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腰の低い先輩に連れられてやって来たのは、とある空き教室でした。
そこには先にもう一人の男子生徒がいて……どこかで見覚えがあるような気がして、でも思い出せないな? と考えていると、
「ようこそハウウェル様。お呼び立てしてしまい、申し訳ありません」
にこやかに、これまた腰の低い態度で話し始める先輩。この先輩もまた、上品な雰囲気をまとっていて、平民生徒には見えない。
「いえ。その、それで大事な話とはなんでしょうか?」
「はい。実は・・・ケイト様へと求婚をし、見事その婚約者の座を射止めた勇者であるセディック・ハウウェル様の弟君であらせられるハウウェル様には・・・」
うん? あれ? この人達、ケイトさんの・・・
「我が『ケイト様を見守る会』の永久名誉会長になって頂きたく、お願い申し上げますっ!!!!」
「っ!?」
この人達、『ケイト様を見守る会』の会員の人達だったっ!?!?
それにこの人、どこか見覚えがある気がすると思ったら、あれだ! 嫌がる女子生徒に無理矢理迫る男子生徒をケイトさんが鞭で撃退した後、わたし達に接触して来て『ケイト様を見守る会』に勧誘して、そのなんとも形容し難い存在を知らしめた先輩だっ!?
「無論、現会長であるわたしも、そして次期会長である彼も、そして他の会員達も了承していることなのでご安心ください」
こ、この人がケイトさんにシバかれたいという変態さん達の会長・・・そして、わたしとレザンをこの空き教室まで連れて来た人が次期会長っ!
困ってレザンを見上げると、酷く困惑した顔をしていた。そして、どうしよう? どうする? と、お互いに視線を交わし合っていると・・・
「ケイト様がフリーになったとき……わたし達の勇気が無く、畏れ多くもケイト様へと詰ってくださいや、どうか踏んでください、鞭で叩いてくださいとお願いすることができず、なんとも羨ましく妬ましい思いをしたことか……」
なんか語りだしたっ!?
「だがしかしっ、我々はケイト様へと求婚をしたセディック・ハウウェル様を勇者として讃えることにしたのですっ!? あの、一部の人間には鬼畜だと恐れられたセディック・ハウウェル様が、実はわたし達と同じ趣味を持つ同志だったことに感銘を受けました! セディック・ハウウェル様は一体なんと言ってケイト様へ求婚したのでしょうかっ!?」
「人の兄を勝手に変態扱いするなっ!!!! 勇者ってなんだ、勇者ってっ!?」
思わず全力で怒鳴ってしまい、しまったっ!? と思ったけど、
「ふ、ふふっ……」
なにやら恍惚とした表情で笑い出す、『ケイト様を見守る会』の現会長。
「……あぁ、美しい人に詰られるのは、男女問わず興奮できるものですね!」
「興奮しないでくださいっ! あと、わたしは別に詰ってはいませんからっ!」
「蔑みの視線も、ドン引きしたような視線もまたご褒美です! さあ、交流会で見せたあの見事な鋭い切れ味で、もっとわたしを詰ってくださいハウウェル様!!」
話が通じないっ!?!? しかもなんか喜んでるしっ!? 交流会でケイトさんに絡んで来た自己陶酔男を変態扱いして恥を掻かせてやった弊害が、まさかこんなところで顕れるとはっ!?
「会長、今はそんなことを言っている場合ではないと思いますが・・・確かにわかります。女性に罵られるなら兎も角、男に罵倒されるなど冗談ではないと思っていましたが、ハウウェル様程の美しい方なら男も女も関係ありませんね! さあ、わたし達を心行くまで口汚く罵ってください!」
止めると思ったら、こっちも駄目な人だったっ!?
焦ってレザンの方を見ると、
「一つ、宜しいでしょうか?」
戸惑った表情で黙っていたレザンが応えるように頷き、口を開く。
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