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「そうですか。でも、気分が優れないのでしたら遠慮せずに仰ってくださいね?」
「はい。ありがとうございます」
「だいじょうぶ、ですか?」
「ええ。リヒャルト君も、心配してくれてありがとうございます」

「では、ネイサン様に少々お聞きしても宜しいでしょうか?」
「はい。なんでしょうか?」
「ネイサン様の婚約者様は、どのような方なのでしょうか? プレゼントを選ぶと言っても、お相手の方の好みもあるでしょうから」
「ネイトにいさまのこんやくしゃさんのおなまえは、なんというのですか?」
「えっと、ですね・・・わたしの婚約者の名前は、スピカ・クロシェンと言って、おばあ様のご実家の方の親族で・・・」

 と、言ったところではたと気が付いた。

 両親に花畑に置き去りにされて、両親に任せてはおけないと、おばあ様の実家方(しかも隣国という遠方)に預けられて、その滞在先の子供として出逢ったのがスピカとロイの二人です。

 ・・・だなんてこと、ケイトさんにはかくとして。うちの事情を全く知らない上、まだ小さいリヒャルト君の前では、かなり話し難い事柄ではなかろうか? と。

 まぁ、あれだ。少し言葉を濁そう。うん。

「わたしが留学していたときに、滞在先でお世話になったお家の女の子です」
「りゅうがくって、なんですか?」

 きょとんと首を傾げられた。

「留学というのは、自分の住んでいる国から離れて、別の国に色々なことを学びに行くことですね」
「ネイトにいさま、よそのくににいったことがあるんですかっ?」

 両親がアレなことを誤魔化そうとしたら、なんだかすっごくきらきらとした瞳で見上げられたっ! あ、でもケイトさんには伝わってしまったみたいで、少し複雑そうな顔をされましたけど。

「ええ、おばあ様がお隣の国の出身なので」
「がいこくご、はなせますか?」
「外国語は、学校の授業で習った程度ですかねぇ。お隣の国も、言葉はこの国と基本的には同じ言葉ですからねぇ」
「? ちがうことばもあるんですか?」
「そうですね。細かいイントネーションや言い回し、ニュアンスが違っていたり、方言なんかがこの国とは少し違ったりしますね。わたしが住んでいた地域とはまた別の地域だったら、外国語が使われていたと思うんですけど。残念ながら、その辺りには行ったことがないので」

 わたしは基本的に、クロシェン領で過ごしていたからなぁ。外国語の成績は、そこそこ悪くないという感じだ。帰国子女だからと過剰に期待されても、この国と大体同じ言語を使っていたんだから残念そうな顔をされても困るんですよねぇ。

「すごいんですね~!」
「わたしは特に凄くはないんですけどね? でも、ありがとうございます」
「ネイサン様。それで、スピカ様はどのような女の子なのでしょうか?」
「はっ! そうです、かわいいおねえさまのおはなしでした!」

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