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「ええ、ハウウェル様の腕は保証します。それで、あなたはどうしますか?」

 ケイトさんに問われた彼女は……

「そ、その、申し訳ありませんでしたっ!!」

 と、お友達と一緒に頭を下げ、逃げるように走り去って行った。

「・・・あれは、勝負はしないということでいいのでしょうか?」
「ええ、多分ですが」
「ハウウェルが女の子撃退したー」
「ふむ。どちらかというと、彼女達を撃退したのは、テッドの方ではないか?」
「ぅえっ!? 俺っ!?」
「まぁ、彼女達を脅かすようなことを言ってたのは、明らかにテッドだよね」

 というか、わたしはコイツのせいで怯えられたと言っても過言ではない気がする。あまり気にしてないけど。

「や、俺は別に、あの子達を脅かしたワケじゃねぇんだって! 単に、か弱い女の子がハウウェルに蹴散らされる姿を見るのが忍びなかっただけだから!」
「か弱い女の子、ねぇ?」
「あ、なんだよその言い方は!」

 わたしの言い方が気に障ったのか、ムッとした顔をするテッド。

「や、普通、先輩の、それも大してよく知りもしない男子に真っ正面から喧嘩売るような女の子を、か弱いとは言わないんじゃない?」
「ハッ! ……一瞬なるほど! って納得しかけたけど、ハウウェルに比べると、そこらの女の子は普通にか弱い部類に入ると思いまーす」
「ふふっ、確かに。クロフト様と喧嘩ができてしまうハウウェル様に比べると、そうかもしれませんね」
「ですよねー」

 テッドの言葉に、クスクスと同意ケイトさん。

 あ、これはちょっとまずいかも。今更だけど、セディーに話されたら、めっちゃ困る話だ!

「あ、いえ、その、レザンとやり合えるというか、一応コイツの相手がギリギリできるくらいですから! わたしはそんなに凄くはないですよ? むしろ、騎士学校ではあんまり強くなくて、主席だったコイツに一回もまともに勝てたことは無いですから」
「そう謙遜することはないぞ、ハウウェル。俺と何合も打ち合えるのは、お前を含めても数名しかいなかったんだからな」

 わたしの腕は、コイツと打ち合えるというレベルじゃない。ただ単に、レザンの一方的な猛攻を一時間ちょいくらいは凌げるってだけのことだし。わたしは多分、剣士としての腕はそう強い方じゃない。

「お前はちょっと黙ってろ。その、ケイトさん。このことはセディーやおばあ様達には内緒にしてもらえると……」
「ええ、わかりました。わたしも・・・両親やリヒャルトには少々言い難いことが偶にありますからね。ですが、あまり無理をしてはいけませんよ?」

 少しだけ心配そうに、そしてちょっぴりいたずらっぽく笑ってケイトさんが言う。

「はい」

 多分、ご両親やリヒャルト君に言い難いことというのは、どこぞの馬鹿共を鞭で撃退なんかしていることなんでしょうねぇ。ケイトさんはある程度鍛えていて、武器を扱えるとは言っても年頃の女の子。ご両親やリヒャルト君が知ったら、すっごく驚かれると思います。

 まぁ、保護者に内緒にしているというその辺りは、お互い様と言ったところかもしれない。人が集まると、それなりにトラブルの類に出くわすことがあるからなぁ・・・

 それから耐久レースのことを詰めて、この日はお開きとなった。

「いいかハウウェル! 絶対勝てよ! 幾ら副部長……じゃなかった、部長が、もしものときの俺の暫定副部長に異論が無いと言おうが、俺には副部長の座というか、コイツのフォローやら暴走したときに止めるブレーキ役なんか、めっちゃ無理だからな!」

 と、テッドに強く応援? をされた。

「・・・俺はそんなに暴走しているだろうか?」

 という不思議そうな呟きは無視した。どうやら、奴には自覚が無いらしい。

 困ったものだよ、全く。

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