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しおりを挟む「ネイサン様、宜しいのですか? あのようなことを公言してしまって……」
なんだかケチの付いた感じになってしまった新部長就任の集会をお開きにしてから、心配そうな顔でケイトさんが尋ねました。
「ええ。役職の有無は、全然関係無いので。最悪、副部長を辞めることになったとしても、わたしがケイトさんを支えることになんら変わりはありません。ケイトさんはわたしの姉上になるんですから、弟として当然のことです。だから喧嘩くらい、代わりに買わせてください」
そう応えると、
頬を染めたケイトさんが口許を押さえてなにかを呟いた。心なしか、目が潤んでいるような……?
「?」
なんて言っているんだろうと思っていると、
「な、な、ハウウェル。みんなの前であんなこと言って大丈夫なん?」
心配そうなテッドが寄って来た。
「まぁ、大丈夫だろう。こう見えてハウウェルは、やるときはやる男だからな。それにしても、なぜ十二時間なんだ? 適宜休憩を挟めば、十六時間くらいは乗れるだろう。耐久レースなら、もっと時間が必要じゃないのか?」
「え?」
「や、さすがに十六時間以上はね。夜とか、馬場の使用許可が出ないと思って」
ここは騎士学校じゃないんだから。馬場の使用ができるのは、ギリギリで日暮れの後くらいまでだろう。それ以降は難しいと思う。
それに、騎士学校時代に比べると、少し身体が鈍り気味だからなぁ。
「そうか・・・」
「あと、最近はそこまで長時間乗ってないし。それにここの馬も、長時間走ることに慣れている子がいるのかもわからないから」
馬というのは、無理して走らせると、本当に眼界を越えて、心臓が止まるまで走ってしまう生き物だったりする。
物語なんかではよく、重要な伝令などを知らせる為に長距離走って来た人がいて、止まった途端に馬が泡を吹いて倒れるってシーンがあったりするけど、あれってあの後、大抵その馬は死んじゃってるんだよね。たった数行の記述だとしても、可哀想だと思う。
だから、長時間走らせるのはちゃんと馬への配慮をしないといけないんだよね。あんな奴との勝負で、乗馬クラブの馬を潰したくはない。
「ふむ。成る程な」
「お前ら、それマジで言ってんのっ!?」
「うん? なにがだ?」
「や、普通馬に何十時間も乗らねぇって!」
「何十じゃなくて、十何時間ね? さすがに、不眠不休で数日間馬に乗り続けるのは大変だから。騎士学校での訓練で、何時間もひたすら馬を疾走させるってのがあったんだよ。あと、野営訓練の場所まで数日掛けて遠駆けで行くとか」
「マジかっ!?」
「マジだよ。だから、長時間の乗馬は結構慣れてる」
「ガチな訓練っ!?」
「うん? 騎士学校なのだから当然ではないか」
「いえ、メルンさんが驚いているのはそこではないと思いますが・・・」
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