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しおりを挟む「嘘、だろ……アホの子じゃ、なかったのかっ……」
零れるのは、ショックを受けたような呟き。
「え? 僕、アホだと思われていたんですか? 失礼ですよ? ね、ハウウェル先輩」
「まぁ、ほら? 言動のアホさと学力が比例しないこともあるからね。それにコイツ、本当に育ちはいいんだよ。一応こんなんでも嫡男だし、家で質のいい教育を受けて来た結果じゃない?」
「ですよねっ。ちなみにですが、一体僕のどこを見てアホだと思ったんです?」
「ぁ~、まさに今?」
「??」
残念なものを見るようなテッドの視線に、きょとんと首を傾げるエリオット。相変わらず、わかっていない感じだ。
「ま、それはおいといて。めっちゃ気になることがあるんだが、聞いてもいいか? フィールズ」
「あ、はい。なんですか?」
「なんでそんな育ちのいい坊ちゃんが、話聞くだけでもやべぇのがわかる騎士学校通ってたん?」
「そ、それはっ・・・」
「それは?」
「その……姉様達が、絶対に入れない場所だからです。寮制で、なるべく遠くの学校を探してたら、女性の全くいない学校の話を聞いて、すぐ入学を決めました。お父様には最初、かなり渋られたんですけど、姉様達におもちゃ扱いされるのが耐えられないって直談判したら、わかってくれました」
「ぁ~、ねーちゃん達が原因かー……」
「はい。あそこ、学校側に申請すれば家族の面会は認められているんですけど、若い女性の面会はなるべく控えるようにって保護者に通達があるんですよ」
「うむ。万が一の事態があってはいけないからな」
「へぇ、それは知らなかったな」
「え? 知らなかったんですか?」
「うん。まぁ……」
わたしをあそこに入れた両親とは、まともに話したこと無いし。
「な、な、ハウウェルとはどうやって知り合ったん? さっき、弟子だとか言ってなかったか?」
「弟子じゃないんだってば」
「それはですね、騎士学校に入学当初、僕が同級生に女の子は出て行けって言われていじめられてて……コイツらの顔と名前を憶えて、お父様とお祖父様に報告してやるって思ってたときに」
話し始めたエリオットの言葉に、ちょっと引いた顔で零れる戸惑ったような呟き。
だから、さっきから言ってるのに。エリオットは、公爵令孫で、伯爵令息。そして嫡男で、育ちがいいって。言動は落ち着きが無くてすぐ泣くし、きゃんきゃんとウルサいけど、歴とした当主としての教育を受けている貴族子息だ。
聞いての通り、権力でぶん殴ることを躊躇う奴じゃない。こういうところは、ちょっとだけセディーに似ている。まぁ、エリオットは全然、これっぽっちもセディーの足元に及ばないけど。
だから、言動の残念さなどでエリオットを舐めて掛かると、かなり痛い目を見ることになる。公爵令孫に手を出して、『知らなかった』では済まされない。
「ハウウェル先輩が通り掛かって、目障りだから失せろっていじめっ子達に言ってくれて」
「あれ? ハウウェルもなんか印象違くね?」
「ぁ~、あの頃はわたし、尖ってたからなぁ……」
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