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それから、平日は授業を受け――――
アルレ嬢が接触したがらないレザンを盾にして、なるべく一人にならないよう、テッドやリール達と一緒にいると、アルレ嬢は諦めて去って行く。
さすがに、一般生徒に諜報活動をしていることはバレたくないようですね。あと、やっぱりクロフト家とも揉めたくないみたいですし。
三年生の卒業まであと数ヶ月。頑張って乗り切るしかない。
そして、週末は――――
「ねえ、セディー」
「なぁに? ネイト」
「毎回、わたしが付いて行ってるけど、いいの?」
普通、婚約者に会いに行くときに、毎回弟を連れて行く人はなかなかいないと思う。
まぁ、今日でまだ三回目だけど。ちなみに、お祖父様とおばあ様のセルビア家への挨拶は来週を予定しています。
「勿論♪リヒャルト君も先週、また来てくださいって言ってたでしょ。僕一人で会いに行くより、ネイトがいた方がケイトさんも絶対喜んでくれると思うよ?」
確かに先週、ひよこのお礼だとケイトさんにセルビア家へ招待された。
そしてリヒャルト君と遊んで、その帰り際、「またきてくださいね? おやくそくですよ?」 と、寂しそうな顔で見上げるリヒャルト君に思わず、「はい」と返事をしてしまったのはわたしなんだけど。
今のところ、セディーとケイトさんが会うときには必ず、わたしとリヒャルト君が付いている。
「・・・それもそれでどうかと思うんだけどなぁ」
なんというか、アレだ。
わたしとリヒャルト君が遊んだりしていると、それをセディーとケイトさんの二人が慈愛に満ちた眼差しで見ていることがある。
その雰囲気が、婚約者というか恋人同士という色恋のある感じじゃなくて、親が子を見守るが如くという雰囲気があって・・・なんだか、お祖父様とおばあ様がセディーとわたしを見守っているような雰囲気にそっくりなんですけど?
二人共わたしとそう変わらない年齢なのに、もう既に熟年夫婦のような雰囲気をまとっているのは凄いというか、なんというか・・・あれって、似た者同士故の空気感なのかな?
まぁ、二人の仲が良いのは、すっごくいいことなんだけど・・・でも、リヒャルト君と遊んでいたりして、ふと慈愛に満ち溢れている視線が注がれていることに気付いたときには、ちょっと居たたまれないです。
あと、「可愛い」とかをリヒャルト君に言うのはいいけど、わたしにまで可愛いと言うのは恥ずかしいからやめてほしいです。
綺麗と言われるのは、もう仕方ない気がするから諦めたけど・・・十代後半の男に「可愛い」はさすがにキツいと思うんですけど?
そして、わたしとリヒャルト君を見守っているケイトさんとセディーを、更に温かい眼差しで見守っているのが、ケイトさん達のお母上であるセルビア伯爵夫人なワケですよ。
まぁ、セディーとケイトさんはわたし達の方しか見ていないので、自分達がセルビア伯爵夫人に見守られていることには気付いてなさそうだけど。
子供を温かく見守る母親とは、あんな風に優しい顔をするものなんですねぇ。
小さい頃は気付かなかったけど、もしかしたらミモザさんもあんな風な顔をしていたのかもしれませんね。
多少気恥ずかしいというか、面映ゆい感じもするけど、セディーがセルビア伯爵夫人に受け入れられているのだと思うと、嬉しくなる。
「いいじゃない。仲良くなるのはいいことだよ。それに・・・」
「それに?」
「リヒャルト君、素直で可愛いし。ネイトだって、弟ができたみたいで嬉しいでしょ?」
「まぁ、確かにリヒャルト君は可愛いけど」
素直で可愛くて、きらきらした目でわたしを見上げて来るところなんか、わたしとロイの後ろにちょこちょこ付いて歩いていたスピカを彷彿とさせる。
リヒャルト君の年齢も、丁度別れた頃のスピカと同じくらいだし。無論、スピカの方が可愛いけど! まぁ、ケイトさんには言いませんけどね。
小さい子の相手は・・・ロイと遊んだことを思い出して懐かしい。さすがに、ロイとしたようなやんちゃな遊びはできないけど。
と、セルビア伯爵家でリヒャルト君と遊んで・・・
「またあそんでくださいね? ネイトにいさま」
という言葉に、頷いてしまいました。
リヒャルト君、なんて恐ろしい子! というのは冗談ですが、学園でアルレ嬢対策で気を張っているのが、リヒャルト君のほわほわした空気に癒されるんだよなぁ……
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