虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

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マッドク王国は、動きがない。

不気味なほどに。

どうした?

竜がいないのは、知っているんじゃないのか?

こんな小国に、マッドク王国は、怖気づいたのか。

そうか。

まぁ、いいか。


サヴィエルの26日
                  ウレリアの砦にて
___________________

一度、僕らリガード竜騎士団は、ウイプルの城に戻された。

久し振りに会った、幼馴染のミスルタは、とても悲しそうな顔をしていた。

マッドク王国は、腰抜けだったよ。

でも、戦っていない街のみんなは、待つしかない。

僕ら以上に、状況もはっきりわからないから。

恐いんだ。

だから、

大丈夫だよ、と声をかけたんだけど。

身構えられた。



もしかして、



僕が、竜を殺したから。

恨んでいるのか。



そうだろうね。

大いなる翼竜の力は、ウイプル王国の力の象徴だっただろう。

君なんかには、わからないだろう。



僕が、好きで殺した、とでも?



いいさ、誰にもわからない。

君を信用したつもりもないから。



もう二度と、話しかけないでくれ。



サヴィエルの27日
                   自分の部屋にて
___________________

マッドク王国が、兵力を整え、ウイプル王国への進軍を開始した。

城に残す兵は限りなく少ない。民から男達を一時的に兵と化し、城下町を守らせる。

進軍している敵兵は、1000位と聞く。

僕らは、800位。

マッドク王国は、進軍していない兵もそれなりの数がいるはず。

こちらには、それがほぼない。

圧倒しなければ、ウイプル王国の未来はないだろう。

幼馴染の、ミスルタが会いにきた。

これが最後の別れだとしたら、



淋しい、かな。



二度と会うつもりは、ないだろうと。

思っていたのは、見当違いだった、か。



僕に気を遣っているのは、伝わるけど。



お元気で。



僕の顔を見て、ミスルタは涙を流していた。

どうして、戦に行く前は、そんな顔をするのか、って。



君は、気づいていたのか。



そうだよ。



強がっていても、

本当は。



死に場所を、探している。



サヴィエルの28日
                  ウレリアの砦にて
___________________

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