虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い

月白ヤトヒコ

文字の大きさ
上 下
294 / 673

251

しおりを挟む


「一つ、よろしいでしょうか?」

 戸惑った表情で黙っていたレザンが応えるように頷き、口を開く。

「はい、なんでしょうか?」
「先輩方は間違っています」

 うん。もうホンっト、色々と間違ってるよねっ!?

「ハウウェルはそんな、大して知りもしない、特になにもしていないような人にいきなり噛み付くような狂犬のような奴ではありません。もしハウウェルに噛み付かれたいというのならば、先輩方の方からハウウェルに嚙み付くべきです」

 コイツに期待したわたしがバカだった・・・

「それは違う!」
「なに? そう、か……ハウウェルはとうとう、なにもしていない一般人相手に因縁を付けたり噛み付いたりするようになってしまったのか……」

 沈痛な面持ちでわたしを見下ろすレザン。

「いや、そういうことじゃなくて! わたしは、なにもしてない人になにかしたりはしない。それ自体は間違ってなくもないけど、今ここで言うようなセリフはそれじゃないっ!!!!」
「うん? そうだったか?」

 きょとんと首を傾げるレザン。

「そ、そんな・・・」

 すると、悲痛な声を上げる先輩。

「被虐趣味のあるわたしに、ハウウェル様を責めろというのですかっ!?」
「くっ……やはり、ハウウェル様は一筋縄では行かないようですね。罵倒されたいわたし達に、罵倒しないと応えてくれないとはっ……」

 もうやだ、この人達・・・

「・・・ホンっト勘弁してください。わたし、人を詰って喜ぶような趣味も、詰られて喜ぶような趣味もしてないんで。マジ勘弁してください」
「そんな筈はありません! あんなに生き生きとした顔で彼を責め立てていたではありませんかっ!? そうです、ハウウェル様はまだご自分の才能を理解していないのですよ!」
「どんな才能ですか! というか、諸々のことはお断りします! では失礼!」

 と、ダッシュで空き教室から飛び出した。

「あ、ハウウェル様、まだお話が……」

 なんか言ってたような気がするけど、わたしはあの人達に関わりたくない。

 空き教室から、息が切れるまで遠ざかって・・・

「ぁ~・・・なんかもう、疲れた」

 全速力でしばらく走ったからというよりは、精神的な疲労だ。

 喧嘩売って絡んで来るような連中を相手にする方が、大分マシだよ。ああいう人達って、どう対処していいのかマジわかんない。友好的で腰の低い態度。でも変態さんとか・・・

「……前々から思っていたが、ハウウェルは癖の強い人にやたら好かれるな」

 全速力で走ったというのに、ちゃっかりと付いて来ていた体力おばけが全く息を切らした様子もなく、なにやら変なことを呟いた。

 聞かなかったことにしよう。

 うん、わたし別に変な人に好かれてないし・・・

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰



 ネイサンは、友好的な被虐趣味M体質の先輩達から逃げ出した。(笑)

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

この声は届かない

豆狸
恋愛
虐げられていた侯爵令嬢は、婚約者である王太子のことが感知できなくなってしまった。 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

なにをおっしゃいますやら

基本二度寝
恋愛
本日、五年通った学び舎を卒業する。 エリクシア侯爵令嬢は、己をエスコートする男を見上げた。 微笑んで見せれば、男は目線を逸らす。 エブリシアは苦笑した。 今日までなのだから。 今日、エブリシアは婚約解消する事が決まっているのだから。

王太子殿下が欲しいのなら、どうぞどうぞ。

基本二度寝
恋愛
貴族が集まる舞踏会。 王太子の側に侍る妹。 あの子、何をしでかすのかしら。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

処理中です...