虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
319 / 673

276

しおりを挟む


「はあ……その辺りは、俺にはまだちょっと難しいかもです」

 まぁ、セディーのそれは一般的な本の読み方じゃないとわたしも思う。

 「ハウウェルの おにーさん って、 ガチで 頭いい のな?」

 テッドにひそひそと囁かれた。

 うん。頭良いのはわかってたけど、今の話を聞いて、もしかしたらセディーはわたしの予想よりもかなり頭良いのかもしれないと思ったよ。

「あ、質問いいですか? おにーさん」
「どこかわからないところがある?」
「あ、そうじゃなくって。なんて言うかこう……どういう風な勉強したら、おにーさんみたいに頭良くなれますか? 全教科得意になる方法があるなら教えてください! 是非とも!」
「う~ん……僕の勉強法って、かなりアレだからなぁ。多分、普通の子には全然当てにならないと思うんだけど……」

 テッドの質問に困ったような顔をするセディー。

「そこをなんとかっ、お願いしますおにーさん!」
「ぁ~……まぁ、そこまで言うなら別にいいけど。単純に、どんな本でも、本を読むときには集中して読めばいいと思うよ」
「へ? それだけ、ですか?」

 拍子抜けしたようなテッド。そして、なにげにリールが耳を澄ましている。

「うん。それだけ。具体的には……なんて言うか、話が通じなくて苦手だと思っている人と、毎日毎日最低でも数時間。長ければ半日以上とか一緒に過ごさなきゃいけなくて、その人の相手をしたくなくて、その人のことを意識から追い出す為に、ものすごっく集中する感じかな? あとは、その人の相手をしたくないが為に、もう何度も読んだ本を暗記するまで繰り返し読み返すとか?」

 クスクスと笑いながら、けれど全く笑ってない目でセディーが言う。

 なんというか・・・アレだっ!? これ、苦手な人って絶対あの人のことだよ・・・

 セディーはわたしと違って、あの人と過ごす時間が長かったからなぁ・・・そりゃあ、話の通じないあの人と長時間一緒に過ごすのはキツいというか、つらいよねぇ。

「お、おにーさん? え~っと、冗談、ですよね?」

 いきなり様子の変わったセディーに、テッドが戸惑ったようにわたしを見る。『どうしたよ? おにーさん』と、口パク。全くもう、要らんこと聞くからでしょ。

「セディー」
「ん? なぁに? ネイト」
「後でセディーのお勧めの本とか教えてくれる?」
「うん。いいよ♪」

 にこりとセディーが頷いたところで、夕食の用意が整ったと侍女が知らせに来てくれた。


しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

これは一周目です。二周目はありません。

基本二度寝
恋愛
壇上から王太子と側近子息達、伯爵令嬢がこちらを見下した。 もう必要ないのにイベントは達成したいようだった。 そこまでストーリーに沿わなくてももう結果は出ているのに。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

処理中です...