339 / 673
294
しおりを挟む「ええ、ハウウェル様の腕は保証します。それで、あなたはどうしますか?」
ケイトさんに問われた彼女は……
「そ、その、申し訳ありませんでしたっ!!」
と、お友達と一緒に頭を下げ、逃げるように走り去って行った。
「・・・あれは、勝負はしないということでいいのでしょうか?」
「ええ、多分ですが」
「ハウウェルが女の子撃退したー」
「ふむ。どちらかというと、彼女達を撃退したのは、テッドの方ではないか?」
「ぅえっ!? 俺っ!?」
「まぁ、彼女達を脅かすようなことを言ってたのは、明らかにテッドだよね」
というか、わたしはコイツのせいで怯えられたと言っても過言ではない気がする。あまり気にしてないけど。
「や、俺は別に、あの子達を脅かしたワケじゃねぇんだって! 単に、か弱い女の子がハウウェルに蹴散らされる姿を見るのが忍びなかっただけだから!」
「か弱い女の子、ねぇ?」
「あ、なんだよその言い方は!」
わたしの言い方が気に障ったのか、ムッとした顔をするテッド。
「や、普通、先輩の、それも大してよく知りもしない男子に真っ正面から喧嘩売るような女の子を、か弱いとは言わないんじゃない?」
「ハッ! ……一瞬なるほど! って納得しかけたけど、ハウウェルに比べると、そこらの女の子は普通にか弱い部類に入ると思いまーす」
「ふふっ、確かに。クロフト様と喧嘩ができてしまうハウウェル様に比べると、そうかもしれませんね」
「ですよねー」
テッドの言葉に、クスクスと同意ケイトさん。
あ、これはちょっとまずいかも。今更だけど、セディーに話されたら、めっちゃ困る話だ!
「あ、いえ、その、レザンとやり合えるというか、一応コイツの相手がギリギリできるくらいですから! わたしはそんなに凄くはないですよ? むしろ、騎士学校ではあんまり強くなくて、主席だったコイツに一回もまともに勝てたことは無いですから」
「そう謙遜することはないぞ、ハウウェル。俺と何合も打ち合えるのは、お前を含めても数名しかいなかったんだからな」
わたしの腕は、コイツと打ち合えるというレベルじゃない。ただ単に、レザンの一方的な猛攻を一時間ちょいくらいは凌げるってだけのことだし。わたしは多分、剣士としての腕はそう強い方じゃない。
「お前はちょっと黙ってろ。その、ケイトさん。このことはセディーやおばあ様達には内緒にしてもらえると……」
「ええ、わかりました。わたしも・・・両親やリヒャルトには少々言い難いことが偶にありますからね。ですが、あまり無理をしてはいけませんよ?」
少しだけ心配そうに、そしてちょっぴりいたずらっぽく笑ってケイトさんが言う。
「はい」
多分、ご両親やリヒャルト君に言い難いことというのは、どこぞの馬鹿共を鞭で撃退なんかしていることなんでしょうねぇ。ケイトさんはある程度鍛えていて、武器を扱えるとは言っても年頃の女の子。ご両親やリヒャルト君が知ったら、すっごく驚かれると思います。
まぁ、保護者に内緒にしているというその辺りは、お互い様と言ったところかもしれない。人が集まると、それなりにトラブルの類に出くわすことがあるからなぁ・・・
それから耐久レースのことを詰めて、この日はお開きとなった。
「いいかハウウェル! 絶対勝てよ! 幾ら副部長……じゃなかった、部長が、もしものときの俺の暫定副部長に異論が無いと言おうが、俺には副部長の座というか、コイツのフォローやら暴走したときに止めるブレーキ役なんか、めっちゃ無理だからな!」
と、テッドに強く応援? をされた。
「・・・俺はそんなに暴走しているだろうか?」
という不思議そうな呟きは無視した。どうやら、奴には自覚が無いらしい。
困ったものだよ、全く。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
20
お気に入りに追加
745
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
これは一周目です。二周目はありません。
基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。
もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。
そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
眠りから目覚めた王太子は
基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」
ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。
「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」
王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。
しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。
「…?揃いも揃ってどうしたのですか」
王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。
永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
この愛は変わらない
豆狸
恋愛
私はエウジェニオ王太子殿下を愛しています。
この気持ちは永遠に変わりません。
十六歳で入学した学園の十八歳の卒業パーティで婚約を破棄されて、二年経って再構築を望まれた今も変わりません。変わらないはずです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる