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しおりを挟む一応、そこそこ書けたと思う初日のテストが終わり、今日の……というか、このテスト期間中は午後からの授業が無い。
晴れやかな顔で教室を出る生徒。それとは対照的に、酷く顔色の悪い生徒。怒ったような顔の生徒。悔しげな生徒。
口々にテストのできや愚痴、これからの予定などを話すガヤガヤとした声が溢れる。
これから明日のテストの教科の勉強をするもよし。ゆっくりと休んで明日に備えるのもよし。みんなそれぞれ、思い思いに過ごす。
わたしの目算だと、七割くらいは間違ってない筈……だといいなぁ。
とりあえず、わたしは……昼食かな?
そして、いつもの面子が食堂のテーブルを囲む。
「で、どうだったよ? 解けたか? レザン」
昼食を前にしているというのに手を付けず、深刻な表情のテッド。
「うむ。感触としてはそう悪くない……と、思うぞ」
一応頷いてはいるものの、どことなく自信の無さそうなレザン。
「むずかったよなー。一応多分、半分くらいは正解してっといいんだけどなー」
「うむ。さすがは学年末テストと言ったところか……」
正当率五割以上が、普通クラスのボーダーライン。五割未満が下位クラス。そして、四割未満だと、留年となってしまう。
「ハウウェルはどうよ? 余裕だった?」
「そんなワケないでしょ。普通に難しかったよ」
「……お前らな、習ったことを確りと理解して復習していれば、特に難しい問題は無かった筈だぞ」
と、わたし達に呆れたような視線を寄越すリール。
「え~、だって範囲広かったじゃんよー。普通のテストは、もっと範囲狭いしー。せんせー達も、どこがテストに出るって教えてくれなかったじゃんか」
「進級テストも兼ねているんだから当然だ」
「中間テストくらいなら、一夜漬けでもどうにかなるのによー」
「徹夜はあまり身体によくないぞ?」
「そういう問題じゃないだろ。そもそも、ギリギリになって慌てるような勉強の仕方を改善しろと言っているんだ」
「ふっ、わかってねぇな? リールはよ」
「? なにがだ?」
「この学校は、結構できる人ばっかいるからあんま実感ねぇかもしれないけどな? それに、人間ってのは忘却する生き物なんだ。だから……世の中の大多数はな、俺みたいにテスト前になって慌てるような奴なんだぜ!」
どうだ! とばかりに胸を張るテッド。
まぁ、テッドの言う通り。実際はそういう人達の方が多いとは思うけど・・・
「概ねその通りだとは思いますが、胸を張って言うことじゃないですよ」
クスクスと笑みを含んだ声がテッドを窘めた。
「ご一緒してもいいですか?」
「ライアン先輩! どうぞどうぞ。それで、先輩の方はテストどうだったんですか? ちゃんと解けました?」
席に着いたライアンさんへ、少しだけ不安そうに尋ねるテッド。
まぁ、ライアンさんは余裕だと言ってわたし達に勉強を教えてくれたけど、そのせいでライアンさんの成績が落ちたりするのは心配だよねぇ。特に三年生は、卒業が懸かっていますし。
「ええ。大丈夫でしたよ」
「よかった~」
はぁ~、と安堵の溜め息。
「テッド君とレザン君が嫌じゃなければ、午後も一緒に勉強をしませんか?」
「ライアン先輩男前~!」
「よろしくお願いします!」
「その、本当にいいんですか?」
ついさっき、心配した顔をしていたのに、迷わず頷いたテッドとレザン。二人に対し、リールは遠慮がちだ。
「はい。リール君も遠慮しなくていいですよ。それじゃあ食べましょうか」
と、昼食後にテスト勉強をすることになった。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰
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