校の校則を知らなかったようですね。今日のところは、お帰りになった方が宜しいかと」
「……はい。申し訳ありませんでした……」
「それから、この件はエリオットの方からフィールズ公へ報告させて頂きますので」
「っ!! お、お祖父様に、ですか・・・?」
焦った顔がわたしを見詰める。
「ええ。今日のあなたの行動は、学園生徒として、淑女として、相応しいものでしたか?」
「……いいえ、相応しくありませんでした。先輩方には見苦しいところをお見せして、ご迷惑をお掛けしてしまいました。真に申し訳ありません。お詫び致します」
と、フィールズ嬢は泣きそうな顔で頭を下げ、去って行った。
「ありがとうございましたっ、ハウウェル先輩!」
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