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しおりを挟む「……この様子だと、他の学年にはまだ勘違いしている方がいそうですね」
「そうみたいですね」
やれやれと、少し困ったようなケイトさんと顔を見合わせる。
「ちなみにですが、わたしの兄は去年……じゃなくて、二年前にこの学園を卒業しているので、あなた方とは顔を合わせる機会はないと思いますよ? そういうワケでわたしは、兄の代理としてケイトさんとパートナーを組んでいるんです」
実際は……ケイトさんがセディーと婚約する前から、「婚約者がいてもいいんです! 思い出をください!」的な発言をして、肉食獣の如くギラギラした目で追い掛けて来るような女子生徒達がコワいので、そういう女性避けにケイトさんにお願いをして、パートナーを組んでもらっているワケですよ。最初はケイトさんからの提案でしたけどね?
まぁ、そんな内実は言わないけど。
「ぇっと、その・・・勘違いをしてしまい、申し訳ありませんでした」
と、殊勝な様子で頭を下げる彼女。
「別にいいですよ。縁故だなんだとは、どうせ誰かが言い出すことだと思っていましたからね」
「うむ」
と、頷くレザン。そして、ふと思い出した。
「あ、そうだ。あなた、勝負に参加しますか?」
「え?」
「最初にわたしに勝負を申し込んで来たのはあなたでしょう? 女性に耐久レースは少々厳しいかもしれませんから、もし参加するのでしたら、お友達と複数名の交代で出てもいいですよ? そうでなければ、あの先輩と決着をつけた後になりますが、後日。日を空けて、なんらかの勝負をしますか? 短距離レースでも、障害物競走やロデオ、アスレチックの方でも、なんでもいいですよ? ハンデが必要なら差し上げますし。申し込むというのであれば、受けて立ちますが」
にこりと微笑むと、
「ちょっ、ハウウェル、言い方! 相手年下の女の子だからな! つか、お前年下の女の子とガチ勝負する気かよっ!?」
テッドが慌てたように割り込む。
「え? だって、勝負をしたいと言ったのは向こうの方だし。それに、ガチの対決ではないよ? 必要ならハンデもあげるつもりだから。むしろ、勝負を断る方が彼女に失礼なんじゃないかな? どう思います?」
テッドに応え、最後に彼女の方を向いて尋ねる。
「え?」
「ああ、ハンデ付きの勝負で仮令わたしが負けたとしても、結果に異を唱えたり、再戦を、なんて言うような野暮な真似はしませんので、その辺りは安心してくださいね?」
「うむ。真剣勝負の結果だからな」
「一応、わたしが負けると副部長の座が一つ空くことになるけど……う~ん、レザン一人に任せるのはかなり心配だから……テッド、副部長になる?」
「はあっ!? ここで俺に振るのかよっ!?」
「別に正式にじゃなくて、暫定でもいいよ? 新しい副部長が決まるまで、レザンの補佐的な感じでフォローしてくれればいいから」
「待てハウウェル! 俺にコイツの暴走を止められるワケねぇだろっ!? どんだけ俺のこと過信してんだよっ!?」
ぐわっとテッドに詰め寄られる。
「頼むハウウェル! 副部長を続けてくれっ!?」
__________
女の子でも相手にすると宣言するネイサン。
基本的に、婦女子は守るものだとは思っていますが、別に女性全般がか弱いものだとは思っていません。
今までネイサンの身近にいたのが、おばあ様やミモザさん、スピカ、ケイトさん達という、気が強かったり、割と逞しい感じの女性が多かったので。(笑)
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