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しおりを挟む「一つ、宜しいでしょうか?」
戸惑った表情で黙っていたレザンが応えるように頷き、口を開く。
「はい、なんでしょうか?」
「先輩方は間違っています」
うん。もうホンっト、色々と間違ってるよねっ!?
「ハウウェルはそんな、大して知りもしない、特になにもしていないような人にいきなり噛み付くような狂犬のような奴ではありません。もしハウウェルに噛み付かれたいというのならば、先輩方の方からハウウェルに嚙み付くべきです」
コイツに期待したわたしがバカだった・・・
「それは違う!」
「なに? そう、か……ハウウェルはとうとう、なにもしていない一般人相手に因縁を付けたり噛み付いたりするようになってしまったのか……」
沈痛な面持ちでわたしを見下ろすレザン。
「いや、そういうことじゃなくて! わたしは、なにもしてない人になにかしたりはしない。それ自体は間違ってなくもないけど、今ここで言うようなセリフはそれじゃないっ!!!!」
「うん? そうだったか?」
きょとんと首を傾げるレザン。
「そ、そんな・・・」
すると、悲痛な声を上げる先輩。
「被虐趣味のあるわたしに、ハウウェル様を責めろというのですかっ!?」
「くっ……やはり、ハウウェル様は一筋縄では行かないようですね。罵倒されたいわたし達に、罵倒しないと応えてくれないとはっ……」
もうやだ、この人達・・・
「・・・ホンっト勘弁してください。わたし、人を詰って喜ぶような趣味も、詰られて喜ぶような趣味もしてないんで。マジ勘弁してください」
「そんな筈はありません! あんなに生き生きとした顔で彼を責め立てていたではありませんかっ!? そうです、ハウウェル様はまだご自分の才能を理解していないのですよ!」
「どんな才能ですか! というか、諸々のことはお断りします! では失礼!」
と、ダッシュで空き教室から飛び出した。
「あ、ハウウェル様、まだお話が……」
なんか言ってたような気がするけど、わたしはあの人達に関わりたくない。
空き教室から、息が切れるまで遠ざかって・・・
「ぁ~・・・なんかもう、疲れた」
全速力で暫く走ったからというよりは、精神的な疲労だ。
喧嘩売って絡んで来るような連中を相手にする方が、大分マシだよ。ああいう人達って、どう対処していいのかマジわかんない。友好的で腰の低い態度。でも変態さんとか・・・
「……前々から思っていたが、ハウウェルは癖の強い人にやたら好かれるな」
全速力で走ったというのに、ちゃっかりと付いて来ていた体力おばけが全く息を切らした様子もなく、なにやら変なことを呟いた。
聞かなかったことにしよう。
うん、わたし別に変な人に好かれてないし・・・
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
ネイサンは、友好的な被虐趣味の先輩達から逃げ出した。(笑)
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