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しおりを挟む「エリーって、もしかしてフィールズのこと?」
エリオットに似た面差しの女子生徒が、今気付いたという風にわたし達へ視線を向ける。
「あら? これは失礼を致しました。わたくし、レイラ・フィールズと申します。そこのエリー……エリオット・フィールズとはイトコ同士。そして婚約者となります。エリーとは、わたくしの方が先約がありますの。エリーを連れて行っても宜しいでしょうか?」
へぇ……エリオットの親族のお嬢さんか。道理で顔が似ているワケだ。
そして、婚約者がいたとは知らなかったな。まぁ、幾ら女性が苦手だとしても、コイツは一応伯爵家の嫡男だし。婚約者がいない方がおかしいか。
「え? なにフィールズ、婚約者との約束すっぽかすとか、なに考えてんの?」
ぽん、とエリオットの肩に置かれる手。あ、テッドが怒ってる。なぜかこの手の話題(女性絡み)になると、よく怒るんだよね。
「ぃ、ぃゃ……」
ふるふると首を振って、ぎゅっとレザンにしがみ付くエリオット。
「た、たすけてくださいっ……」
「エリーったら、そんな風に殿方の影に隠れるのはみっともないからやめなさいって、何度も言ってるでしょ。ほら、さっさと行くわよ。出て来なさい」
顔は辛うじて笑みを作っているけど、苛立ちが隠せていないフィールズ嬢。その様子に、青ざめた顔でがたがたと震え出すエリオット。
「な、な、これどうするべき? 婚約者さんのとこ行かせた方がよさそうだとは思うけど、なんかめっちゃ怖がってるし」
エリオットの怖がりようを見て、困惑したように声を潜めるテッド。どうやら、さっきの怒りよりも憐れさの方が勝ったらしい。
仕方ないなぁ。こういうことにあんまり口出しはしたくないんだけど……
「失礼、フィールズ嬢。わたしはネイサン・ハウウェル。二年生です」
「あなたがあの、ハウウェル様……」
驚いたような顔をして、次の瞬間にはその瞳が冷ややかな色でわたしを見返す。
あの、というのがどういう意味なのかはわからないけど、どうやらフィールズ嬢にはあまり良くは思われていないようだ。
「少し宜しいでしょうか?」
「なんでしょうか? わたくしとエリオットのことなら、部外者は口出しをしないで頂けると嬉しいのですが? ハウウェル様」
「ええ、あなた達の関係に口出しをするつもりはありませんよ」
「そんなっ!? た、助けてくださいハウウェル先輩っ!!」
伸ばされた手に、ガシっと強く服の裾が掴まれる。それを見たフィールズ嬢の眉が不快げに顰められる。
なんだかわたし、相当嫌われているみたいだな。ま、別にいいけど。
「約束、と言っていましたが、今からどこかへお出掛けですか? 寮生の帰省はまだ解禁されていませんし、明日から授業もありますので、あまり遅くなるのもよくないのでは? と思ったもので」
「ああ、それならご心配には及びませんわ。エリーを連れて行くのは、わたくしの部屋ですもの。今日はエリーにわたくしの制服を着せて遊ぼうと思っていますの。夕方になる前には、エリーを帰しますわ」
二人の関係に口出しをするつもりはないという言葉が効いたのか、にっこりと口を開いたフィールズ嬢。テッドがうわぁ……という顔でエリオットを見ている。
確かに、うわぁ……な内容だ。彼女も、姉君達と一緒になってエリオットをおもちゃにしていたうちの一人のようだ。エリオットが怖がるワケだよ。
「……ハウウェルせんぱい、たすけてくださ……」
泣きそうなエリオットの頭を宥めるようにぽんぽんと撫で、フィールズ嬢に向き直る。
__________
基本的にはお姉さん三人プラス、レイラちゃんの四人でエリオットをおもちゃにしてた感じです。そして偶に、お姉さん達のお友達も加わってたります。
女の子って、集団になると怖いよなぁ……と。
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