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「そっか。一緒に行こうね」

 にこにこと頭を撫でられた。

 とりあえずスピカへのプレゼント選びの為の買い物は、ケイトさんに手紙を出してからの返事待ちとなった。

 それまではのんびりと・・・は、あんまりできなかったなぁ。

 勉強は勿論のことなんだけど、やって来ましたよ。ライアンさんがうちに! 荷物を積んだ馬車でお引越しして来ました。

 なんでも、ご実家が遠いのでうちに住み込みでセディーの秘書として働くとのことです。フィッセル子爵と夫人もご一緒で、ライアンさんを宜しくお願いしますと、お祖父様とセディーに挨拶をして帰って行きました。 

 仲の良さそうなご家族でしたねぇ。卒業パーティーでご挨拶をした兄君のウォレンさんとも仲は良好のようですし。
 
 それにしても、先輩がうちの中で働くというのもなんだか不思議な気分ですねぇ。

 翌日から、セディーの隣に並ぶ、制服を着ていないライアンさんを、なんか新鮮だなぁと思って眺めていたときでした。

 なにやら、屋敷の中がざわついているような気配がしました。

 ざわついているのは玄関の方みたいなので、来客だろうか? と思っていたら――――

「…………っ!?」

 なにやら、誰かが大きな声で喚いているみたいでした。

 なんの騒ぎだろう? と思って、こっそり玄関を覗きに行くと・・・

「お義父様はどこですっ!?」

 聞き覚えのある声が、お祖父様を出せと喚いていました。

 その、喚いている人は使用人達が止めているのも聞かず、ずかずかと屋敷に入って来ました。

 ・・・あの人が来るなんて話は誰も言っていなかったし、そういう話も全く聞いていなかったので、多分アポ無しの突撃なんだろうと思った。

「セディーが婚約したなんて、どうしてわたくしとエドガー様に教えてくれなかったのですかっ!? お陰でお友達の前で恥を掻いたではありませんかっ!?」

 ぁ~……まぁ、セディーがケイトさんと婚約したことは、両親を丸っきり蚊帳の外にして、セディーとお祖父様、セルビア伯爵家とで決めたことでしたねぇ。

 どうやら、セディーが婚約したことを母に伝えた、どこぞの親切な人・・・・がいたみたいです。

 ちなみにお祖父様はお仕事中なので、母の相手をすることはないと思います。

「……全く、騒がしいですね。先触れも無しに突然来るとは何事ですか。メラリアさん」

 と、冷ややかな声が玄関に降りました。

「お義母様っ……」

 母はおばあ様の、全く歓迎していないという表情と冷たい声に若干怯みながらも、

「セディーのことですっ! 一体どういうことですかっ!? どうしてわたくし達になんの断りもなく、勝手にセディーの婚約を決めたのですかっ!?」

 おばあ様を睨み付けて吠えました。

「しかも、聞いたところによると、その娘は暴力を振るうような乱暴者で、以前に婚約を解消されたような娘だって言うじゃないっ! なんでわざわざそんな問題のある傷物の娘をセディーと婚約させたんですかっ!? そんな酷い婚約、セディーが可哀想じゃないですかっ!?」

 これは・・・わざわざケイトさんのことを非好意的に母に吹き込んだ親切な人・・・・がいるようですね。

 全く、余計なことをしてくれる。

 それにしても、ケイトさんが乱暴者って・・・なんだかとても違和感がありますね? ケイトさんは確かに、剣や鞭を扱いますが、無暗に暴力を振るう方ではありませんし。

「幾らお義母様達がネイトばかり可愛がっているからって、なんでセディーにこんな嫌がらせの婚約を押し付けるんですっ!? セディーが可哀想じゃないですかっ!! 今すぐ、そんな婚約は解消してくださいっ!?!?」

 相変わらずというか、なんというか・・・


__________


 おかん襲来。(笑)

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