304 / 673
261
しおりを挟む「そっか。一緒に行こうね」
にこにこと頭を撫でられた。
とりあえずスピカへのプレゼント選びの為の買い物は、ケイトさんに手紙を出してからの返事待ちとなった。
それまではのんびりと・・・は、あんまりできなかったなぁ。
勉強は勿論のことなんだけど、やって来ましたよ。ライアンさんがうちに! 荷物を積んだ馬車でお引越しして来ました。
なんでも、ご実家が遠いのでうちに住み込みでセディーの秘書として働くとのことです。フィッセル子爵と夫人もご一緒で、ライアンさんを宜しくお願いしますと、お祖父様とセディーに挨拶をして帰って行きました。
仲の良さそうなご家族でしたねぇ。卒業パーティーでご挨拶をした兄君のウォレンさんとも仲は良好のようですし。
それにしても、先輩がうちの中で働くというのもなんだか不思議な気分ですねぇ。
翌日から、セディーの隣に並ぶ、制服を着ていないライアンさんを、なんか新鮮だなぁと思って眺めていたときでした。
なにやら、屋敷の中がざわついているような気配がしました。
ざわついているのは玄関の方みたいなので、来客だろうか? と思っていたら――――
「…………っ!?」
なにやら、誰かが大きな声で喚いているみたいでした。
なんの騒ぎだろう? と思って、こっそり玄関を覗きに行くと・・・
「お義父様はどこですっ!?」
聞き覚えのある声が、お祖父様を出せと喚いていました。
その、喚いている人は使用人達が止めているのも聞かず、ずかずかと屋敷に入って来ました。
・・・母が来るなんて話は誰も言っていなかったし、そういう話も全く聞いていなかったので、多分アポ無しの突撃なんだろうと思った。
「セディーが婚約したなんて、どうしてわたくしとエドガー様に教えてくれなかったのですかっ!? お陰でお友達の前で恥を掻いたではありませんかっ!?」
ぁ~……まぁ、セディーがケイトさんと婚約したことは、両親を丸っきり蚊帳の外にして、セディーとお祖父様、セルビア伯爵家とで決めたことでしたねぇ。
どうやら、セディーが婚約したことを母に伝えた、どこぞの親切な人がいたみたいです。
ちなみにお祖父様はお仕事中なので、母の相手をすることはないと思います。
「……全く、騒がしいですね。先触れも無しに突然来るとは何事ですか。メラリアさん」
と、冷ややかな声が玄関に降りました。
「お義母様っ……」
母はおばあ様の、全く歓迎していないという表情と冷たい声に若干怯みながらも、
「セディーのことですっ! 一体どういうことですかっ!? どうしてわたくし達になんの断りもなく、勝手にセディーの婚約を決めたのですかっ!?」
おばあ様を睨み付けて吠えました。
「しかも、聞いたところによると、その娘は暴力を振るうような乱暴者で、以前に婚約を解消されたような娘だって言うじゃないっ! なんでわざわざそんな問題のある傷物の娘をセディーと婚約させたんですかっ!? そんな酷い婚約、セディーが可哀想じゃないですかっ!?」
これは・・・わざわざケイトさんのことを非好意的に母に吹き込んだ親切な人がいるようですね。
全く、余計なことをしてくれる。
それにしても、ケイトさんが乱暴者って・・・なんだかとても違和感がありますね? ケイトさんは確かに、剣や鞭を扱いますが、無暗に暴力を振るう方ではありませんし。
「幾らお義母様達がネイトばかり可愛がっているからって、なんでセディーにこんな嫌がらせの婚約を押し付けるんですっ!? セディーが可哀想じゃないですかっ!! 今すぐ、そんな婚約は解消してくださいっ!?!?」
相変わらずというか、なんというか・・・
__________
おかん襲来。(笑)
20
お気に入りに追加
732
あなたにおすすめの小説
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる