虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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 「戦士長が死んだ?」


 「はい。顔は欠損が酷く、戦士長様と分かるのは、鎧しかないのですが。」


 「何かの冗談だろ。クアトル共和国は勿論、他の国ですらあいつの力は認めてる。それに、あいつと同等の強さの奴は俺を含むゴッドオブデケムの10人だけだろ!?」


 (一体誰が、何があったんだ。戦士長に…)


 クアトル共和国。俺を召喚した国であり、この世界のトップ3の強さを誇る国。そんな国の戦士長を殺したなんてバレたら終わりだな…。しばらく普通に暮らしつつ、この世界について知るべきだな。


 「おう、そこの少年よ!腹減ってねぇか?食ってけよ。」


 確かに。この世界に来てから何も食ってないな。最後に食ったのは…ばあちゃんの目玉焼きか。
俺はちっちゃい頃に母を事故で亡くして、俺が12の頃に父親が失踪した。ばあちゃんは母親のように俺を育ててくれた。そんなばあちゃんを今、1人にしてしまってる。
早く帰らないとなあ…


 「それはなに?」


 「これはベールゼブフォの照り焼きだ。外はパリッと、中はグチャっと!照り焼きがやみつきの1品だぜ!」


 おえ!?カエルだと…!?しかもこのカエルめちゃくちゃデカいし。はっきり言って、グロい…。でも。


 「ください!」


 「まいど!」


 でかいカエルの手らしきものが串に刺さった物を渡された。正直美味しそうには見えないが…食うしかないか。


 「い、いただきます…」


 パリッ!


 意外といけるな!タレがカエルの肉によく染みてて美味しい。外はパリッとしててよく焼けている。やっぱり飯は食べてみないと分からないものだな。

 腹も膨らんだ事だし、早速街を探索することに。
街は大きく、建物は白く、記念日でもないのに風船が飛んでて賑わってる。まさにRPGゲームのような街だな。
まずは寝泊まりできる場所を探さないとな。


 カランカラン♪


 「いらっしゃい。宿屋へようこそ。」


 「どうも。寝れるところを探してて。」


 「1泊300ゴールド、3食付で550ゴールドだよ。」


 「わかりました…って、あれ?」


 …金ないな。てかあのカエル800ゴールドしたよな?明らかにぼったくりだよな!?なあ!?


 「ゴホン!すみません、お金が無いので、出直します。」


 まったくなんてことだ。あのカエルを買ってなければ3食と寝るとこを確保出来てたのに!


 ゴツン!


 「痛!」


 「いてて、大丈夫ですか?」


 ぶつかった女の子は優しそうで、どこか悲しそう。


 「君こそ大丈夫?ケガは?」


 「わ、私は大丈夫です。すみませんそれどころじゃなくて、では!」


 「あ、え、ちょっと!」


 行っちゃった。急いでたのかな。


 (!?)


 何だこの匂い?血の匂い?臭い。悪臭だ。あの2人組の男からしてるのか。まったく、風呂には入れっつーの。


 「おい、そこのガキ。」


 「ん?」


 「この女を見てねえか?」


 これは…さっきぶつかった女の子?


 「彼女がどうかしたんですか?」


 「おめえに説明する必要はねえ。知ってるのか答えろ。それと、嘘つこうと思うなよガキ。どうなるかわかるよな?」


 なるほどな。彼女は何かしらのトラブルに巻き込まれてると見て良さそうだな。さっき急いでいたのもこいつらから逃げていたのか?


 「いいや、俺は知らないね。」


 「おいガキ。俺らはここら辺を仕切ってるベノムっつうんだ。俺の能力ペッカートュムは相手の罪を見ることができる。お前が嘘をついていたら、嘘という罪の意識が俺には分かるぞ。」


 「いいさ。見てみな。その能力とやらで。」


 (なにをニヤけてるんだこのガキ。まあいい、お望み通り見てやるか…。!?)


 「おいドリオ!どうした!」


 「あ、あぁ…。あああ!」


 「ドリオ!てめぇ!何しやがった。」


 「何もしていない。ただ、俺はもう罪を犯している。その罪を見て、吐き気を催したのかもな。」


 (これは…!闇の…魔法。こんな殺し方…。うっ!)


 ドリオはその場でうずくまり吐いた。


 「てめぇ!よくもドリオを!」


 俺は手から少量のモヤを出す。


 「うあああああああ!!く、苦しい!誰か!助けてくれ!」


 「ドリオとか言ったか。なぜあの子を探している?」


 「あ、あの女は…心が読めるんだ…。その能力を使って金儲けしようと…。ハッ!?」


 「そうか。教えてくれてありがとう。さようなら。」


 「ま、待ってくれ!頼むうう!!!」


 2人とも1片たりとも肉が残らないように溶かした。
心が読める…か。少し話してみるとするか。と言っても、どこに行ったのかわかんないんじゃ探しようがないな。


 「あ、あのー。」


 「君は…!」


 「た、助けてくれたんですよね?あ、ありがとうございます!」


 見られたのか?だとすれば国のヤツらに話す可能性があるな。ここで殺すか。


 「ま、待ってください!話したりしませんから!」


 「ん?心が読めるのは本当なのか。」


 「はい。あなたにぶつかった時、あなたなら助けてくれるかもと心を読んで思ったんです。」


 だとしても話さないという確証はないな。ここで殺した方が自分の身のためになる。仕方がないか。


 「待ってください!信用出来ないというなら、私の拠点に泊まってください!寝るところが必要なのでしょう?いい洞窟を見つけたんです。」


 「信用できないやつの拠点に行くほど俺はバカじゃないぞ。」


 「それは、そうですけど…。けど、恩を返したいんです!それにあなた、あなた様は魔王なのでしょう!?」


 「だったらなんだ?」


 「詳しいことは後で話すので、とりあえず私の洞窟に来てください!」


 「うわあ、ちょ、待て!」


 俺は強引に彼女の洞窟へと案内された。
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